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【弁護士が解説】保育士業界における残業の実態と正しい法律ルール

QUEST法律事務所

代表弁護士住川 佳祐

残業する保育士

保育士として働くあなたは、次のような悩みをお持ちではないでしょうか。

(吹き出し)
「毎日の残業が長すぎる」
「サービス残業が当たり前になっている」
「持ち帰りの仕事も多い」
「どこの職場もこうなんだろうか」

日々、子どもと接し、毎日の成長を感じることができる保育士の仕事です。

やりがいがあり女性を中心に人気のある職業ですが、サービス残業が長く仕事が大変な職場としても知られています。

弁護士
実際の保育士の例ですが、長い時には1日に4時間、極端な場合は10時間近く残業するケースもあるのです。

この記事では、保育士の残業の実態や背景を押さえた上で、残業の基本的なルールについて説明します。

その上で、残業が少ない職場の見分け方や、これまでもらえるはずだった残業代の請求方法についても解説しようと思います。

現状に耐えられない、何かを変えたいというあなたには、この記事を次のアクションのきっかけにしてもらえればと思います。

(記事の流れ)


1章:保育士業界における残業の実態とその背景

この章では、保育士の仕事で残業が長くなりがちな実態について解説し、その背景になる理由をお伝えします。

それよりも残業代のルールを先に確認したいという人は2章からご確認ください。

1-1:サービス残業が多い業界の実態

保育士
子ども達が帰った。ここからの仕事が大変だ。

東京都が行った調査によると、保育士の退職理由は「仕事量が多い」が2位、「労働時間が長い」が3位となっています(1位は妊娠・出産)。

2017年には、保育士らが厚生労働省で会見を開き「9年間、4つの保育園で働いたけれど、残業代をもらったことは1度もない」と労働環境の厳しさを訴えたことも話題になりました。

保育士は早番・普通番・遅番というシフトに分かれて1日8時間の仕事をするという体制が一般的です。

しかし、8時間の定時では仕事が終わらないことが多く、7時から16時までを担当する早番の保育士が、事務作業のために夜まで残っているような「長時間残業」になることも珍しくありません。

しかもその多くがサービス残業になりがちだといいます。

弁護士
勤怠管理がされてなかった職場で働く保育士が未払いの残業代を請求し、150万以上を取り戻した事例もあります。

 

1-2:保育士はなぜ残業が長くなるのか

保育士の残業が多くなる背景には、次のような業務上の特性があります。

  • 事務仕事が多い
  • 行事の準備が大変
  • 会議、研修などがある
  • 業界の人手不足

順番に確認していきましょう。

1-2-1:事務仕事が多い

保育士の残業が多い理由の一つとして、「子どもが帰った後にするべき事務仕事が多い」ことが挙げられます。

事務作業とは主に、

連絡帳・日誌の記入
クラス便りの作成
保育計画表

といった内容で、文章を書いたり書類を作ったりする仕事です。

昼の時間は子どもから目が離せないため、こうした仕事には取りかかれず、子供が帰った夕方以降に回さざるを得なくなります。

また多くの保育園ではPCなどを導入しておらず、手書きを良しとする文化が残っていることも、仕事が増える一因になっています。

1-2-2:行事の準備が大変

保育士にとって、とても大変なのがお遊戯会や運動会などの大きな行事の準備です。

保育園で働く人は、一度はこうした準備で大変な思いをしたことがあるのではないでしょうか。

行事の前には、普段の仕事とは別に

出し物の企画
内容についての会議
保護者への連絡
小道具の制作
飾り付け

などを行う必要があります。

保育園にいる時間だけではとても終わらず、家に持ち帰って作業する保育士も多くいるのが現状です。

1-2-3:会議・研修などがある

保育士が集まる会議や研修は、子どもたちが帰った後の時間に行うことになります。

そのため必然的に夕方や夜の残業が増えてしまうのです。

保育園によっては、慣習として行ってはいるものの実質的な意味がない会議手書きの議事録作成を求められる会議もあり、残業が長引く一因になっています。

1-2-4:業界の人手不足

保育士の仕事は、

給料が安い
残業が多い
保護者と接するのが大変

といったブラックな要素があり、人手不足の状態が続いています。

保育園に保育士が十分に足りていないと、そのしわ寄せが来るのが働いている保育士の人たちです。

保育園は、法律で子どもの数に応じた必要な保育士の人数が決められています。そのため、保育園を運営するために働いている人に無理をさせなければならない場面が出てきてしまうのです。

保育士
私が働いている保育園でも当てはまるものが多いです。
弁護士
そうですよね。しかし、どんな理由があっても残業代が出ないことは違法です。次からは、残業代のルールについて、詳しく解説します。


2章:保育士の残業ルールを解説

保育士がサービス残業をさせられやすい理由として、

  • 国や自治体から補助を受けないと経営が難しく、残業代を払うお金がない
  • 「子どものために誰かがやらないといけない」と保育士が受け入れざるをえない

といった事情があります。

しかし、そういった場合でも、例外なく労働基準法のルールが適用されます。そのため、残業してもその分の残業代が出てければ「違法」になります

ここからは残業と残業代のルールについて解説します。

2-1:残業についての基本ルールを確認

残業代とは、「法定労働時間(※)」を超えて働いた時間=残業に対して支払われる賃金のことです。

※法定労働時間とは、法律で定められた「1日8時間・週40時間」の時間のことで、これを超えた労働が「残業」になります。

そのため、次のどちらか一方でも超えて働いた時間は残業時間になります。

1日8時間を超えた労働時間
週40時間を超えた労働時間

保育園で採用されることの多い三交代制のシフトで考えてみましょう。三交代制が採用されている園では、

早番:7:00〜16:00
通常番:9:00〜18:00
遅番:11:00〜20:00

というように、1時間休憩を含む合計9時間のシフトが設定されることが多いと思います。

そのため、この例の場合は

(図)
早番:16:00以降
通常番:18:00以降
遅番:20:00以降

を超えた時間が残業時間!

このようにシフト時間を超えて働いたすべての時間が残業時間になり、残業代が発生することになります。

この際、残業代は普段の賃金に「割増率(※)」をかけたものでなければなりません。

※割増率とは、時間当たりに換算した賃金(基礎時給)にかけられる決められた倍率のことです。

残業代計算の割増率

弁護士
さらに、保育士に多い持ち帰り残業や、実際には休めなかった休憩時間も残業時間としてカウントできる場合があります。

2-2:持ち帰り残業でも残業代が出る

2016年に行われた残業の実態調査では、週に1度以上持ち帰り残業をしている保育士は83.8%で、ほぼ毎日という人が32.8%という結果が出ています。

このように多くの保育士が、家に帰って事務作業を進めたり、行事に必要な制作物を作ったりしていますが、こうした作業が労働時間として認められ、残業代が発生するケースがあります。

家に持ち帰って行った仕事は

①担当業務を期限までに処理しないと、不利益な扱いを受ける
②自宅に持ち帰って仕事をしなければ、期限までに業務を処理できない
③社員が自宅に持ち帰って仕事をしていることを、雇用主が認識している

といった点に当てはまると残業として認められる可能性が大きくなります。

弁護士
こうした作業が日常化している保育士業界では、一部の例を除き持ち帰り残業を訴えたケースが少ないのが現状です。
持ち帰り残業で悩んでいる人は、一度弁護士に相談してみてください。
持ち帰り残業については次の記事でも詳しく解説しています。興味がある方はご覧下さい。

持ち帰り残業で残業代が出る?判断基準と3つの対処方法を徹底解説

2-3:給料が発生する休憩時間

保育園で働くあなたであれば、

休憩時間がない」

という状況を経験したことがあるのではないでしょうか。

保育園の場合は、子どもたちの昼寝の時間が休憩に当てられることがほとんどですが、

子どもが寝付かないと休めない
休憩時間も子どものそばにいないといけない
他にやるべき作業がある

といった理由から、休憩できないことが多くもあります。

保育園でありがちなこうしたシチュエーションの場合は、休憩時間ではなく労働時間として認められる場合があるのです。

労働時間とは、法律で

労働基準法上の休憩時間のルール

与えなければならないと決められています。

そして、この休憩時間は「労働から離れることが保障された時間」でなければならないため、子どもを見ながらの時間や別の作業をしながらの時間は休憩時間と認められないことが多いのです。

弁護士
こうした時間は労働時間として認められ、給与も支払われます。

(図)

休憩時間については、次の記事でも詳しく解説しています。心当たりがある方はぜひご覧ください。

その休憩には賃金が発生!損しない労働時間と休憩のルールを徹底解説

保育士
保育士業界ではどれも当たり前だと思ってました。残業が少ない職場もあるんでしょうか。
弁護士
では、次に残業が少ないホワイトな職場の見分け方を紹介します。


3章:ホワイトな職場の見分け方

残業が短く、保育士が働きやすい職場の特徴については、まず次のチェックリストをご確認ください。

いくつか当てはまれば、その保育園は残業が短い可能性が高いです。

休憩時間に外出できる
人員に余裕がある
行事が少ない
持ち帰り残業が禁止
IT化が進められている

それぞれの項目を詳しく見ていきましょう。

3-1:休憩時間に外出できる

休憩時間に外出できる=休憩を自由に使える保育園は

法律を守る意識が高い
休憩をしっかり取れる人員体制

であると言えます。

こうした職場は、8時間はまるまる子どもにつきっきりではなく、シフトをうまく交代することで定時の8時間の間に事務作業の時間を取れることが多く、残業も短くなる傾向があります。

3-2:人員に余裕がある

保育園で働くあなたは上司からこんなことを言われた経験はないでしょうか。

「Aさんが休みになったから、代わりに出勤できる」
「どうしても人がいないから、遅番まで働ける?」

保育園は、法律で子どもあたりの保育士の数が決められており、人員に余裕がない園では、こうした緊急事態が発生しやすくなります

人員に余裕があれば、誰かの代わりに働くようなシーンがなく、予定外の残業が起こりにくくなります。

3-3:行事が少ない

行事の準備がイレギュラーな残業の大きな理由になっていることを先ほど説明しました。

そのため、行事が少ない保育園は残業時間が短いことが多くなります。

また、行事があっても働いている職員に負担をかけないような保育園も残業が短いホワイトな職場といえるでしょう。

3-4:持ち帰り残業が禁止

「終わらない仕事は、どうにかして終わらせないと仕方ないよ」
「明日までに行事に必要なものを作っておいてね」

このように、ブラックな保育園の中には、持ち帰り残業をするように暗に求める例もあります。

一方で、保育園の仕事を外に持ち出すことを禁じ、持ち帰り残業を禁止するような職場もあります。

こうした保育園は、持ち帰り残業がなく、そうした仕事に取り掛かる時間を勤務中に作ってくれるため残業が短くなります

3-5:IT化が進められている

保育士の業務が大変になる要因の一つが、日報から議事録、保護者へ渡す連絡票など、様々な場面で見られる「手書きを良しとする文化」です。

一方で、PCを導入するなどして、煩雑な書類仕事を簡略化・スピード化している保育園もあります。

こうした職場では、同じ内容の繰り返しになりがちな書類仕事で負担が軽くなり、その分残業が短くなります。

保育士
ちゃんと残業が短い職場があるんですね。これから自分はどうしたら良いか考えてみます。

弁護士
次章では、残業が長いあなたが取るべき行動について解説します。

4章:保育園の残業に悩むあなたが取るべき行動

今働いている保育園の残業が長くて悩んでいる人は、ここまで読んで何か自分もアクションを起こしたいと考えたのではないでしょうか。

今すぐにあなたが取れる行動としては

作業を効率化する
労働基準監督署に相談する
別の保育園への転職を考える
未払い残業代を請求する

といったものがあります。順番に見ていきましょう。

4-1:作業を効率化する

先ほど保育士の仕事で見てきた通り、長時間残業につながりやすい要因として、事務仕事や行事の準備などの業務量がとても多いことを説明しました。

こうした仕事をする際に、

制作物のクオリティにこだわりすぎない
繰り返しの書類仕事は簡略化する
無駄な文書を作る習慣を辞める

といったことで効率化すれば、残業時間を短くできることがあります。

4-2:労働基準監督署に相談する

労働基準監督署は、労働基準法などの法律が守られているかをチェックする機関で、各都道府県の労働基準局に設置されています。

サービス残業についても、法律違反をしている明確な証拠がある場合は立ち入り検査行政指導に動いてくれることもあります。

ただ、証拠が揃っていない段階や、法的な判断が分かれるような事例では動いてくれず、未払い賃金の請求についても管轄外になります。

労働基準監督署への相談については、次の記事でも詳しく説明していますのでご確認ください。

【労働基準監督署にできること】相談の流れとより確実に解決するコツ

4-3:別の保育園への転職を考える

あなたが今働いている保育園では、残業を短くしたり働く環境を改善したりするのが難しい場合は、別の保育園への転職も一つの方法です。

「保育ひろば」や「保育のお仕事」など、多くの求人が掲載され、フォローも手厚く利用者の満足度の高いサイトもあるので、自分に合った職場を探してみてください。

4-4:未払い残業代を請求する

すぐに転職するにしろ、もう少し今の職場で頑張るにしろ、もらえる残業代を正しく受け取りたいという人もいるのではないでしょうか。

最後に、残業代を請求するための方法や必要な証拠について解説します。

4-4-1:2つの残業代の請求方法

未払いの残業代を請求するためには

自分で保育園に直接請求する方法
弁護士に依頼して請求する方法

という2つのやり方があります。

それぞれのメリットとデメリットは次の通りです。

残業代請求を自分でやる場合と弁護士に依頼する場合の違い

ただでさえ忙しい保育士の仕事の合間に証拠集めや残業代の計算、職場との交渉に時間を使うのは大変です。

そのため、手間がかからず、残業代を取り返せる確率も高い「弁護士への依頼」をオススメします。

残業代請求の方法については以下の記事をご覧ください。

いざという時知っておくと便利!?弁護士が教える残業代を1円でも多く請求する手順

4-4-2:集めておくべき証拠

未払い残業代の請求が成功するかどうかを左右するのが「証拠集め」です。

集めるべき証拠には、

労働条件が確認出来る証拠
残業時間を示す証拠

の2種類があります。

原本がない場合には、コピーでも良いので少しでも多くの証拠を揃えてきましょう。

【労働条件が確認出来る証拠】
求人票
説明会の資料
雇用契約書
就業規則
賃金規定
給与明細

【残業時間・労働時間を示す証拠】
タイムカードの履歴
出退勤表、業務日報、シフト
出勤・退勤時の報告メール

保育園や保育所によっては、タイムカードがなく出勤簿にサインするだけといった所もありますが、そうした場合は毎日手書きのメモを取るだけでも立派な証拠になります。

出退勤時間だけではなく、仕事内容、休憩時間に行った作業内容、上司からの指示などをメモしておけば、具体的な証拠として認められる可能性が大きくなります。

証拠については、以下の記事にも詳しく書いてありますのでご覧ください。

【弁護士が解説】残業代をアップさせる証拠一覧と集め方マニュアル


まとめ

いかがでしたか?最後に今回の内容をもう一度振り返ってみましょう。

残業時間が長く、持ち帰り残業も多い保育士の仕事ですが、この記事では保育士の残業が長くなる理由として

・事務仕事が多い
・行事の準備が大変
・会議、研修などがある
・業界の人手不足

といったポイントから説明しました。

子どもたちが帰ってから行う事務仕事や行事の準備の業務量は相当多くなり、場合によっては持ち帰りになるケースも珍しくありません。

保育園や保育士には、

国や自治体から補助を受けており、保育園に残業代を払うお金がない
「子どものために誰かがやらないといけない」と保育士が受け入れざるをえない

といった事情があるため、サービス残業が当たり前のようになりがちですが、残業してもその分の残業代が出てければ「違法」になります。

また、持ち帰り残業や休憩時間の仕事も労働と認められるケースがあります。

残業が短く、保育士が働きやすい職場の見分け方も説明したので、もし新しい職場を探す時に活用してみてください。

このように、仕事が過酷でサービス残業がはびこっている保育士業界。本当はもらえるはずだった残業代の請求もできるので、後から後悔しないためにもできることはしておきましょう。