【弁護士が解説】離婚前の手続きと流れ・準備すべき10個のポイント
この記事を読んで理解できること
- 離婚の種類と手続きや流れ
- 離婚手続きをする前に決めておくこと
- 離婚手続きをする前に準備しておくこと
- 離婚届の提出・手続きについて
- 離婚をする際の注意点
あなたは、
「離婚までの手続きが知りたい」
「離婚までに何をすればいいの?」
「離婚手続きをスムーズに終わらせたい」
などと思ってはいませんか?
離婚を決意して、離婚を成立させるまでには、決めなければいけないことや、やらなければいけない手続きが数多くあり、大変な労力を必要とします。
そのため、離婚が成立するまでの大まかな流れや、必要な手続き、必要な書類等をしっかりと把握して、離婚の準備を進めていくことが大変重要です。
もし、感情に任せて離婚を切り出し、何の準備もなく離婚して、必要な手続きや書面が不十分な場合は、次のような問題が残るケースがよくあります。
- 財産が正当に分配されない
- 慰謝料を払ってもらえない
- 親権を得られない
- 養育費を払ってもらえない
それぞれ、あなたが望んでいたような結果ではなく、離婚後の生活を考えた場合には、とても大きな問題となります。
離婚の手続きや流れをよく理解して、十分な準備をすることで、これらの問題を避けられる可能性が高まります。
この記事では、1章で離婚の種類と手続きや流れを、2章で離婚の手続きをする前に決めておくこと、3章で離婚の手続きをする前に準備しておくことについて解説します。
さらに、4章で離婚が成立し離婚手続きをする流れを、5章で離婚をする際の注意点について解説していきます。
個々の内容をしっかりと理解して、今後の行動に役立ててください。
1章:離婚の種類と手続きや流れ
離婚の種類と離婚を成立させるまでの流れとしては、上図のようになります。
- 協議離婚:夫婦間の話し合い(協議)による離婚
- 調停離婚:調停委員会による仲介を受けて離婚
- 審判離婚:裁判官の審判による離婚
- 裁判離婚:離婚訴訟の判決による離婚
それぞれ解説していきます。
1-1:協議離婚の場合
協議離婚とは、夫婦間の話し合い(協議)による離婚のことです。
夫婦間の話し合いによる合意が得られれば、離婚の理由を問われることなく、離婚届を提出することで成立します。
この協議離婚の大事な手続きとしては、離婚届を提出する前に、離婚の合意内容を書面に証拠として残しておくことがあげられます。
なぜなら、日本の離婚の約9割がこの協議離婚となっていますが、財産分与や慰謝料、養育費などの重要な取り決めが十分でない場合は、離婚後にトラブルとなるケースが多いからです。
離婚手続きをする前に決めておくこととしては、主に次の5つがあげられます。
- 財産分与の方法
- 慰謝料の金額・支払方法
- 子供の親権と面会交流
- 養育費の金額・支払方法
- 年金分割
それぞれの内容については、2章で解説しますが、これらを十分に話し合い、合意が得られた内容を「離婚協議書」として書面にしておくことが重要です。
※離婚協議書のサンプルは、次のようになります。
さらに、離婚後に慰謝料・養育費の未払いなどの金銭トラブルを防ぐためには、「離婚協議書」を公証役場で公証人が法律にしたがって作成する「公正証書」にすることをおすすめします。
また、「本公正証書に規定する金銭債務の支払を履行しないときは直ちに強制執行に服する」という強制執行認諾文言付きの公正証書にしておくことが大事です。
この公正証書によって、慰謝料・養育費の未払いなどが発生した際は、裁判を起こさなくても相手の給料や財産を差し押さえるなど法的手続きをとることができます。
協議離婚は、夫婦間の話し合いで成立する、最も多い離婚の形ですが、離婚後に後悔しないために、合意内容の証拠となる書面は必ず作成しましょう。
1-2:調停離婚の場合
調停離婚とは、調停委員会による仲介を受けて行う離婚のことです。
離婚を決意して、離婚協議ではどうしても合意が得られない場合は、家庭裁判所に離婚調停を申し立てることができます。
離婚調停の申し立ての手続きに必要な書類は、次の通りです。
- 夫婦関係調整調停申立書3通
- 事情説明書1通
- 子についての事情説明書1通(未成年の子がいる場合)
- 連絡先等の届出書1通
- 進行に関する照会回答書1通
- 申立人の戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)
- 年金分割のための情報通知書(年金分割を求める場合のみ)
- 照会回答書
また、揃えておいた方がよい書類として、住民票、所得証明書・源泉徴収票(養育費・婚姻費用分担請求をするとき)なども上げられます。
離婚調停の費用は、次のようになります。
- 収入印紙代:1,200円
- 切手代:約800円
- その他:各1,200円
(※婚姻費用・慰謝料・養育費の請求なども同時に申し立てた場合)
離婚調停では、裁判官1名と調停委員2名からなる調停委員会によって、双方の意見の聞き取りや条件面の話し合いが夫婦別々に行われます。
夫婦双方が合意した場合は、合意した内容が調停調書に記載され、調停離婚が成立することなります。
申立人は、調停成立の日から10日以内に、離婚届に離婚調停調書の謄本を添えて、市区町村役場に提出しなければなりません。
もし、相手が離婚を拒否したり、金銭面や子供の親権等で合意が得られない場合は、調停不調となります。
その場合は、離婚をあきらめるか、離婚を再度協議するか、あるいは家庭裁判所に離婚訴訟するか選択することになります。
1-3:審判離婚の場合
審判離婚とは、離婚することをはじめ、重要な離婚条件などほとんど合意ができているが、些細な食い違いで調停が成立していない場合に、裁判官の審判によって離婚が決まることです。
ただし、審判離婚では、2週間以内に異議申し立てをすることで審判は無効となります。
離婚調停で、些細な食い違いであれ合意できない条件があれば、離婚訴訟を起こすことになるので、現在、審判離婚はほとんど実施されていません。
1-4:裁判離婚の場合
離婚調停でも離婚の合意が得られなかった場合は、離婚訴訟を申し立てて争うことになります。
この判決による離婚が「裁判離婚」です。
離婚訴訟の申し立ての手続きに必要な書類は、次の通りです。
- 訴状2通
- 離婚調停不成立調書
- 夫婦の戸籍謄本
また、他の各請求に合わせて、それぞれの証拠・資料等が必要となります。
- 財産分与請求:共有財産が明確となる資料(預金通帳のコピー、不動産登記簿謄本、他)
- 慰謝料請求:相手の不法行為の証拠等
- 養育費・婚姻費用分担請求:所得証明書・源泉徴収票
- 年金分割:年金分割のための情報通知書
離婚訴訟の費用は、次のようになります。
収入印紙代:13,000円(離婚のみ)
切手代:5,000~7,000円程度
その他:各1,200円
(※財産分与・婚姻費用・養育費の請求なども同時に申し立てた場合)
離婚訴訟の判決によって、離婚だけでなく訴状で請求された親権や財産分与、慰謝料など離婚にかかわる様々な条項に対しての判断が下されます。
もし、判決に不服がある場合は、判決後14日以内に高等裁判所に控訴することもできます。
離婚を認める判決が確定したら、原告は確定後10日以内に離婚届に「判決の謄本」と「判決確定証明書」を添えて、市区町村役場に提出しなければなりません。
離婚訴訟について、詳しくは次の記事で解説しています。
【弁護士が解説】離婚裁判の流れや費用・早期解決の2つのポイント
2章:離婚手続きをする前に決めておくこと
離婚を成立させる段階で、離婚手続きをする前に決めておくべき項目として、次の5つがあげられます。
- 財産分与の方法
- 慰謝料の金額・支払方法
- 子供の親権と面会交流
- 養育費の金額・支払方法
- 年金分割
これらの各項目に対して、必要な手続きがあります。
2-1:財産分与の方法
離婚届を提出する前に、財産分与について決めておく必要があります。
財産分与とは、婚姻期間中に夫婦で築いた共有財産を、離婚時に公平に分け合うことを言います。
共有財産の主なものとして、次の5つがあげられます。
- 現金・預貯金
- 不動産・自動車
- 株式・国債・会員権等
- 生命保険等の保険料
- 退職金
財産分与に関する手続きとしては、預金通帳の名義変更や、不動産の所有者権移転登記、自動車等の名義変更手続きなどがあげられます。
さらに、家の住宅ローンなどが残っている場合は、住宅ローンの借り換えによる名義変更や、他に贈与税、不動産所得税などの税問題が発生する可能性もあります。
財産分与によって得られる財産それぞれに対して、事前に必要となる手続きを確認しておくことが大事です。
離婚の財産分与について、詳しくは次の記事で解説しています。
【弁護士が解説】離婚の財産分与の分け方と有利にする3つのポイント
2-2:慰謝料の金額・支払方法
離婚の際の慰謝料は、相手(配偶者)の暴力や不倫などの不法行為よって、あなたが精神的な苦痛(損害)を受け、離婚に至らざる終えなくなった場合にのみ請求することができます。
「性格の不一致」「価値観の違い」などといった、相手に明確な不法行為が認められない場合は、慰謝料を請求することはできません。
相手の不法行為によって離婚に至り、離婚の慰謝料を請求できるケースとしては、次の5つがあげられます。
- 不倫・浮気をした場合
- DV(身体的暴力)、モラハラ(言葉・精神的暴力)の場合
- 悪意の遺棄(生活費を渡さない、他)の場合
- セックスレスの場合
- 借金がある場合
これらの慰謝料を請求できるケースでも、その内容・事例によって請求できる慰謝料の金額は様々ですが、大体の相場としては次の表のようになります。
また、慰謝料を決める要素は、相手の不法行為の内容だけでなく、婚姻期間や経済状況、子供の存在など様々です。
慰謝料の金額は、それらの増額・減額を決める各要素によって、かなりの差が生じることになります。
慰謝料の金額を取り決める方法としては、始めは夫婦間の話し合いによって合意を目指す形になります。
もし、話し合いで合意が得られない場合は、調停・訴訟へと進むことになります。
協議離婚の場合は、慰謝料に関する合意内容も、財産分与などと同じく、強制執行認諾文言付きの公正証書に記載しておくことをおすすめします。
なお、離婚する際の慰謝料について、詳しくは次の記事で解説しています。
離婚の慰謝料相場は?請求できる5つのケースと証拠を弁護士が解説
2-3:子供の親権と面会交流
夫婦間に未成年の子供がいる場合、離婚をする際に、親権者を決める必要があります。
この時、両親が離婚しても、子供の戸籍や姓は変わらないので、離婚した母親が親権者になった場合は、子供は旧姓に戻った母親と姓も戸籍も別ということになります。
そのため、親権者となった母親と同じ姓、同じ戸籍にしたい場合は、子供の姓(氏)の変更許可の申し立てと、入籍届が必要となります。
さらに、各市町村では、離婚後のひとり親家族に対して、様々な支援制度を実施しているので、事前に該当する手続きを確認しておくことが大事です。
次に、離婚時に親権を得られなかった親は、親権者に対して面会交流を求めることができます。
面会交流とは、離れて暮らしている親が、定期的に子供と面会したり、文通などの交流をしたりすることで、親権者(あるいは監護者)に対して求めることができます。
面会の頻度や時間、方法等は、お互いの話し合いによって決められます。
面会交流について話し合いで決まらなかった場合は、家庭裁判所に面会交流調停を申し立てることができます。
離婚時には、必ず親権者と面会交流の細かい内容を決めておくことが大事です。
離婚する際の親権について、詳しくは次の記事で解説しています。
【弁護士が解説】離婚で親権を獲得する3つのポイントとよくある疑問
2-4:養育費の金額・支払方法
夫婦間に未成年の子供がいる場合、離婚をする際に、親権者だけでなく離婚後の養育費を決める必要があります。
養育費とは、親が離婚した未成年の子供が自立するまでの、食費、学費、医療費、家賃などの子供の生活全般にかかる費用のことです。
子供と一緒に暮らす親(監護権者)が、子供と暮らさない親に対して養育費を請求することができます。
養育費の金額は、夫婦双方の話し合いで合意が得られれば、自由に決めることができます。
しかし、離婚調停や訴訟の場では、双方の親の収入をもとに、裁判所が養育費の金額を算定した「養育費算定表※」を基準として、決められるのが一般的です。
養育費の支払い方法としては、合意した条件のもと、決められた期限まで毎月一定額を、子供名義の口座に振り込む形が一般的です。
また別に、子供が高校や大学などに進学の際に、まとまった金額を支払うよう取り決めたケースもあります。
養育費は、離婚後に未払いが発生するなどトラブルになりやすい項目です。
離婚後に、養育費が支払われていないケースは非常に多く、母子世帯で養育費を受け取っている割合は、24%ほどとなっています。
その原因の一つとして、そもそも、養育費の取り決めをしていないケースが、平成28年の資料※では、母子世帯のうち54.2%もあるという結果が出ています。
協議離婚の場合は、養育費に関する合意内容も、財産分与や慰謝料などと同じく、強制執行認諾文言付きの公正証書に記載しておくことをおすすめします。
離婚する際の養育費について、詳しくは次の記事で解説しています。
【離婚後の養育費】金額の決め方や相場、未払いを防ぐ4つのポイント
2-5:年金分割
年金分割とは、離婚した場合に、婚姻中に納められた厚生年金保険料の支払い実績(標準報酬)を、夫婦間で通常2分の1の割合で分割することができる制度です。
この制度によって、夫の扶養家族として厚生年金を支払うことのなかった専業主婦でも、婚姻中の夫の厚生年金保険料の支払い実績(標準報酬)を分割して受け取ることができ、年金が増額されることになります。
ここでの注意点は、支給される夫婦の年金額を分割するわけではなく、婚姻期間中の厚生年金保険料の算定基礎となる標準報酬を分割するという点です。
さらに、年金分割は、国民年金は対象にならず、厚生年金部分だけが分割されることになります。
年金分割の手続きとしては、まず年金事務所に「年金分割のための情報提供請求書」という書類を提出し「年金分割のための情報提供通知書」を取得します。
これは、離婚前に請求することもできます。
年金分割の按分割合は、夫婦間の話し合いによって決めることができます。
もし、話し合いで合意が得られない場合は、調停・訴訟へと進むことになりますが、調停や審判では、按分割合は50%と定めるのが通常です。
3章:離婚手続きをする前に準備しておくこと
離婚の手続きをする前に、準備しておくこととして、次の5つがあげられます。
- 離婚協議書の作成
- 離婚後の姓を決める
- 離婚後の住居を決める
- 離婚後の仕事を決める
- 子供への説明
それぞれ解説していきます。
3-1:離婚協議書の作成
1-1で解説したように、協議離婚で離婚条件の合意が得られた場合は、その内容を「離婚協議書」として書面にしておくことが重要です。
離婚協議書に記載する主な内容としては、次のようになります。
- 離婚の合意
- 親権者(及び監護者)の指定
- 養育費
- 面会交流
- 財産分与
- 慰謝料
- 年金分割
- 清算条項
- 公正証書作成の合意
※離婚協議書のサンプルは、次のようになります。
サンプルに記載してあるように、強制執行認諾文言付公正証書を作成する合意を得て、公正証書にしておくことが大事です。
強制執行認諾文言付きの公正証書にしておくことで、慰謝料・養育費等の未払いなどが発生した際は、裁判を起こさなくても相手の給料や財産を差し押さえるなど法的手続きをとることができます。
離婚協議書の作成は、法律の専門家である弁護士に依頼されることをおすすめします。
なぜなら、離婚協議書の内容に不備がある場合は、かえってトラブルのもととなってしまうからです。
3-2:離婚後の姓を決める
結婚して自分の姓を相手方の姓に変えた場合は、離婚の際に、元の姓と婚姻中の姓、この2つの姓を選択することができます。
離婚後にどちらの姓を選ぶかによって、離婚後の戸籍が変わってきます。
■結婚前の姓に戻る場合
離婚して結婚前の姓に戻る場合は、結婚前の戸籍に戻るか、あるいは新しい戸籍を編製することになります。
結婚前の戸籍に戻る場合の手続きとしては、離婚届の「婚姻前の氏にもどる者の本籍」とある欄の「妻はもとの戸籍にもどる」を選び、親の本籍地を記入します。
戸籍は元の戸籍に変更されるので、新しい手続きは不要です。
すでに、両親が死亡して両親の戸籍がないときや、
新しい戸籍を編製する場合の手続きとしては、離婚届の「妻は新しい戸籍をつくる」を選び、自分が希望する本籍地を記入します。
■婚姻中の姓をそのまま使う場合
婚姻中の姓をそのまま使う場合は、新しい戸籍を編製する必要があります。
この場合、「離婚の際に称していた氏を称する届」を、離婚届と一緒に提出するか、または、離婚後3ヶ月以内に提出します。
夫婦間に未成年の子供がいる場合、子供の姓と戸籍は、離婚後もそのままの状態になります。
そのため、母親が親権者となったときに、母親と同じ姓にしたい場合は、子供の姓(氏)の変更許可の申し立てと、入籍届が必要となります。
子供の姓(氏)の変更許可の申し立ての手続きは、その住所地を管轄する家庭裁判所に行います。
離婚後の姓や戸籍の手続きや、その他の離婚後の手続きについて、詳しくは次の記事で解説しています。
【チェックリスト付】離婚後の手続きや準備物・注意点を弁護士が解説
3-3:離婚後の住居を決める
離婚後、婚姻中の住居にそのまま住む場合は別として、実家に戻るか、新しい住居を探す必要があります。
離婚前提で新しい住居を賃貸で借りる場合は、離婚前に不動産会社と相談して、次のような段取りで進めていきます。
- 部屋探し(内見)
- 入居申込・入居審査
- 離婚届提出
- 公的な手続き変更(戸籍など)
- 賃貸契約
- 新居に引っ越し
離婚の手続きと引っ越しの手続きは、同時進行で行い、必要書類等も一緒に準備する方が賢明です。
離婚が長引き、引っ越しとのタイミングがずれた場合は、別居という形になり、婚姻費用を相手に請求できます。
婚姻費用や離婚の準備について、詳しくは次の記事で解説しています。
【弁護士が解説】離婚を決意したら始める5つの準備と離婚のタイミング
離婚後も、引っ越しに伴う住民票の異動届など各種手続きを、離婚後の手続きと合わせて行うことになります。
3-4:離婚後の仕事を決める
離婚後に自立した生活を送るためには、安定した仕事を確保する必要があります。
特に女性の場合は、経済的な自立が早期に実現できるかが、離婚後の生活を左右するおおきな要因となります。
もしあなたが専業主婦の場合は、ハローワーク(子供がいる場合は、マザーズハローワーク)などを使って、就職先を見つける必要があります。
あなたがすでに働いている場合は、現在の仕事の収入で試算し、それでは足りない場合は、転職やスキルアップで収入増を目指すことが大事です。
また、離婚後の仕事での収入、財産分与や慰謝料、養育費などの貰えるお金、公的な助成金などを合計して、生活が成り立っていけるのか試算することも重要です。
例えば、厚生労働省の調査によれば、母子家庭の平成27年の平均年間収入は243万円で、この平均年間収入には、養育費や児童手当などの助成金も含まれています。
その内、母親自身が働いて得た平均就労収入は年間200万円となっています。※
母子家庭で、母親が1ヶ月働いて得られる平均収入としては、16万円程となります。
また、母子家庭(子供1人)の1ヶ月当たりの生活費を概算すると、次の図のようになります。
母子家庭の1ヶ月の平均収入である16万円から、上図の最低費用の14万円を引くと、毎月2万円程貯蓄に回せることになります。
ただし、子供の成長とともに教育費がかさんだり、子供の数が多い場合は、費用がかさみ生活は厳しい状況になると考えられます。
ここで紹介した数値は、収入の平均値や費用の概算なので、実際の生活状況によっては当然変わってきます。
離婚後、経済的に自立できるか試算する際の、参考として活用してください。
3-5:子供への説明
夫婦間に未成年の子供がいる場合、子供の将来のことを考えて、親権や養育費等だけではなく、子供の姓や戸籍もどうするか決めておく必要があります。
また、両親の離婚という状況を、子供に説明するタイミングと内容を、しっかり検討する必要があります。
両親の離婚という、子供にとっては大きな心の傷となる出来事を、子供のストレスができるだけ軽減できる形で、両親が愛情をもって伝えることが重要です。
離婚後の子供の手続きについて、詳しくは次の記事で解説しています。
【チェックリスト付】離婚後の手続きや準備物・注意点を弁護士が解説
4章:離婚届の提出・手続きについて
離婚届の提出・手続きについて、次の4つを解説します。
- 離婚届の提出方法
- 離婚届と準備する必要書類・費用
- 離婚届が受理されないケース
- 離婚の無効・取り消し
4-1:離婚届の提出方法
離婚届は、各市区町村役場で取得し、本籍か現在住んでいる市区町村の役場に提出します。
本籍地以外の役場に提出する際には、戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)一通が必要になります。
離婚届の記入事項は、次のようになります。
- 届出の日付を記入
- 氏名、生年月日の記入
- 住所を記入
- 本籍を記入
- 父母の氏名(続き柄)を記入
- 離婚の種別を選択
- 婚姻前の氏にもどる者の本籍を記入
- 未成年の子の氏名
- 同居の期間を記入
- 別居する前の住所(別居していなければ空欄)
- 別居する前の世帯のおもな仕事を選択
- 夫妻の職業を記入
- 届出人の署名・押印
- 証人(協議離婚のときのみ)
※法務省・離婚届の記載例:(1)妻が元の氏に戻る場合(妻が子の親権者)【PDF】
離婚届の提出は、調停離婚・和解離婚・判決離婚の場合は、離婚確定から10日以内に提出する必要があります。
届出人は、必ず本人が署名捺印する必要があります。
また、協議離婚の場合は、20歳以上の証人2人に署名捺印してもらう必要があります。
この離婚届の証人は、20歳以上であれば誰でもなることができ、法的義務や離婚に関する責任を負うことはありません。
4-2:離婚届と準備する必要書類
離婚の種類によって、必要書類が異なります。
■協議離婚:夫婦間の話し合い(協議)による離婚
- 離婚届
- 戸籍謄本(本籍地以外の役所に提出する場合)
■調停離婚:調停による仲介による離婚
- 離婚届
- 戸籍謄本(本籍地以外の役所に提出する場合)
- 調停調書謄本
■審判離婚:裁判官の審判による離婚
- 離婚届
- 戸籍謄本(本籍地以外の役所に提出する場合)
- 審判謄本と審判確定証明書
■和解離婚:離婚訴訟中に和解に合意して離婚
- 離婚届
- 戸籍謄本(本籍地以外の役所に提出する場合)
- 和解調書謄本
■判決離婚:離婚訴訟の判決による離婚
- 離婚届
- 戸籍謄本(本籍地以外の役所に提出する場合)
- 判決謄本と判決確定証明書
4-3:離婚届が受理されないケース
離婚届が受理されないケースとしては、次の3つがあげられます。
- 離婚届の記載に不備があった場合
- 子供の親権者が決められていない場合
- 離婚届け不受理の申し出が出されている場合
離婚届の記載に不備があった場合は、誤記・記載漏れなどの不備を修正すれば受理されます。
子供の親権者が決められていない場合は、必ず親権者を決めて再提出する必要があります。
離婚届不受理申出書が出されている場合は、相手が形式的に不備のない離婚届を提出しても、受理されることはありません。
離婚届不受理申出が取り下げられれば、離婚届けは受理されることになります。
4-4:離婚の無効・取り消し
相手が勝手に離婚届けを出した場合は、離婚の無効を求める協議離婚無効確認の調停を申し立てる必要があります。
この調停によって、相手と離婚が無効である合意が得られた場合は、審判によって離婚の無効が確認されます。
すでに離婚届が受理されて、戸籍上も離婚したことになっているので、この後必ず、市区町村役場で戸籍の訂正を行う必要があります。
このように、相手が勝手に離婚届けを提出し、受理されることを防ぐためには、離婚届不受理申出が有効となります。
次に、相手に脅迫、あるいは騙されて離婚届に同意し受理されてしまった場合は、3ヶ月以内に家庭裁判所に対して、協議離婚取り消しの調停を申し立てることができます。
離婚の無効・取り消しは、調停・裁判離婚で離婚が確定した場合は、基本的にできません。
コラム:離婚後の手続きチェックリスト
離婚後の手続きチェックリストとして、次のファイルを準備しました。
よろしければ、離婚手続きのチェックリストとしてご活用ください。
注)このチェックリストは、主な手続きと、その必要書類等を記載しています。
すべての手続きを、記載しているわけではありません。
市区町村役場によって異なる場合がありますので、市区町村役場の各窓口でご確認ください。
5章:離婚をする際の注意点
ここまで解説してきたように、離婚までの手続きでは、離婚届の提出だけでなく、決めておくべき様々な項目と準備が大変重要です。
これらの必要な準備や離婚の手続きをする際の注意点として、次の2つがあげられます。
- 離婚を決意したら、しっかり準備する
- 離婚を決意したら、早めに弁護士に相談する
5-1:離婚を決意したら、しっかり準備する
離婚を決意した場合、ここまで解説してきた離婚に必要な手続きや流れ、離婚に関する各項目の決め方等をよく理解して準備を整えておくことが大切です。
離婚の準備をしっかり進めることによって、離婚に対する決意や心構え、離婚後の生活に対する見通しが得られます。
また、夫婦間の現在の経済状況や資産、お互いの収入などを確認することによって、離婚の際に貰えるお金の概算や資産などを把握することができます。
これによって、離婚の話し合いの際にも、相手の主張にしっかり耳を傾け、受け入れられない場合は理由を説明し、かつ、こちらの要望をきちんと伝える余裕が生まれます。
離婚の話し合いにはどうしても時間がかかるので、焦らずしっかり向き合う姿勢を相手に見せることが重要です。
5-2:離婚を決意したら、早めに弁護士に相談する
離婚を決意したら、早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。
なぜなら、ここまで解説したように、離婚のために決めておくべきことや準備すること、手続きなどが大変多く、またそれぞれが適切なものなのか判断が難しい場合が多いからです。
弁護士に相談することで、相手との交渉に対する適切なアドバイス得られ、また離婚に必要な準備や手続きなど煩雑な作業もチェックして貰うことができます。
さらに、離婚を話し合う際に、自分で相手と交渉することが無理な状況にある場合は、離婚問題の経験が豊富な弁護士に依頼されることをおすすめします。
離婚問題を弁護士に依頼すべきケースやメリットについて、詳しくは次の記事で解説しています。
離婚問題を弁護士に依頼すべき5つのケースとメリット、費用相場も解説
まとめ
ここまで、離婚までの手続きついて解説してきました。
最後に、今回の内容をまとめます。
■離婚の種類と手続きや流れ
■離婚手続きをする前に決めておくこと
- 財産分与の方法
- 慰謝料の金額・支払方法
- 子供の親権と面会交流
- 養育費の金額・支払方法
- 年金分割
■離婚手続きをする前に準備しておくこと
- 離婚協議書の作成
- 離婚後の姓を決める
- 離婚後の住居を決める
- 離婚後の仕事を決める
- 子供への説明
■離婚届の提出・手続きについて
- 離婚届の提出方法
- 離婚届と準備する必要書類・費用
- 離婚届が受理されないケース
- 離婚の無効・取り消し
■離婚をする際の注意点
- 離婚を決意したら、しっかり準備する
- 離婚を決意したら、早めに弁護士に相談する
この記事の内容を参考にして、これからの行動に役立ててください。
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