- 更新日:2024.10.02
- #残業30時間
残業30時間は長い?平均残業時間との比較や残業代の計算方法を解説
この記事を読んで理解できること
- 残業30時間は平均以下!平均残業時間・法律上の基準との比較
- 月30時間の残業代はどれくらいか計算する方法
- 月30時間の残業は我慢するしかない?30時間残業している人にありがちな悩み
- 残業を改善するために自分でできること
あなたは、以下のような悩みや疑問を持っていませんか?
残業時間は業界や職種によって様々ですので、分の会社が普通なのか、他の会社はどのくらいの長さなのか、気になることもありますよね。
結論を言えば、月30時間の残業時間は、平均より短い長さです。
とはいえ、平均残業時間と、あなたが残業を長いと感じるかどうかは関係ありません。
平均以下であったとしても、「残業が長い」「どうにかしたい」と思う人も多いのではないかと思います。
そこで、この記事では、まずは月30時間の長さを、平均残業時間や法律上の基準等と比べ、次に月30時間の残業をした場合にいくらの残業代が出るのが適正なのか、計算方法を解説します。
さらに、「残業代が出ない」ことや、「残業の少ない業界に行きたい」という、ありがちな悩み・不満について、解決方法をご紹介します。
現状に不満があるなら、この記事を読んでから行動をはじめてみてはいかがでしょうか?
目次
1章:残業30時間は平均以下!平均残業時間・法律上の基準との比較
月30時間の残業というと、週5日勤務として、だいたい毎日、平均1時間20分程度残業することになります。
9時〜18時が定時なら、退社は19時20分過ぎ、10時〜19時が定時なら、退社は20時20分過ぎになりますので、「少しでも残業はしたくない!」という人からしたら、不満の溜まる長さでしょう。
では、一般的に見ると長い長さなのかどうか、月30時間の残業と、
- 残業の平均時間
- 法律上の残業の上限
- 厚労省の定める過労死基準
などと比べてみます。
順番に解説します。
1-1:残業の平均は約47時間!
平均残業時間の、リアルなデータとして参考になるのが、大手転職サイトVorkersによる調査です。
※Vorkers調査レポートVol.4「約6万8000件の社員口コミから分析した“残業時間”に関するレポート」
この調査によると、残業の平均時間は、「月約47時間」という結果が出ています。
そのため、「月30時間」という残業時間は、平均以下の長さであることが分かります。
次に、法律上の基準や過労死基準と比較してみましょう。
1-2:30時間の残業をさまざまな基準と比べてみよう
残業時間の長さの目安にできる基準には、
- 45時間:36協定が締結されている場合の上限
- 80時間:2ヶ月〜6ヶ月この残業が続いた場合に労災認定されやすくなる
- 100時間:1ヶ月でもこの残業が続いた場合に労災認定されやすくなる
という3つがあります。
【月45時間】
月45時間の残業をすると、1日当たりの残業時間は「約2時間」になります(月の出勤日が22日の会社の場合)。
19時が定時の会社の場合は、21時まで残業するイメージです。
法律上の基準からみると、月45時間の残業は「長時間残業」であると言えます。
なぜなら、36協定が締結されている場合の月の残業時間の上限が45時間に設定されており、基本的にこれを超えて残業することは違法だからです。
また、月45時間の残業を3ヶ月継続すると、あなたがそれを理由に退職した場合に「失業保険」の受給条件が優遇されます。
つまり、失業保険の受給条件でも、月45時間を超えるような残業は、過度な長時間残業であると定められているのです。
【月80時間】
月80時間残業すると、1日あたり「約3時間半」程度の残業になります(月の出勤日が22日の会社の場合)。
19時が定時の会社なら、毎日22時半まで残業するイメージです。
月80時間の基準は、「2ヶ月以上にわたって月80時間を超える残業をしていた場合、健康障害を発症する可能性が高い」という「過労死基準」です。
【月100時間】
月100時間残業すると、1日あたり「約4時間半」程度の残業になります(月の出勤日が22日の会社の場合)。
19時が定時の会社なら、毎日23時半まで残業するイメージです。
月100時間の基準は、「1ヶ月でも月100時間を超える残業をしていた場合、健康障害を発症する可能性が高い」という「過労死基準」です。
「過労死基準」とは、労働者が一定の時間を超えた残業をしていて、過労死したり、脳・心臓疾患、精神疾患などを発症したりした場合に、「仕事に原因があった」とみなされやすくなる基準のことです。
過労死基準と残業時間の関係について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
命の危険があります!80時間の過労死基準と現状を変えるたった1つの方法
残業100時間は過労死基準!心身や生活への影響と現状を変える方法とは?
1-3:月30時間でも違法になるケース
36協定は労使間で締結する協定ですが、そもそも36協定が締結されていない場合は、たとえ残業時間が月30時間未満でも時間外労働自体が違法になります。
また、次の労働者は36協定を締結できません。
① 18歳未満の年少者
② 育児・介護をしている労働者
③ 妊産婦の労働者
④ 管理監督者
上記に該当する社員は時間外労働が認められず、36協定を締結できないため、月30時間以下でも残業させた場合は違法になります。
2章:月30時間の残業代はどれくらいか計算する方法
多くの会社では、社員が残業代の計算方法を詳しく知らないことを利用して、不当に低い賃金しか支払っていません。
たとえあなたの残業代が高額になるわけではないとしても、「このくらいならしょうがないか」と諦めるのはおすすめしません。
残業代に未払い分があれば、会社に請求して取り返すことができる可能性が高いからです。
そのため、まずは自分が本来もらうべき残業代がいくらになるのか、計算できるようになっておく必要があります。
ここでは、
- 残業代の計算方法
- 月30時間残業した場合に出るべき金額の具体例
をご紹介します。
2-1:残業代の計算方法
それでは、計算方法から解説します。
残業代は、以下の計算式で計算することができます。
2-2:月30時間残業した場合に出るべき金額はどのくらい?
順番に解説します。
①基礎時給を計算する
基礎時給とは、1時間当たりの賃金のことで、以下の式で計算できます。
※一月平均所定労働時間とは、会社で決められている1ヶ月の労働時間のことで、170時間前後であることが多いです。
(例)月給20万円、一月平均所定労働時間170時間
20万円÷170時間=基礎時給1176円
②割増率をかける
割増率には、以下の種類があります。
- 通常の残業:1.25倍
- 法定休日の労働:1.35倍
- 深夜労働:割増率+0.25倍
深夜労働とは、「22時〜翌朝5時」の中で働いた時間のことです。
(例)基礎時給が1176円の場合、
通常の残業:1176円×1.25倍=1470円
深夜労働:1176円×(1.0倍+0.25倍)=1470円
深夜残業:1176円×(1.25倍+0.25倍)=1764円
法定休日の労働:1176円×1.35倍=1587円
③残業時間をかける
残業時間は、先ほどの触れたように、「1日8時間・週40時間」を超えて働いたすべての時間のことです。
(例)基礎時給1176円、残業30時間の場合の1ヶ月の残業代
1176円×1.25倍×30時間=4万4100円
残業代を請求する場合、3年分さかのぼって請求できるため、最大で、
4万4100円×24ヶ月=158万7600円
にもなります。
もし、同じ条件でこれよりも少ない金額しか残業代をもらっていない場合は、会社に請求して取り返すことができます。
請求する場合の方法について詳しくは以下の記事で解説していますので、興味があればぜひご覧ください。
失敗しない残業代請求!有効な証拠と請求方法、ブラック企業の対処法
3章:月30時間の残業は我慢するしかない?30時間残業している人にありがちな悩み
月30時間の残業をしている人は、以下のようなことに悩みがちです。
- 正しい金額の残業代が出ない
- みなし労働を超えた分の残業代がごまかされる
- 職場で残業が改善されず、当たり前の状態になっている
- 仕事ばかりなのに給料が少ない
- できるだけ残業時間の短い業界に転職したい
これらの不満には解決策がありますので、順番にご紹介します。
3-1:残業代が正しい金額出ない
月30時間、1日1時間ちょっとくらいの残業だからと、「残業代を正しい金額支払わない」という会社は多く存在します。
そのため、月30時間くらいの残業をする人には「残業代が正しい金額出ない」という悩みを持つ人が多いようです。
しかし、1日1時間ちょっとの残業であっても、2章で計算したように、3年間の合計では100万円を超える金額になり得ます。
毎日の損失は少なくても、積もり積もって高額になるのです。
そのため、もし正しい金額の残業代が出ていなければ、残業代を退職するときに、3年分きっちり請求することをおすすめします。
残業代の請求方法について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
3-2:みなし残業を超えた分の残業代がごまかされる
一定の残業時間に対し一定の決められた金額が、残業代の代わりとして支払われることを、みなし残業代制(固定残業代制)と言います。
たとえば、
「月30時間分の時間外手当として、5万円のみなし残業代を支払う」
というような形で支払われます。
みなし残業代制だと、残業した時間が、みなし残業時間内であれば、みなし残業代を超える残業代は発生しません。
しかし、
- みなし残業を超える残業をどんなにしても、みなし残業代以外の残業代が出ない
- みなし残業代が異常に少ない(30時間のみなし残業に対して1万円など)
などの場合は違法ですので、残業代を請求することで取り返すことができる可能性があります。
みなし残業代について、詳しくは以下の記事をごらんください。
3-3:職場で残業が改善されず、当たり前の状態になっている
「残業することが当たり前になっている」
「残業が改善されない」
月30時間程度の残業が状態化している職場では、このようなケースも多いようです。
36協定が締結されている会社では、1章で解説したように、月の残業時間の上限は45時間までです。
そのため、月30時間の残業は違法な水準ではなく、会社としては「このくらいなら改善しなくていいか」と考えがちです。
また、もっと長時間の残業をしている会社の社員に比べれば、1日1時間ちょっとの残業くらいならと、社員の不満も大きくならない可能性があります。
そのため、会社は積極的に残業を改善する可能性が小さいのです。
しかし、「30時間くらいでも残業はしたくない」「少しでも早く帰りたい」という人からしたら、30時間でも残業は長いと感じると思います。
そのような場合の対策方法については、これから4章で解説します。
3-4:仕事ばかりなのに給料が少ない
月30時間程度の残業をしている人は、「給料が少ない」という悩みを持っていることも多いようです。
残業代が正しく出る職場なら、残業をやればやるほど給料も上がっていきますが、月30時間くらいの残業だと、
- そもそも残業代が支払われずごまかされている
- 残業代が出ても少額で生活が苦しい
ということがあり得ます。
このような場合は、現状を改善するために、「残業代がしっかり出る会社」に転職することをおすすめします。
今の会社から転職する上での重要なポイントについて、詳しくは以下の記事で解説しています。
5分で分かる!ブラック企業から転職する流れと知っておくべき2つのこと
3-5:できるだけ残業時間の短い業界に転職したい
「今の会社の残業が長い」「少しでも早く会社から帰りたい」と思っている人は、残業の短い業界や職種に転職したいと思っているのではないでしょうか。
大手転職サイトDODAが行った調査では、残業時間の短い業界や職種のランキングが紹介されています。
少し古い調査ですが、こちらを参考にしてみましょう。
※DODA「残業の多い職業・少ない職業は?全80業種、95職種別の残業時間調査!」
《残業時間が少ない業界ランキング》
《残業時間が少ない職種ランキング》
もちろん会社によって異なりますが、これから就職・転職活動をする場合は、この業種・職種を狙ってみてはいかがでしょうか。
4章:残業を改善するために自分でできること
「今の環境で、少しでも残業時間を短縮したい」
「会社から残業は30時間までと言われているが、時間内になかなか終わらない」
このような悩みをお持ちでしたら、これから紹介する方法で改善できる可能性があります。
今すぐ自分でできる方法として、
- 自分で仕事を効率化する
- 自分だけで抱え込まない
- 平日の夜に予定を入れる
などについて、順番に紹介します。
4-1:自分で仕事を効率化する
一番取りかかりやすいことからご紹介します。
仕事を効率的にできるように工夫して、同じ仕事でも効率的に終わるようにするのは、今すぐにでもはじめられることではないでしょうか。
たとえば、
- ルーティン作業はストップウォッチなどで時間を測って少しでも短くしていく
- 仕事をすぐに取りかかれるように細分化する
- 細分化した仕事に優先順位を付けて、計画的に進めていく
などの方法が考えられます。
これらの方法を意識して行うだけで、毎日の残業を短くできる可能性があります。
4-2:仕事を自分だけで抱え込まない
あなたの残業が多いのは、あなたが自分で抱えきれないほどの量の仕事を抱えているからかもしれません。
あなたは「この仕事はすべて自分でやらなければいけない」と思っているかもしれませんが、会社とは社員の間で分担して仕事をするところです。
そのため、思い切って同僚などに、
「この仕事やってくれないかな?」
と提案してみるのも一つの選択肢です。
また、頼まれた仕事をすべてOKせず、よく考えてから受け入れる、もしくは断る勇気を持つようにすることも、あなたの仕事量を減らす工夫の一つです。
4-3:平日の夜に予定を入れる
仕事の後に何も予定がないと、定時を過ぎてもずるずると仕事を続けてしまい、残業時間が増えることになってしまいます。
平日の夜に友人や恋人と会う約束を入れたり、習い事の予定を入れたりしておくと、「仕事を早く終わらせなければ」という気持ちになり、仕事を早く終わらせることにつながります。
また、仕事以外の時間があればリフレッシュできて、仕事にもメリハリがつくでしょう。
もちろんこれは、自分の工夫で早く帰れるようにできる職場であることが前提です。
そもそも早く帰れる空気がなかったり、とても定時では終わらないような仕事量を押しつけられたりするのであれば、別の手段で解決する必要があります。この紹介した方法で現状を改善できなかった場合は、
- 労働基準監督署に相談する
- 残業の短い会社に転職する
という選択肢もあります。
一番抜本的に現状を変えることができるのは転職する方法ですので、どうしても不満があり、改善が望めないなら真剣に検討してみてはいかがでしょうか。
まとめ:月30時間の残業
いかがでしたか?
最後にもう一度、今回の内容を振り返りましょう。
まず、月の残業が30時間という長さは、平均以下の水準で、法律上の上限にも触れない長さです。
正しい残業代は、以下の計算式で計算することができます。
月30時間程度の残業をしている人は、以下のような不満を抱えがちです。
- 残業代が正しい金額出ない
- みなし残業を超えた分の残業代がごまかされる
- 職場で残業が改善されず、当たり前の状態になっている
- 仕事ばかりなのに給料が少ない
- できるだけ残業時間の短い業界に転職したい
これらの不満は、正しい解決策を知っていれば、解決することができます。
少しでも今より残業時間を短くしたいという場合は、
- 自分で仕事を効率化する
- 仕事を自分だけで抱え込まない
- 平日の夜に予定を入れる
などの方法で、自力で改善することができます。
自力でどうにもならない場合は、労働基準監督署に相談するか、転職してしまうことがおすすめです。
あなたの行動一つで現状を変えることは可能ですので、少しでも不満があるなら、この記事で紹介した方法を少しでも実践してみてください。
【参考記事一覧】
残業時間と過労死基準の関係について、詳しくは以下の2記事で解説しています。
命の危険があります!80時間の過労死基準と現状を変えるたった1つの方法
残業100時間は過労死基準!心身や生活への影響と現状を変える方法とは?
未払いの残業代を請求したいという人は、詳しくは以下の記事をご覧ください。
失敗しない残業代請求!有効な証拠と請求方法、ブラック企業の対処法
ブラック企業から転職して現状から脱出したいという場合は、以下の記事で詳しい方法を解説していますのでご覧ください。