【弁護士が解説】交通事故の損害賠償金の内訳と高額請求のポイント

監修者

弁護士法人QUEST法律事務所
代表弁護士 住川 佳祐

【弁護士が解説】交通事故の損害賠償金の内訳と高額請求のポイント
チェック
この記事を読んで理解できること
  • 交通事故の損害賠償金の4つの計算項目
  • 交通事故の損害賠償金で最も差が出る3つの慰謝料
  • 交通事故による収入減を補う2つの損害賠償金
  • その他の主な損害賠償金の計算方法
  • 損害賠償金の計算で弁護士に依頼すると得られる3つのメリット

あなたは、

 「交通事故の損害賠償金はどうやって計算するのか知りたい」

 「保険会社から提示された損害賠償金は、本当に妥当な額?」

 「もっと高額な損害賠償金をもらえないかな?」

などの悩みや疑問をお持ちではありませんか?

つらい思いをされているあなたに、交通事故に特化した弁護士が、結論としてお伝えしたいのは、

保険会社から提示される損害賠償金は、適正な賠償金額より大幅に少ない可能性があるということです。 

そのため、提示された損害賠償金が本当に妥当な金額なのか、あなた自身が損害賠償金の相場や計算方法を知っておくことが重要です。

※この記事では、示談交渉に備えて各項目の賠償金を計算する方法を解説していきます。
そのためよく使われる示談金という言葉に代えて、損害賠償金(請求できる金額)としています。


損害賠償金の計算には3通りの算出基準があり、弁護士を依頼することで得られる裁判基準の損害賠償金が最も高額になります。
交通事故の示談金の3つの基準

そのため、保険会社から提示された損害賠償金は、正しい計算方法でかつ障害状況を正当に把握して算出されたものかを確認することが大事です。

そこでこの記事では、損害賠償金の内訳、それぞれの計算方法と基準について詳しく解説し、さらに弁護士に依頼して損害賠償金を増額する方法についても解説します。

最後までしっかり読んで、正当かつ妥当な損害賠償金がもらえるように行動をはじめましょう。

 

目次

  1. 第1章 交通事故の損害賠償金の4つの計算項目
    1. 1-1 精神的損害:入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料
    2. 1-2 消極損害:ケガによる休業損害、後遺障害や死亡による逸失利益
    3. 1-4 物的損害:車の修理費、積荷、建物等の破損や損壊などの修理費
  2. 第2章 交通事故の損害賠償金で最も差が出る3つの慰謝料
    1. 2-1 入通院慰謝料:人身事故のケガによる精神的損害に対する慰謝料
    2. 2-2 後遺障害慰謝料:交通事故が原因で障害を負ったときの慰謝料
    3. 2-3   交通事故が原因で死亡したときの慰謝料
  3. 第3章 交通事故による収入減を補う2つの損害賠償金
    1. 3-1 休業損害:ケガによる治療、入院期間の収入減に対する賠償
      1. 3-1-2 個人事業主の場合
      2. 3-1-3 会社役員の場合
      3. 3-1-4 専業主婦(主夫)の場合
      4. 3-1-6 無職、失業者の場合
    2. 3-2 逸失利益:後遺障害や死亡による収入減に対する賠償
  4. 第4章 その他の主な損害賠償金の計算方法
    1. 4-1 治療費の計算方法
    2. 4-3 通院交通費の計算方法
    3. 4-4 付添看護費の計算方法
    4. 4-5 介護費の計算方法
    5. 4-7 家屋改造費の計算方法
    6. 4-8 葬儀費の計算方法
  5. 第5章 損害賠償金の計算で弁護士に依頼すると得られる3つのメリット
    1. 5-1 裁判基準が適用され、損害賠償金が増額する
    2. 5-2 損害賠償金請求での手間、時間、心理的ストレスから減少する
    3. 5-3 保険会社などとのトラブルを避けられる
  6. まとめ
交通事故被害者のあなたへ、まずはお気軽にご相談ください
交通事故被害者のあなたへ、まずはお気軽にご相談ください

第1章 交通事故の損害賠償金の4つの計算項目

損害賠償金の補償内容

ここでは、交通事故による
精神的苦痛に対する賠償(精神的損害)
財産的損害のうちの
事故がなければ得られていたはずの利益(消極損害)
事故によって生じた損害(積極損害)
物質的な損害(物損)
の各項目について説明していきます。

1-1 精神的損害:入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料

慰謝料とは交通事故によってあなたが受けた精神的苦痛に対する賠償のことです。
損害賠償金の中でも大きな割合を占めるのがこの慰謝料です。

交通事故の3つの慰謝料

入通院慰謝料は、ケガをして入院、通院した日数や期間を元に計算して支払われます。

後遺障害慰謝料は、ケガによる後遺障害がのこり後遺障害申請によって認定された後遺障害等級をもとに算出された賠償のことです。

死亡慰謝料とは、交通事故によって亡くなられた本人とそのご遺族に対して支払われる賠償のことです。

※各項目の詳しい計算方法は、第2章で解説します。

1-2 消極損害:ケガによる休業損害、後遺障害や死亡による逸失利益

休業損害とは、交通事故のケガや治療によって働けず失った収入に対する賠償のことです。
あなたの収入を算出する「日額基礎収入」と「休業日数」をもとに計算します。

逸失利益とは、交通事故による後遺障害や死亡によって失われた、将来得られるはずの利益に対する賠償のことです。
あなたの現在の収入、年齢や後遺障害の等級をもとに計算します。

※各項目の詳しい計算方法は、第3章で解説します。


1-3 積極損害:治療費、入院諸雑費、通院交通費、付添看護費、葬儀費など

損害としてまず思い浮かぶ費用には治療費、入院諸雑費などありますが、実際はそのほかにもさまざまな費用が発生します。
通院時の交通費や付き添いの看護費、介護費、またつらいことですが葬儀費なども必要かもしれません。

これらの費用はいずれも保険会社から損害賠償金として支払われるべきものですが、あなたが支払った領収書の保管や費用の漏れはないか確認をしっかりしましょう。

※各項目の詳しい計算方法は、第4章で解説します。

1-4 物的損害:車の修理費、積荷、建物等の破損や損壊などの修理費

交通事故による車の損害に対しての修理費、買い替え費用や積み荷の破損、建物等の損壊、代車費用などへの賠償があげられます。

第2章 交通事故の損害賠償金で最も差が出る3つの慰謝料

入通院慰謝料:人身事故のケガによる精神的損害に対する慰謝料
後遺障害慰謝料:交通事故が原因で障害を負ったときの慰謝料
死亡慰謝料:交通事故が原因で死亡したときの慰謝料

損害賠償金の中でも大きな割合を占めるのがこれらの慰謝料です。

それぞれの慰謝料ごとに、3つの算出基準による慰謝料を比較していきます。

【損害賠償金を決める3つの基準】

自賠責基準・・・法律で定められた最低限の補償。
任意保険基準・・・自動車の保険会社が独自に定めている基準で、多くの場合自賠責基準に近い金額になる。自分だけで保険会社と対応した場合、任意保険基準になる傾向がある。
裁判基準・・・裁判例を参考にした基準で、損害賠償金が最も高額になる。弁護士に依頼した場合に適用される基準。

2-1 入通院慰謝料:人身事故のケガによる精神的損害に対する慰謝料

ここでは入院が1ヶ月、通院が6ヶ月(病院にかよった日数は60日)の場合を想定して比較していきます。

入通院慰謝料

■自賠責基準の計算方法
①実入通院日数(病院に通った日数)90日×2
②入通院期間(病院に通った期間)30日と6か月(210日)
のどちらか短い方の日数に「4200円」をかけて計算します。

上記の条件の場合、①90日 × 2 = 180日の方が ②の210日より少ない日数になるため、180日に4200円をかけた金額が慰謝料となります。

180日 × 4200円 = 75万6000円

■任意保険基準の計算方法
各保険会社が独自の基準で設定していますので具体的な金額は公開されておらず、正確に計算することができません。
一般的には自賠責基準に多少増額した査定金額となっているようです。

※後述する後遺障害慰謝料、死亡慰謝料の場合も算出基準が公開されていませんが、概ね自賠責基準と同額の提案がされていることが多いです。

■裁判基準の計算方法
裁判基準は、過去の裁判所の判例から以下のように定められています。
【裁判基準の入通院慰謝料(通常のもの)】
入通院慰謝料1
※単位は万円

入院が1ヶ月、通院が6ヶ月(病院にかよった日数は60日)の場合
入通院慰謝料は、149万円 になります。


【裁判基準の入通院慰謝料(他覚症状のないもの)】

一般にむちうちと呼ばれている症状のように、他の人から見てその損傷がわからない場合は、下記の別表Ⅱが算定基準となります。
入通院慰謝料2

入院が1ヶ月、通院が6ヶ月(病院にかよった日数は60日)の場合
入通院慰謝料は、113万円 になります。

自賠責基準で計算した入通院慰謝料は「75万6000円」でしたが、弁護士に依頼して算定される裁判基準の入通院慰謝料は「149万円」(または「113万円」)とかなり高額になります。

弁護士
弁護士
上記の表の金額は月単位の基準数値ですから、実際は入院、通院の日割り計算などが必要となります

2-2 後遺障害慰謝料:交通事故が原因で障害を負ったときの慰謝料

 

後遺障害慰謝料とは、交通事故後治療を受けてもケガによる後遺障害がのこり、後遺障害申請によって認定された後遺障害等級をもとに算出される賠償のことです。

ここでは、正面以外を見た場合に複視の症状が残り、後遺障害等級13級2号と認定された場合を想定して比較していきます。
後遺障害慰謝料
後遺障害等級13級の後遺障害慰謝料
■自賠責基準の計算方法
上記の表の通り後遺障害慰謝料がその等級ごとに定められています。

後遺障害等級13級2号の場合、自賠責基準の後遺障害慰謝料は57万円となります。

■裁判基準の計算方法
裁判基準は、過去の裁判所の判例から上記の表のように定められています。

正面以外を見た場合に複視の症状を残す後遺障害等級13級2号の場合、裁判基準の後遺障害慰謝料は180万円となります。

表を見ていただければ解るように、後遺障害慰謝料も裁判基準はかなり高額な賠償金となっています。

弁護士
弁護士
後遺障害慰謝料を受け取るには、まず審査基準や要件を満たす適切な後遺障害申請が必要です。弁護士は依頼を受けて適正な後遺障害等級が得られるお手伝いをいたします。

2-3   交通事故が原因で死亡したときの慰謝料

 

死亡慰謝料とは交通事故で亡くなられた本人とそのご遺族対して支払われる慰謝料です。

■自賠責基準の計算方法
自賠責基準では、
自賠責 死亡慰謝料
一例として
死亡した被害者(父親)が3人家族で、学生(扶養家族)の子供が1人いた場合、

死亡した本人に350万円、遺族2人に650万円、扶養家族に200万円
合計で1200万円 が死亡慰謝料として支払われます。

■裁判基準基準の計算方法
裁判基準では
裁判基準 死亡慰謝料
※「その他」とは、子供や独身の男女のことです。

この裁判基準の死亡慰謝料も一応の目安となるもので、被害者遺族の精神的苦痛や特別な事情、その他の事由によって増額される場合もあるようです。

交通事故の死亡慰謝料について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
 【時系列】交通事故で家族が死亡した場合にやるべきことと示談金相場

 【弁護士直伝】交通事故の死亡慰謝料の相場と円滑に高額請求する方法

弁護士
弁護士
これまでの解説でお分かりのように、3つの慰謝料ともに裁判基準で計算されたほうが、適正で手厚い損害賠償金だといえるようです。


第3章 交通事故による収入減を補う2つの損害賠償金

交通事故の逸失利益と休業損害

3-1 休業損害:ケガによる治療、入院期間の収入減に対する賠償


休業損害とは、交通事故の被害者がケガのために働けず、その期間に得られなかった収入に対する賠償のことです。
交通事故で休んだために会社から支払われなかった給与やボーナスなどが対象です。

また、会社員以外に自営業や専業主婦、アルバイトの場合でも、条件を満たせば休業損害が認められます。
※ただし、株式の配当、家賃収入、会社役員の利益配分などは労働の対価ではないため、休業損害の対象に入りません。

休業損害の計算は、まずあなたが仕事で得られるはずだった1日当たりの収入「日額基礎収入」を算出し、ケガのために働けなかった「休業日数」をかけて計算します。

「休業損害」=「日額基礎収入」×「休業日数」

日額基礎収入の算出方法は所得の種類によって異なり、また休業日数は治療期間中、実際に休んだ日数ではなく、ケガの内容、程度、治療過程や仕事の内容などによって妥当な日数が算出されます。

弁護士
弁護士
休業損害の計算では、出勤日数や休業日数の算出や休業損害の期間のことで、保険会社と被害者の間でもめることが非常に多いようです。


ここでは、

1. 会社員(給与所得者)
2. 個人事業主の場合
3. 会社役員の場合
4. 専業主婦(主夫)の場合
5. アルバイト、パートの場合
6. 無職、失業者の場合

の6つの場合について、それぞれの計算方法を解説していきます。


3-1-1 会社員(給与所得者)の場合

休業損害

■自賠責基準の計算方法
自賠責基準の休業損害は、日額基礎収入を5700円として計算します。

  休業損害 = 5700円 × 休業日数

日額基礎収入が、5700円を超えると立証された場合は、19000円を上限としてその実額で計算されます。

■裁判基準の場合
裁判基準の日額基礎収入は、自賠責基準のように定額ではなく、交通事故前3か月分の収入をもとに、日額基礎収入を算出します。
場合によっては、交通事故前1年分の収入を元に計算を行う場合もあります。

休業損害の日額基礎収入の計算式
※3ヶ月で年間収入の平均を計算できない場合は、事故前1年間の収入を365日で割ります。

給与の合計額とは、基本給に残業代や手当などを足した支給額のことです。
税金、社会保険料などの各種控除が差し引かれた差引支給額ではありません。
ここではボーナスは含みません。ボーナスも減少してしまったという場合は、別途計算して請求します。

事故前の給与の証明として、会社から「休業損害証明書」「源泉徴収票」を作成してもらい、それを保険会社に提出する必要があります。

「休業日数」には、交通事故の治療のために有給休暇を使った場合、その有給休暇も含めて計算できます。

【休業損害の具体例:会社員の場合】

事故前3ヶ月の給与合計120万円
出勤日数70日
入院1ヶ月、通院6ヶ月(60日)
入通院日数90日
仕事を90日休業した場合

自賠責基準の場合
5700円 × 90日 = 51万3000円

裁判基準の場合
120万円 ÷ 70日 = 1万7143円
1万7143円 × 90日 = 154万2870円

3-1-2 個人事業主の場合


■自賠責基準の計算方法
会社員(給与所得者)の場合と同様に、日額基礎収入を5700円として計算します。

  休業損害 = 5700円 × 休業日数

日額基礎収入が、5700円を超えると立証された場合は、19000円を上限としてその実額で計算されます。


■裁判基準の場合
休業損害の日額基礎収入の計算式 個人事業主
※固定経費とは、事務所の賃料、光熱費、従業員給与、借入の利息、減価償却費などです。

個人事業主の場合、前年分の収入、所得について確定申告で把握しているはずですが、注意すべきなのは「課税所得」ではなく、総収入から固定経費を除く経費を引いた金額をもとに日額基礎収入を計算するということです。

なぜなら、休業中もやむを得ず発生する固定費(家賃、給与など)については、その経費を維持しなければ事業を再開することができなくなるため、損害賠償の対象になるからです。

したがって、個人事業主の場合は、総収入や固定費の証拠として「確定申告書」「課税証明書」などを保険会社に提出する必要があります。

3-1-3 会社役員の場合


■自賠責基準の場合
原則認められません。例外的に、1人会社等の小規模の場合は、認められる可能性があります。


■裁判基準の場合
休業損害の日額基礎収入計算式 役員
裁判基準の日額基礎収入は、自賠責基準のように定額ではなく、交通事故前3か月分の収入をもとに、日額基礎収入を算出します。
場合によっては、交通事故前1年分の収入を元に計算を行う場合もあります。

経営者を含む会社役員の場合、報酬の中に「労働の対価」である部分と「会社の利益配分」の部分があると考えられます。

労働の対価である報酬については、会社員(給与所得者)と同様に休業損害を請求することができます。

ただ、報酬のどこまでが労働の対価であるか判断が難しい場合が多いようですが、事業規模や事業の形態、さらには被害者の休職が事業業績に与えた影響などによって総合的に判断されるようです。

3-1-4 専業主婦(主夫)の場合


専業主婦の場合、家事労働によって現在報酬を得ているわけではありません。
しかし交通事故によって日々の家事労働を休まなければならなくなった場合は、これを休業ととらえて休業損害が認められます。
ただし会社員のように仕事を休んだ日ということが証明しにくいので、入院期間や通院日数を基準にすることが多いようです。

■自賠責基準の計算方法
会社員(給与所得者)の場合と同様に、日額基礎収入を5700円として計算します。

  休業損害 = 5700円 × 休業日数

■裁判基準の場合
専業主婦の場合の「日額基礎収入」は、以下のように計算します。

休業損害の日額基礎収入計算式 専業主婦

賃金センサス、全年齢女性学歴計

「賃金センサス」とは厚生労働省の統計のことで、平成30年の女性労働者の全年齢平均給与額は382万6300円ですので、日額基礎収入は10483円となります。

【休業損害の具体例:専業主婦の場合】
入院1ヶ月、通院6ヶ月(60日)
休業日数を90日と仮定して

自賠責基準の場合
5700円 × 90日 = 51万3000円

裁判基準の場合
日額基礎収入 382万6300円 ÷ 365日 = 1万483円
1万483円 × 90日 = 94万3470円


3-1-5 アルバイト、パートの場合


■自賠責基準の計算方法
会社員(給与所得者)の場合と同様に、日額基礎収入を5700円として計算します。

  休業損害 = 5700円 × 休業日数

日額基礎収入が、5700円を超えると立証された場合は、19000円を上限としてその実額で計算されます。

■裁判基準の場合
アルバイト、パートの場合は、基本的に会社員(給与所得者)と同じように、以下のように「日額基礎収入」を計算します。
休業損害の日額基礎収入計算式 アルバイト
※3ヶ月で年間収入の平均を計算できない場合は、事故前1年間の収入を365で割ります。

3-1-6 無職、失業者の場合


交通事故にあったときに失業者で、収入がない場合、原則、休業損害は支払われません。

しかし、就職先が内定していた場合や、労働能力及び労働意欲があり就労する蓋然性が高い場合には認められることもあるようです。
日額基礎収入の計算としては、内定先の給与額や「賃金センサス」の平均給与額などを考慮して求められます。

3-2 逸失利益:後遺障害や死亡による収入減に対する賠償


逸失利益とは、交通事故による後遺障害や死亡によって失われた、将来得られるはずの利益に対する賠償のことです。
被害者の現在の収入、年齢や後遺障害の等級をもとに計算します。

後遺障害等級13級の逸失利益比較例

後遺障害の逸失利益の計算方法は、以下の通りです。

後遺障害の逸失利益計算式

■基礎収入の計算
 ・【会社員(給与所得者)】
会社員の場合は、事故前1年間の実際の収入額を、基礎収入として計算します。

 ・【個人事業主(事業所得)】
個人事業主の場合は、前年の確定申告で申告した金額を実際の収入として計算します。

 ・【会社役員(役員報酬)】
会社役員の場合は「労働の対価」として認められる部分のみが、基礎収入として計算できます。

 ・【専業主婦】
専業主婦の場合は、原則的に「賃金センサス」の全年齢平均賃金を基礎収入として計算します。

 ・【学生】
学生の場合は「賃金センサス」における全年齢平均賃金を基礎収入として計算することが多いですが、その場合も、実際に働くことができる年までの分は控除されます。

労働能力喪失率
労働能力喪失率とは、後遺症によって失われた労働力を、後遺障害の等級に応じた喪失率を定めたものです。

【介護が必要な後遺障害の場合】
後遺障害等級別労働能力喪失率
【介護が不要な後遺障害の場合】

後遺障害等級別労働能力喪失率

労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
「労働能力喪失期間」とは、原則として「症状固定(治療してもこれ以上改善されないという診断)」の日から、67歳までの期間とされます。

例えば45歳で症状固定になった場合は、
67歳-45歳=22年
と計算でき、労働能力喪失期間は22年になります。

そして、上記の年数に対応した「ライプニッツ係数」を下記の表から探します。
就労可能年数とライプニッツ係数表
45歳(労働能力喪失期間は22年)の場合、ライプニッツ係数は「13.163」であることが分かります。

【逸失利益計算の具体例】
それでは、以下の条件で実際に計算してみます。

会社員(年収600万円)→基礎収入600万円
後遺障害等級13級→労働能力喪失率9/100
症状固定時45歳→ライプニッツ係数13.163
600万円 × 0.09 × 13.163 = 710万8020円

逸失利益は710万8020円請求できる。

弁護士
弁護士
被害者が死亡してしまった場合は、労働能力喪失率は100%になりますが、生きていればかかっていたはずの生活費分を控除する必要があります。詳しくは弁護士に相談してください。
社員
社員
計算方法はよく分かりましたが、各項目を計算していくのは大変そうですね。

弁護士
弁護士
損害賠償金の計算は非常に手間がかかる上、慣れていないと計算ミスする可能性もあります。そこで最後に、弁護士に相談する必要性やメリットについて解説します。


第4章 その他の主な損害賠償金の計算方法

ここでは第1章であげた財産に対する損害(積極損害、消極損害)の中でも主要な以下の項目について、計算方法を解説します。

・治療費
・入院諸雑費
・通院交通費
・付添看護費
・介護費
・装具・器具費
・家屋改造費
・葬儀費

弁護士
弁護士
はじめに注意点として、交通事故であなたが受けた損害かかった費用の証拠(領収書、支払明細書など)はすべて保管しておきましょう。


4-1 治療費の計算方法


交通事故のケガの治療費は、本来加害者側の保険会社から支払われることになります。
治療の際、病院に対して交通事故の被害者であることを伝えれば、保険会社に直接請求してもらえる場合もあるようです。

ただし、交通事故と関係があれば何でも治療費が認められる、というわけではありません。例えば、医師の指示ではなく、自分で希望して入院を個室にした場合の差額ベッド代や、マッサージ・鍼灸などの民間療法などは、自己負担となることがあります。

また治療を受ける際は、健康保険や労災保険、ご自身の人身傷害保険など使われるほうが立て替える治療費も抑えられますし、過失負担がある場合は自己負担額も軽減されます。

【認められにくい治療費】

最先端の医療技術(保険外治療など)
→過剰診療と判断され、保険会社が治療費を支払ってくれないことがある
民間療法(マッサージ、鍼、カイロプラクティックなど)
→医師が指示したもののみしか認められないのが一般的
入院時の個室利用
→医師が個室の利用を指示した場合のみ


4-2 入院諸雑費の計算方法


入院雑費とは、入院していたときの寝具、衣類、消耗品などにかかる費用のことです。

■自賠責基準の計算方法
原則として、入院一日当たり1100円となります。
40日入院していた場合の入院諸雑費は
   40日 × 1100円 = 44000円 

■裁判基準の計算方法
入院雑費
入院1日当たり1500円が認められます。
40日入院していた場合の入院諸雑費は
   40日 × 1500円 = 60000円
となります。

【具体例】
40日入院していた場合の入院雑費の金額

自賠責基準の場合
40日 × 1100円 = 4万4000円

裁判基準の場合
40日 × 1500円 = 6万円

4-3 通院交通費の計算方法


交通費も治療期間が、何週間、何ヶ月となるとかなりな額の負担となります。

公共交通機関を使い、経済的合理性のある経路を利用している(無駄に遠回りしたりしていない)という場合は、原則として全額が認められます。

やむを得ない事情でタクシーを利用する場合は、事前に保険会社に確認を取り領収書は保管しておきましょう。

自家用車を利用した場合は、一般的に
交通費=利用した距離(㎞)× 15円
として計算します。

【具体例】
自家用車を利用し、往復20㎞の通院を30日行った場合

20㎞ × 30日 × 15円 = 9000円

4-4 付添看護費の計算方法


付添看護費とは、被害者が入院、通院する時に付添人が必要な場合にかかる費用のことです。

■自賠責基準の計算方法
入院中の看護料(原則として12歳以下の子供に近親者等が付き添った場合)
  入院1日当たり、4100円

自宅看護料、通院看護料(医師が看護の必要性を認めた場合、または12歳以下の子供の通院等に近親者等が付き添った場合)
  自宅看護または通院1日につき、2050円

■裁判基準の計算方法
・付添人がプロの場合
基本的に、実費(実際に支払った金額)の全額が認められます。

・家族などが付添人の場合
入院なら日額6500円、通院なら日額3300円で計算します。

ただし、付添看護費が認められるかどうかは、医師の指示や後遺症の程度、被害者の年齢などから総合的に判断されるため、絶対に認められるというわけではありません。

【具体例】
40日間の入院時に、家族が付き添って看護してもらった場合

自賠責基準の場合
40日 × 4100円 = 16万4000円

裁判基準の場合
40日 × 6500円 = 26万円

4-5 介護費の計算方法


介護費とは、交通事故の後遺症によって生活に支障があり、介護が必要な場合にかかる費用のことです。

○一時的な介護の場合
 ・付添人がプロの場合
  基本的に、実費(実際に支払った金額)の全額が認められます。

 ・家族などが付添い人の場合
  原則として1日8000円が認められます。

○一生介護が必要な場合
「一年間に必要な介護費」と「平均余命に対応したライプニッツ係数」を乗じて算出します。

 ・一年間に必要な介護費は、基本的には家族などが付添う場合の日額8000円を基準に
   8000円 × 365日 で計算することができます。

 ・平均余命に対応したライプニッツ係数とは、平均余命期間に得られる中間利息を控除するために用いられる係数です。

【具体例】
交通事故の被害者が45歳男性の場合

1年間の介護費  8000円 × 365日 = 292万円
平均余命・・・約35年
平均余命に対応するライプニッツ係数・・・16.374
292万円 × 16.374 = 4781万2080円

弁護士
弁護士
将来の介護費用の計算は、家族の負担も大きくプロの付添人との併用や雑費用、その他の損害賠償の支払い方法の検討など難しい面があります。詳しくは弁護士にご相談ください。


4-6 装具・器具費の計算方法


後遺症の状況によっては、義歯、義足、メガネ、補聴器、車椅子、介護用具などの装具・器具が必要になることがあります。

この場合は、基本的に実費(実際にかかった金額)の全額が損害賠償金として認められます。

そのため、装具・器具費の計算は、実際にかかった費用の合計となります。
ただし、装飾的な高級品などは認められず、差額は自己負担となることがあります。

4-7 家屋改造費の計算方法


後遺症の状況によっては、通常の生活が不自由となり
・車椅子でも生活できるように家屋を改造する
・階段、廊下、風呂などに手すりをつける
・トイレを改造する
・車椅子用に自動車を改造する
などの自宅や自動車の改造が必要な場合があります。

家屋や自動車の改造費は、後遺症の程度から必要性があれば、実費に相当する金額が認められます。
ただし、家屋改造費も全額が必ず認められるということではなく、様々な要因から必要性が判断されますので、詳しくは弁護士に相談することをおすすめします。

4-8 葬儀費の計算方法


交通事故で被害者が亡くなられた場合、葬儀費についても損害賠償金として認められています。

葬儀費には、
葬儀や四十九日までの法要、供養のための費用
仏壇、仏具の購入費
墓碑の建立費用
など、葬儀だけでなく関連して行われる儀式や必要となるものも含めて請求できることがあります。
なお香典については、頂戴した分をマイナスに扱うということはありませんが、その分、香典返しにかかった費用も請求できない、という扱いになることが一般的です。

■自賠責基準の計算方法
原則60万円までが支払われます。立証資料などにより明らかにこれを超える場合は、100万円を上限として妥当な金額が支払われます。
■裁判基準の計算方法
原則150万円まで(実際の支出が150万円を下回る場合は、実際の支出額が認められます)

第5章 損害賠償金の計算で弁護士に依頼すると得られる3つのメリット


交通事故の被害者になってしまった場合、損害賠償金の計算や請求などの手続きは、弁護士に任せることをおすすめします。

なぜなら、弁護士に依頼することには、以下のようなメリットがあるからです。

弁護士に依頼すると得られる3つのメリット
裁判基準が適用され、損害賠償金が増額する
損害賠償金請求での手間、時間、心理的ストレスから減少する
保険会社などとのトラブルを避けられる

5-1 裁判基準が適用され、損害賠償金が増額する


交通事故の損害賠償金の計算や請求を弁護士に依頼すると、損害賠償金が増額する可能性が高くなります。

なぜなら、この記事の中でも繰り返し解説しましたが、自賠責基準、任意保険基準による損害賠償金は、適正かつ十分な補償とは言えない場合が多いようです。

弁護士に依頼すれば、ほぼ自動的に損害賠償金の各項目が裁判基準になるため、損害賠償金の高額請求が可能になるのです。

5-2 損害賠償金請求での手間、時間、心理的ストレスから減少する


損害賠償金の計算や請求を弁護士に依頼すれば、手間、時間、心理的ストレスが最小限になります。

交通事故の被害にあい、治療をしながら保険会社との交渉や手続きを行うのは大変なことです。
適正な金額の損害賠償金をもらうためには、この記事で紹介したような専門的な知識も必要となります。

しかし、弁護士に依頼すれば、治療中からどんな対応をすれば良いのかアドバイスをもらえますし、損害賠償金の計算から交渉まで、ほとんどの作業を任せられます。
あなたは、示談金の手続きから解放され、治療に専念することができるのです。

5-3 保険会社などとのトラブルを避けられる


交通事故の被害者に多いのが、
治療中なのに、治療費の支払いを保険会社に打ち切られた
保険会社から「このまま治療を続けたら慰謝料が出ない」と言われた
事故で受けた損害なのに、事故と因果関係がないと言われた
過失割合や後遺障害等級に納得できない
などのトラブルが発生することです。

これらのトラブルは、主に保険会社との間で生まれるものです。

交通事故対応の実績がある弁護士なら、保険会社側との交渉も的確に根気よく行い、適正かつ十分な損害賠償金を得られるようになります。

【交通事故の弁護士費用は、弁護士費用特約があると原則0円】
弁護士費用特約とは、あなたやあなたのご家族が加入している保険に付いている「弁護士費用をカバーする」という特約のことです。

多くの保険に付いており、特約がある場合は弁護士費用の負担が0円になることが多いです。
※保険会社の条件によっては、本人負担が生じる可能性があります。

弁護士選びや弁護士費用について詳しくは、こちらの記事をご覧ください。
【保存版】交通事故に強い弁護士の選び方と0円で依頼する方法を解説
【事例別】交通事故の弁護士費用を最大限安くおさえる方法を徹底解説

まとめ


いかがでしたか?
最後に今回の内容をまとめます。

○交通事故の損害賠償金にはさまざまな項目があります。
損害賠償金の補償内容
① この3つの慰謝料はどれも高額となり重要な損害賠償金です。
② 交通事故による収入減を補う2つの損害賠償金です。
③ いろいろな出費がでてきます。漏れのないように管理してきちんと請求しましょう。
④ 他にレッカー代、代車費用や、買い替え時の登録費用などもあります。

交通事故の損害賠償金には3つの算出基準があります。
自賠責基準:自分で請求した場合の最低限の金額の基準
任意保険基準:保険会社が独自に決める基準で、自賠責基準に近い金額
裁判基準:弁護士に依頼した場合の基準で、最も高額になる

交通事故の損害賠償金で高額となる5つの項目
 ・入通院慰謝料
 ・後遺障害慰謝料
 ・死亡慰謝料
 ・休業損害
 ・逸失利益

損害賠償金の計算で弁護士に依頼すると得られる3つのメリット
裁判基準による適切な損害賠償金が得られる
損害賠償金請求での手間、時間、心理的ストレスから解放される
保険会社などとのトラブルを避けられる

この記事では、交通事故の損害賠償金の各項目の計算方法について解説しました。
 

交通事故の損害賠償金を、もし保険会社から提示されている場合は、まずはこの記事の内容と照らし合わせて確認してみましょう。

妥当な金額ではないと感じたり、分からない部分があったりした場合は、まずは弁護士に相談してこれからの行動方法を考えていきましょう。

 
【時系列】交通事故で家族が死亡した場合にやるべきことと示談金相場

【弁護士直伝】交通事故の死亡慰謝料の相場と円滑に高額請求する方法

弁護士選びや弁護士費用について詳しくは、こちらの記事をご覧ください。
【保存版】交通事故に強い弁護士の選び方と0円で依頼する方法を解説
【事例別】交通事故の弁護士費用を最大限安くおさえる方法を徹底解説

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