- 2022.09.02
- 2024.11.11
- #離婚したい
【保存版】離婚したい人が知っておきたい知識を総まとめ
この記事を読んで理解できること
- 離婚したい人に多い理由
- 離婚するかどうか迷っている場合に知っておきたいこと
- 離婚したい場合に知っておきたいお金のこと
- 離婚したい場合にまずやっておく準備
- 離婚したい場合の離婚手続きの流れ
- 離婚したいのに話し合いが進まない場合の対処法
- 離婚届の提出・手続き
- 離婚後の生活で活用できる補助金・助成金
- 離婚したい場合は、まずは弁護士に無料相談することがおすすめ
あなたは、
「離婚したいが、離婚した方がいいのかどうか迷っている」
「離婚したいが、何から始めたらいいのか分からない」
「離婚したいと言ったら、配偶者から拒まれた」
などの悩み、疑問をお持ちではありませんか?
離婚したい、と思う理由には様々なものがあると思いますが、もし少しでも離婚したい気持ちがあるなら、早めに適切な準備を始めることが大事です。
なぜなら、しっかり準備しなければ、あなたにとって不利な条件で離婚することになったり、離婚後の生活が苦しくなってしまったり、そもそも離婚ができなくなってしまう可能性もあるからです。
そこでこの記事では、まずは離婚したい人に多い理由を解説し、それから離婚するか迷っている場合に知っておきたいこと、お金のことを説明します。
それから、離婚手続きの具体的な準備や流れ、離婚を拒否された場合の対処法を解説します。
さらに、離婚後の生活で活用できる補助金・助成金も紹介します。
ぜひ知りたいところから読んで、これからの行動に活用してください。
全部読むのが面倒な方へ|当記事の要点
■離婚したい場合に知っておきたいこと
- 話し合い(協議)で合意できればどのような理由でも離婚できる
- 話し合い(協議)で合意できなくても、法律上の離婚事由があれば離婚は認められる
- 相手に離婚の原因があれば慰謝料請求できる
- 一時的な感情で行動することは避ける
■離婚したい場合に請求可能なもの
- 婚姻費用
- 財産分与
- 慰謝料
- 養育費
- 年金分割
■離婚したい場合に考えておきたいこと
- 離婚後の生活設計をよく考える
- 有利な条件で離婚できるように証拠を集める
- 離婚は大きな決断になるため、修復できないかよく考える
■離婚後の生活で活用できる補助金・助成金
- 児童手当
- 児童扶養手当(母子手当)
- 児童育成手当
- ひとり親家族等医療費助成制度
- 母子家庭等の住宅手当
- 生活保護
目次
1章:離婚したい人に多い理由
それでは、まずは離婚したい人に多い理由から紹介します。
「こんな理由で離婚するかどうか迷っている」という方は参考にしてみてください。
離婚するか迷っている場合に知っておきたいことについては、2章で説明します。
1-1:不倫された
配偶者から不倫されたため「離婚したい」と思う場合は多いと思います。
一度不倫されると、配偶者のことを信頼できなくなったり、配偶者のことが生理的に受け付けられなくなる、ということもあるようです。
不倫された場合は、高額の慰謝料を請求可能ですし、離婚事由にもなりますので、早めに準備を始めて離婚することをおすすめします。
1-2:DV・モラハラがある
離婚したい理由として、配偶者から「殴る、蹴る」などのDVを受けている、「怒鳴られる」「バカにされる」「無視される」などのモラハラ的な行為を受けているというのも多いようです。
このような行為を受けている場合、関係を続けるほどあなたの被害は大きくなります。
これ以上傷つけられないためにも、早めに離婚のための行動を始めることをおすすめします。
1-3:働かない、生活費を渡さない
「配偶者が働かない」「すぐに仕事を辞めてしまう」「家庭にお金を入れてくれない」といった場合も、離婚したいと思われるでしょう。
このような行為は、程度がひどい場合は離婚事由となる「悪意の遺棄」に該当する可能性もあります。
詳しくは弁護士に相談してみてください。
1-4:家事や子育てにノータッチ
配偶者が「家族のことをかえりみず、好き勝手に生活している」「家事や子育てを一切やらない、拒む」という場合もあるでしょう。
このような配偶者だったら、家庭の負担があなた一人にのしかかるため、毎日の生活が大変になってしまいますよね。
ただし「家事や子育てをしない」という理由で離婚できるかは、状況次第です。一度弁護士に相談することをおすすめします。
1-5:金銭感覚が合わない、浪費する
配偶者との金銭感覚が全然合わない、配偶者が家庭のお金を浪費してしまう、という理由から離婚したいと思う場合もあると思います。
これも離婚事由として認められる可能性があります。
離婚事由について、詳しくは2章で解説しています。
1-6:配偶者の親族とうまくいかない
「姑との関係が悪い」「配偶者の親族からいじめられる」といったものも離婚したい理由として多いようです。
そのような親族が同居していたり、近くに住んでいたりすると生活全般に干渉され、大きなストレスを抱えることにもなります。
親族との関係は簡単には改善できません。配偶者も味方になってくれないようなら、離婚を真剣に検討してみてください。
1-7:喧嘩ばかりになる、コミュニケーションがうまくいかない
配偶者とコミュニケーションがうまくいかず、喧嘩ばかりになってしまうということもあると思います。
離婚事由として最も多いのは「性格の不一致」であり、多くの夫婦が性格の不一致で離婚しています。
1-8:性の不一致、性交不能
- 性行為を拒否される
- セックスレス
- 性交不能
- 異常な性癖を押し付ける
などの性の問題から離婚したいと思われる場合もあると思います。
状況などにもよりますが、このような性的な問題を理由に離婚することも可能です。
このような性の問題が「その他婚姻を継続し難い重大な事由」という離婚事由に該当する場合があるからです。
2章:離婚するかどうか迷っている場合に知っておきたいこと
離婚したいが、離婚するか迷っているという場合は、下記のことを知った上で検討することをおすすめします。
- 話し合い(協議)で合意できればどのような理由でも離婚できる
- 話し合い(協議)で合意できなくても、法律上の離婚事由があれば離婚は認められる
- 相手に離婚の原因があれば慰謝料請求できる
- 一時的な感情で行動することは避ける
順番に説明します。
離婚したい場合に知っておきたいお金に関することについては、3章で詳しく説明しています。
2-1:話し合い(協議)で合意できればどのような理由でも離婚できる
そもそも相手と話し合い(協議)で離婚に合意できるなら、どのような理由でも離婚可能です。
そのため「離婚したい」という気持ちがあるなら、配偶者と一度しっかり話し合ってみるというのも手段の一つです。
しかし「不倫されている」「DV・モラハラがある」「円滑なコミュニケーションが難しい」といった場合もあると思います。
このような場合は、離婚を拒まれる、話し合いが進まない、ということも多いです。
また、離婚を切り出すとあなたにとって不利な条件を強要してくる可能性もあります。
さらに、二人だけで話し合いをしていると、途中までは話し合いに応じても、いざ離婚手続きを進めようとすると「やっぱり離婚しない」と話を覆してくるケースもあるようです。
このような場合は、弁護士に相談することをおすすめします。
また、法律上の離婚事由に該当する理由があれば、話し合いで合意できなくても離婚が可能です。
2-2:法律上の離婚事由があれば、離婚は認められる
「話し合い(協議)に応じてくれない」
「離婚を拒まれる」
「離婚の条件で合意できない」
といった場合は、家庭裁判所での離婚調停という手続きを使うことができます。
しかし、離婚調停は中立的な第三者である調停委員と一緒に話し合い、合意を目指す手続きです。
そのため、必ずしもあなたの訴えがすべて認められるとは限りませんし、離婚の条件について折り合いがつくとは限りません。
相手がやはり離婚を拒んだり、条件に合意ができないという場合は、裁判になります。
■離婚訴訟では離婚の理由(離婚事由)が問われる
離婚訴訟では、法律が定める離婚の原因(離婚事由)が夫婦間に存在するかどうかが問われます。
この離婚事由に該当するものがあると認められれば、相手が離婚を拒んでいても離婚することが可能です。
離婚事由となるものは下記のように定められています。
【離婚事由】
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
(民法770条1項各号)
不倫された場合は「一」に該当しますし、配偶者が家を出て家庭のお金を入れてくれない場合などは「二」に該当します。
さらに、DVやモラハラ、性の不一致などの問題は「五」の離婚事由に該当すると認められることもあります。
2-3:相手に離婚の原因があれば慰謝料請求できる
配偶者の不倫や、配偶者からのDV・モラハラの被害、家庭にお金を入れてくれないといった悪意の遺棄、セックスレスなど、相手に離婚の原因がある場合、離婚時に慰謝料請求することが可能です。
慰謝料の相場は、下記のようになっています。
※状況によって金額は異なるため、参考程度に考えてください。
さらに、離婚慰謝料は下記のような要素によっても変化します。
- 婚姻期間
- 幼い子供の有無
- 離婚原因になった行為の回数、期間(不倫など)
あなたの場合も離婚慰謝料が請求できる可能性がありますので、まずは弁護士に相談することをおすすめします。
離婚慰謝料について、詳しくは以下の記事でも解説しています。
【離婚慰謝料のケース別相場】請求できる条件と4つの増額要素を解説
2-4:一時的な感情で行動することは避ける
ここまで「離婚したい」とお考えの方に向けて、知っておきたいことを説明しましたが、注意点が一つあります。
それは、一時的な感情で行動することは避ける、ということです。
例えば、下記のような行動をすると、あなたに不利な条件で離婚することにもなり得ます。
- 適切ではないタイミングで離婚を切り出し、相手ともめてしまう
- 感情的になり、配偶者を侮辱したり暴力をふるったりする
- 不倫などの証拠を集める前に相手を問いただし、証拠が集めにくくなる
- 不倫されたため、不倫相手を侮辱する、言いふらす、ネットで拡散する
あなたにとって有利な条件で離婚するためには、適切な準備を行った上で、冷静に離婚を切り出して手続きを進めることが大事です。
3章:離婚したい場合に知っておきたいお金のこと
離婚したい場合は、下記のようなお金に関することで損しないように行動することが重要です。
- 婚姻費用
- 財産分与
- 慰謝料
- 養育費
- 年金分割
順番に説明します。
具体的な行動方法から知りたい場合は、4章からお読みください。
3-1:婚姻費用
離婚を決意して別居した時に、専業主婦など相手より収入が少ない場合は、離婚までの期間、相手に対して婚姻費用を請求することができます。
婚姻費用とは、婚姻中の夫婦の生活にかかる費用のことで、食費や住居費、養育費、医療費などを指します。
この婚姻費用は、夫婦である以上別居しても受け取れるもので、別居後すぐに請求することができます。
具体的な金額は、話し合いによって決めることもできますが、合意が得られない場合は、家庭裁判所の定める算定表に基づいて、調停や審判でその金額が決定されます。
※平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について
3-2:財産分与
財産分与とは、それまでに夫婦で購入した家、車、貯めたお金などを、離婚の際に二人で分けることを言います。法律でも、離婚する際は、財産分与を請求できるとされています(民法768条1項)
財産分与には、以下の3つがあります。
■清算的財産分与
清算的財産分与とは、夫婦の間で協力して形成してきた財産については、離婚時に公平に分配するというもの(おおむね、2分の1に分配)。
■扶養的財産分与
夫婦の一方の経済力が弱く、離婚後に自立して生活することが難しい場合、生活費の補助として一定の金額を一定期間支払うもの。
■慰謝料的財産分与
夫婦の一方に離婚原因がある場合、傷つけたことに対する慰謝料としての意味を持った財産分与のこと。
※別に慰謝料請求をしている場合、慰謝料的財産分与も支払わせるのは難しい。
財産分与の対象になるのは、婚姻中に夫婦の協力で形成されてきた財産です。
たとえば、
- 購入した自宅や車
- 結婚後の貯金
などです。
このように、離婚する場合は、財産分与によって財産の一部をもらう権利があるということをしっかり覚えておきましょう。
詳しくは以下の記事もご覧ください。
【弁護士が解説】離婚の財産分与の分け方と有利にする3つのポイント
3-3:慰謝料
2章でも解説したように、相手に離婚の原因がある場合は、離婚慰謝料を請求することができます。
離婚慰謝料の相場は50万円~300万円程度ですが、離婚の原因となった相手の行為や、結婚してからの期間、幼い子供の有無などによっても金額が変わってきます。
慰謝料の金額はケースバイケースですが、離婚トラブルに強い弁護士であれば、より高額の慰謝料を請求できる可能性があります。
離婚トラブルに強い弁護士の選び方について、詳しくは9章をご覧ください。
離婚慰謝料については、下記の記事でも詳しく解説しています。
【離婚慰謝料のケース別相場】請求できる条件と4つの増額要素を解説
3-4:養育費
養育費とは、離婚後も離婚した配偶者から、子供の養育のためにかかるお金をもらうことです。
未成年の子供がいる限り養育費の請求は認められるため、たとえ配偶者が「養育費は支払わない」と拒否しても、請求することが可能です。
養育費には以下の相場があり、あなたの配偶者には、一般的に以下の費用の支払いの義務があります。
※子供が一人の時の養育費の相場
そのため、離婚時か離婚後に、養育費の金額や支払い方法、支払い日などを取り決める必要があります。
子供のためにも、確実に養育費を取れるように行動することが大事なのです。
詳しくは以下の記事もご覧ください。
【離婚後の養育費】金額の決め方や相場、未払いを防ぐ4つのポイント
3-5:年金分割
平成19年から年金分割制度が運用され、婚姻中に納められた厚生年金保険料の支払い実績(標準報酬)を、夫婦間で通常2分の1の割合で分割することができるようになりました。
この制度によって、夫の扶養家族として厚生年金を支払うことのなかった専業主婦でも、婚姻中の夫の厚生年金保険料の支払い実績(標準報酬)を分割して受け取ることができ、年金が増額されることになります。
ここでの注意点は、支給される夫婦の年金額を分割するわけではなく、婚姻期間中の厚生年金保険料の算定基礎となる標準報酬を分割するという点です。
さらに、年金分割は、国民年金は対象にならず、厚生年金部分だけが分割されることになります。
年金分割の請求は、離婚の翌日から2年以内に申請を行わない場合は、年金分割を得ることができないので注意が必要です。
4章:離婚したい場合にまずやっておく準備
離婚したい場合、勢いで行動したりせず、まずは下記のような準備を行うことが大事です。
- 離婚後の生活設計をよく考える
- 有利な条件で離婚できるように証拠を集める
- 離婚は大きな決断になるため、修復できないかよく考える
順番に説明します。
離婚手続きの流れについては、5章で説明します。
4-1:離婚後の生活設計をよく考える
離婚したい場合、離婚後の生活設計をよく考えておくことが大事です。
特に専業主婦やパートで、自分だけの収入では経済的に苦しくなることが予測される場合は、
- 離婚後の仕事での収入
- 財産分与や慰謝料、養育費などの貰えるお金
- 公的な助成金
などを合計して、生活が成り立っていけるのか試算することが重要です。
また、経済的な自立に向けて、下記のようなことも可能な範囲で検討、実践することをおすすめします。
- 貯金をためておく
- 離婚後の仕事を決めておく
- 離婚後の住まいを探しておく
- 精神的な自立を目指す
4-2:有利な条件で離婚できるように証拠を集める
あなたにとって有利な条件で離婚するためには、相手の財産や退職金、年金分割、公的な助成金などもよく調べて、資料を準備しておく必要があります。
また、不倫やDV、セックスレスなどの離婚原因の証拠となる画像や音声、詳細な記録なども集めておく必要があります。
集めておく資料としては、次のようになります。
- 預貯金通帳(通帳のコピー)
- 所得を証明する書類(給与明細、確定申告書類など)
- 不動産登記簿
- 証券口座の明細
- 生命保険に関する書類
- 夫の会社の就業規則の規定や現在の退職金支給実態
- 厚生年金保険料の支払い実績(標準報酬)
不倫やDV、セックスレスなどの証拠の集め方について、詳しくは次の記事で解説しています。
離婚の慰謝料相場は?請求できる5つのケースと証拠を弁護士が解説
4-3:離婚は大きな決断になるため、修復できないかよく考える
もし、あなたがまだ離婚するかどうか迷っている場合は、相手と関係を修復できないかもう一度検討することが大事です。
あなたの状況にもよりますが、離婚すれば、
- 家計の悪化
- 子供との別居
- 離婚に伴う精神的消耗
などの可能性もあります。
また、長年生活を共にした配偶者と別れることで、しばらく時間が経過してから後悔することになることもあるようです。
そのため、もし一時的な感情の高まりで離婚したいとお考えであれば、一度落ち着いて考えたり、相手と話したりすることをおすすめします。
しかし、相手に大きな離婚原因となり得る問題があったり、長年考えた末の離婚したいという思いがあるのであれば、これから具体的な離婚手続きに入っていきましょう。
5章:離婚したい場合の離婚手続きの流れ
離婚する方法には、大きく以下の3つのものがあります。
- 協議離婚
- 離婚調停
- 離婚訴訟
順番に説明します。
5-1:協議離婚
協議離婚とは、夫婦間の話し合い(協議)による離婚のことです。
夫婦間の話し合いで合意が得られれば、離婚の理由を問われることなく、離婚届を提出することで成立します。
この協議離婚の大事な手続きとしては、離婚届を提出する前に、離婚の合意内容を書面に証拠として残しておくことがあげられます。
なぜなら、日本の離婚の約9割がこの協議離婚となっていますが、財産分与や慰謝料、養育費などの重要な取り決めが十分でない場合は、離婚後にトラブルとなるケースが多いからです。
離婚手続きの前に決めておくこととしては、主に次の5つがあげられます。
- 財産分与の方法
- 慰謝料の金額・支払方法
- 子供の親権と面会交流
- 養育費の金額・支払方法
- 年金分割
これらを十分に話し合い、合意が得られた内容を「離婚協議書」として書面にしておくことが重要です。
※離婚協議書のサンプルは、次のようになります。
さらに、離婚後に慰謝料・養育費の未払いなどの金銭トラブルを防ぐためには、「離婚協議書」を公証役場で公証人が法律にしたがって作成する「公正証書」にすることをおすすめします。
また、「本公正証書に規定する金銭債務の支払を履行しないときは直ちに強制執行に服する」という強制執行認諾文言付きの公正証書にしておくことが大事です。
この公正証書によって、慰謝料・養育費の未払いなどが発生した際は、裁判を起こさなくても相手の給料や財産を差し押さえるなど法的手続きをとることができます。
協議離婚は、夫婦間の話し合いで成立する、最も多い離婚の形ですが、離婚後に後悔しないために、合意内容の証拠となる書面は必ず作成しましょう。
5-2:離婚調停
調停離婚とは、調停委員会による仲介を受けて行う離婚のことです。
場合によっては話し合い(協議)では合意ができず、離婚手続きが進められない場合もあります。
そのような場合は、家庭裁判所に離婚調停を申し立てることができます。
離婚調停では、裁判官1名と調停委員2名からなる調停委員会によって、双方の意見の聞き取りや条件面の話し合いが夫婦別々に行われます。
夫婦双方が合意した場合は、合意した内容が調停調書に記載され、調停離婚が成立することなります。
■離婚調停に必要な書類
離婚調停の申し立ての手続きに必要な書類は、次の通りです。
- 夫婦関係調整調停申立書3通
- 事情説明書1通
- 子についての事情説明書1通(未成年の子がいる場合)
- 連絡先等の届出書1通
- 進行に関する照会回答書1通
- 申立人の戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)
- 年金分割のための情報通知書(年金分割を求める場合のみ)
- 照会回答書
また、揃えておいた方がよい書類として、住民票、所得証明書・源泉徴収票(養育費・婚姻費用分担請求をするとき)なども上げられます。
■離婚調停の費用
離婚調停の費用は、次のようになります。
- 収入印紙代:1,200円
- 切手代:約1000円
- その他申立費用:各1,200円
(※婚姻費用・慰謝料・養育費の請求なども同時に申し立てた場合)
申立人は、調停成立の日から10日以内に、離婚届に離婚調停調書の謄本を添えて、市区町村役場に提出しなければなりません。
■離婚調停でも解決に至らない場合がある
もし、相手が離婚を拒否したり、金銭面や子供の親権等で合意が得られない場合は、調停不成立となります。
その場合は、離婚をあきらめるか、離婚を再度協議するか、あるいは家庭裁判所に離婚訴訟するか選択することになります。
5-3:裁判離婚
離婚調停でも離婚の合意が得られなかった場合は、離婚訴訟を申し立てて争うことになります。
この判決による離婚が「裁判離婚」です。
■裁判離婚の申し立てに必要な書類
離婚訴訟の申し立ての手続きに必要な書類は、次の通りです。
- 訴状2通
- 離婚調停不成立調書
- 夫婦の戸籍謄本
また、他の各請求に合わせて、それぞれの証拠・資料等が必要となります。
- 財産分与請求:共有財産が明確となる資料(預金通帳のコピー、不動産登記簿謄本、他)
- 慰謝料請求:相手の不法行為の証拠等
- 養育費・婚姻費用分担請求:所得証明書・源泉徴収票
- 年金分割:年金分割のための情報通知書
■離婚訴訟の費用
離婚訴訟の費用は、次のようになります。
- 収入印紙代:13,000円(離婚のみ)
- 切手代:5,000~7,000円程度
- その他申立費用:各1,200円
(※財産分与・婚姻費用・養育費の請求なども同時に申し立てた場合)
離婚訴訟の判決によって、離婚だけでなく訴状で請求された親権や財産分与、慰謝料など離婚にかかわる様々な条項に対しての判断が下されます。
もし、判決に不服がある場合は、判決後14日以内に高等裁判所に控訴することもできます。
離婚を認める判決が確定したら、原告は確定後10日以内に離婚届に「判決の謄本」と「判決確定証明書」を添えて、市区町村役場に提出しなければなりません。
離婚訴訟について、詳しくは次の記事で解説しています。
【弁護士が解説】離婚訴訟の流れや費用・早期解決の2つのポイント
6章:離婚したいのに話し合いが進まない場合の対処法
離婚したいのに話し合いが進まない、という場合には大きく以下のようなタイプの状況があります。
- 離婚を拒まれている場合
- 金銭面の条件で合意できない場合
- 親権を互いに譲らない場合
これらの状況別の対処法をこれから紹介します。
6-1:離婚を拒まれている場合
離婚したいという気持ちを伝えても、それを拒まれているという場合は、まずは相手にも考える時間を与えることが大事です。
離婚したいと言われることは、どのような方にとっても動揺するものですし、いったん感情を落ち着かせたり、考えを整理する時間を必要とします。
そのため、一度必要なことを伝えたら、時間を置いてみましょう。
離婚を切り出したときは、相手が感情的になったり、話し合いにならなかったりするかもしれませんが、時間を置くことで冷静に話し合える場合もあります。
しかし、
- 時間を置いても効果がない
- 話し合いから逃げられる
- さらに感情的になる
などの場合は、弁護士に相談することをおすすめします。
6-2:金銭面の条件で合意できない場合
3章でも解説したように、離婚では、慰謝料、養育費、婚姻費用、財産分与などのお金の面での合意が必要になります。
離婚すること自体には同意してくれても、お金の面で互いに合意できない、ということはあり得ます。
そのため、それぞれの金額の決め方、考え方などについてしっかり知った上で話し合うことが大事です。
それぞれ詳しくは以下の記事をご覧ください。
また、話し合いで解決できなければ、離婚調停や離婚訴訟の手続きを活用することをおすすめします。
6-3:親権を互いに譲らない場合
離婚したい場合、お子さんがいれば親権を互いに譲らない場合も多いです。
離婚での親権は、
- これまでの監護状況
- 子供に対する愛情
- 親権者としての経済力
- 今後の生活(監護)環境
- 子供の意思・希望
などの要素で判断されます。
まずは夫婦での話し合いから始めると思われますが、互いに譲れない場合は、やはり離婚調停や離婚訴訟を活用する必要があります。
そのような場では、上記の5点について家庭裁判所の調停員や裁判官に説明しなければなりません。
詳しくは下記の記事をご覧ください。
【弁護士が解説】離婚で親権を獲得する3つのポイントとよくある疑問
7章:離婚届の提出・手続き
そもそも、離婚届は、各市区町村役場で取得し、本籍か現在住んでいる市区町村の役場に提出するものです。
本籍地以外の役場に提出する際には、戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)一通が必要になります。
これを提出することによって、離婚手続きを完了することができます。
ただし、下記の表のように離婚の手続きの内容によって、期限や必要書類が変わってきますので注意してください。
また、離婚届には下記の内容を記入する必要があるため、これらについて事前に合意できていなければなりません。
- 届出の日付を記入
- 氏名、生年月日の記入
- 住所を記入
- 本籍を記入
- 父母の氏名(続き柄)を記入
- 離婚の種別を選択
- 婚姻前の氏にもどる者の本籍を記入
- 未成年の子の氏名
- 同居の期間を記入
- 別居する前の住所(別居していなければ空欄)
- 別居する前の世帯のおもな仕事を選択
- 夫妻の職業を記入
- 届出人の署名・押印
- 証人(協議離婚のときのみ)
下記のような場合は、離婚届が受理されません。
- 離婚届の記載に不備があった場合
- 子供の親権者が決められていない場合
- 離婚届け不受理の申し出が出されている場合
詳しくは以下の記事をご覧ください。
【チェックリスト付】離婚後の手続きや準備物・注意点を弁護士が解説
離婚の条件などについて互いに合意できたら、上記のように離婚届を記入して提出すれば、離婚手続きは完了となります。
ただし、離婚後は新たな生活が始まるため、特に経済的な面で活用できる制度を知っておくことも大事ですので、これから説明します。
8章:離婚後の生活で活用できる補助金・助成金
離婚後の生活では、特に経済的な面で困ってしまうことも少なくありません。
そのため、下記のような補助金・助成金を知っておき、必要であれば活用することが大事です。
- 児童手当
- 児童扶養手当(母子手当)
- 児童育成手当
- ひとり親家族等医療費助成制度
- 母子家庭等の住宅手当
- 生活保護
順番に説明します。
8-1:児童手当
児童手当は、離婚後も親権者が受け取ることができます。
児童手当は、子どもが中学校を卒業するまでもらうことができる手当です。
離婚後に受給者の変更があった場合は、受取人変更の手続きが必要ですので、市町村役場の担当窓口に行って手続きを忘れずに行うことが大事です。
8-2:児童扶養手当(母子手当)
離婚後は、要件を満たせば、児童扶養手当(母子手当)も受け取ることができます。
児童扶養手当(母子手当)は、子供が18歳になる年度末までもらうことができるものです。
ただし、支給されるには所得制限の条件があります。
詳しくはこちらの出典:厚生労働省「児童扶養手当について」から確認するか、市町村役場の窓口で問い合わせてみてください。
8-3:児童育成手当
児童育成手当とは、母子家庭で一定の条件を満たした場合に、支給される手当です。
子どもが18歳になるまでもらうことができます。
所得制限などの条件は市町村によって異なりますが、東京都であれば児童1人につき月額1万3500円もらうことができます。
児童扶養手当などと合わせて、市町村役場の窓口で問い合わせてみてください。
8-4:ひとり親家族等医療費助成制度
ひとり親家族等医療費助成制度とは、ひとり親やその子どもなどが、病院で診察を受けた場合に、自己負担分の一部が助成される制度です。
つまり、医療費が安くなるということです。基本的には、保険診療の範囲内の治療なら自己負担額の全額が助成されます。
ひとり親家庭で、子どもが18歳になる年度末まで支給されます。
ただし市町村によって所得制限の条件が異なりますので、詳しくは窓口で問い合わせてみてください。
8-5:母子家庭等の住宅手当
母子家庭(父子家庭)で、20歳未満の子どもを養育ししている場合は、母子家庭等の住宅手当が支給される場合があります。
賃貸の住宅に家族で住んでいて、月1万円以上の家賃を支払っている場合が対象です。
ただし、所得制限があります。
自治体によっては実施していない可能性もありますので、自治体の窓口で問い合わせてみてください。
8-6:生活保護
母子家庭(父子家庭)では、一人の収入ではとても家計を維持できないという場合もあると思います。
そのような場合は、生活保護を活用することも検討してください。
生活保護は、
- 援助してくれる身内、親類がいない
- 資産を持っていない
- やむを得ない理由で働けない
- 月収が最低生活費を下回っている
という条件を満たしている場合、申請が認められると受給できます。
このように他の助成金・補助金よりも条件が厳しいため、その他の制度を活用しても生活が困難な場合などに、検討し、申請することをおすすめします。
9章:離婚したい場合は、まずは弁護士に無料相談することがおすすめ
離婚したい場合は、できるだけ早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士に相談するメリット と、離婚問題に強い弁護士の選び方について説明します。
9-1:弁護士に相談するメリット
離婚したい場合に、弁護士に相談するメリットは下記のものです。
- 代理人として交渉を有利に進めてくれる
- 親権や面会交流権の相談ができる
- 婚姻費用等の請求がスムーズにできる
- 適正な財産分与が得られる
離婚の手続きや相手との交渉は、あなた一人で行うと大きな手間、時間がかかることになり、また精神的ストレスも大きいです。
弁護士に依頼すれば、依頼後の手続きや交渉を代理人として行ってくれるため、手間、時間、ストレスが最小限になります。
また、あなたに最大限有利な条件で交渉してくれます。
ただし、弁護士なら誰でもいいわけではありません。
離婚したい場合は、離婚問題に強い弁護士に依頼することが大事です。
9-2:相談は離婚問題に強い弁護士にしよう
離婚したい場合は、離婚問題に強い弁護士に依頼することが大事です。
離婚問題に強い弁護士は、下記のポイントから選んでください。
- 慰謝料請求等を含む離婚解決の実績が多い
- 依頼前に請求できる相場を教えてくれる
- 相談に的確に答えてくれる
離婚問題を弁護士に相談する場合は、下記の記事も参考にしてください。
離婚問題を弁護士に依頼すべき5つのケースとメリット、費用相場も解説
【離婚の弁護士費用の相場一覧】弁護士への依頼で損しない方法を解説
まとめ
いかがでしたか?
最後に今回の内容をまとめます。
■離婚したい場合に知っておきたいこと
- 話し合い(協議)で合意できればどのような理由でも離婚できる
- 話し合い(協議)で合意できなくても、法律上の離婚事由があれば離婚は認められる
- 相手に離婚の原因があれば慰謝料請求できる
- 一時的な感情で行動することは避ける
■離婚したい場合に請求可能なもの
- 婚姻費用
- 財産分与
- 慰謝料
- 養育費
- 年金分割
■離婚したい場合に考えておきたいこと
- 離婚後の生活設計をよく考える
- 有利な条件で離婚できるように証拠を集める
- 離婚は大きな決断になるため、修復できないかよく考える
■離婚手続きの方法
- 協議離婚
- 離婚調停
- 離婚訴訟
■離婚後の生活で活用できる補助金・助成金
- 児童手当
- 児童扶養手当(母子手当)
- 児童育成手当
- ひとり親家族等医療費助成制度
- 母子家庭等の住宅手当
- 生活保護
この記事を参考に、できることから始めてみてください。