残業50時間が違法になるケースと残業代の計算・請求方法を弁護士が解説

監修者

弁護士法人新橋第一法律事務所
代表弁護士 住川 佳祐

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チェック
この記事を読んで理解できること
  • 残業50時間は平均以上!残業の長さを平均時間・法律上の基準と比較しよう
  • 残業50時間は違法になることもある!法的な基準と比べてみよう
  • 残業をなんとかしたい!そんなときに自分でできる2つの対処方法
  • 50時間分の残業代はいくらになる?残業代の正しい金額を計算してみよう
  • 会社を辞めるなら残業代を請求しよう

あなたは、以下のような疑問や悩みをお持ちではありませんか?

残業50時間でありがちな悩み

今の会社で毎月50時間以上残業がある、これから転職する会社では50時間くらいの残業あるらしい、このような場合、「50時間」が長いのかどうか気になってしまいますよね。

結論を言えば、月の残業50時間という長さは、平均よりやや長い程度です。

でも、安心してはいけません。「月50時間」の残業は、法的に見ると「長時間残業」であり、違法になる可能性があるのです。

そこで、この記事では、まずは50時間という長さを、平均残業時間や法律上の基準などと比べて、どのような長さなのかイメージできるようになりましょう。

次に、50時間の残業が違法になるケースについて解説します。

さらに、「長時間残業がある現状を変えたい!」と感じた時のために、現状を変えるための具体的な方法について紹介します。

最後までしっかり読んで、残業に関する正しい知識を得てください。

【全部読むのが面倒な方へ|当記事の要点】

■月の残業50時間という長さとは

残業50時間という長さは平均をやや上回る程度の長さではあるが、決して短い長さではない。

■残業50時間が違法になるケース

  • 36協定が締結されていても、「45時間」という上限を超えているため違法
  • 特別条項付き36協定が締結されていても、「特別な事情」なく普段から50時間を超えた残業があれば違法

■長時間残業を改善する方法

  • 自分で長時間の残業を改善する
  • 労働基準監督署に相談する
  • 残業が少ない会社に転職する
未払い残業代を取り返したいというあなたへ、まずはお気軽にご相談ください
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1章:残業50時間は平均以上!残業の長さを平均時間・法律上の基準と比較しよう

月50時間の残業は、「毎日約2時間20分程度(月の勤務日数22日の場合)」の残業をしていることになります。

19時が定時の場合は、21時半近くまで残業することになりますので、通勤時間まで含めると、1日のほとんどが仕事で潰れてしまう長さです。

では、一般的に見て、「残業50時間」という長さは長いのでしょうか?

それでは、「50時間」という長さがよくイメージできるように、

  • 残業の平均時間
  • 法律上の残業の上限
  • 厚労省の定める過労死基準

などと比べてみましょう。

順番に解説します。

1-1:残業の平均は約47時間!「残業50時間」は平均よりやや多い

平均残業時間の、リアルなデータとして参考になるのが大手転職サイトVorkersによる調査です。

※Vorkers調査レポートVol.4「約6万8000件の社員口コミから分析した“残業時間”に関するレポート」

この調査によると、残業の平均時間は、「月約47時間」という結果が出ています。

そのため、「月50時間」という残業時間は、平均をやや上回る程度の長さです。

次に、法律上の基準や過労死基準と比較してみましょう。

1-2:50時間の残業を様々な基準と比べてみよう

残業時間の長さの目安にできる基準には、

  • 45時間:36協定が締結されている場合の上限
  • 80時間:2ヶ月〜6ヶ月この残業が続いた場合に労災認定されやすくなる
  • 100時間:1ヶ月でもこの残業が続いた場合に労災認定されやすくなる

という3つがあります。

残業50時間の様々な基準との比較

【月45時間】

月45時間の残業をすると、1日当たりの残業時間は「約2時間」になります(月の出勤日が22日の会社の場合)。19時が定時の会社の場合は、21時まで残業するイメージです。

法律上の基準からみると、月45時間の残業は「長時間残業」であると言えます。

なぜなら、36協定が締結されている場合の月の残業時間の上限が45時間に設定されており、基本的にこれを超えて残業することは違法だからです。

また、月45時間の残業を3ヶ月継続すると、あなたがそれを理由に退職した場合に「失業保険」の受給条件が優遇されます。

つまり、失業保険の受給条件でも、月45時間を超えるような残業は、過度な長時間残業であると定められているのです。

【月80時間】

月80時間残業すると、1日あたり「約3時間半」程度の残業になります(月の出勤日が22日の会社の場合)。19時が定時の会社なら、毎日22時半まで残業するイメージです。

月80時間の基準は、「2ヶ月以上にわたって月80時間を超える残業をしていた場合、健康障害を発症する可能性が高い」という「過労死基準」です。

【月100時間】

月100時間残業すると、1日あたり「約4時間半」程度の残業になります(月の出勤日が22日の会社の場合)。19時が定時の会社なら、毎日23時半まで残業するイメージです。

月100時間の基準は、「1ヶ月でも月100時間を超える残業をしていた場合、健康障害を発症する可能性が高い」という「過労死基準」です。

「過労死基準」とは、労働者が一定の時間を超えた残業をしていて、過労死したり、脳・心臓疾患、精神疾患などを発症した場合に、「仕事に原因があった」とみなされやすくなる基準のことです。

過労死基準と残業時間の関係について、詳しくは以下の記事をご覧ください。

命の危険があります!80時間の過労死基準と現状を変えるたった1つの方法

残業100時間は超危険!過労死基準と100時間残業した場合の心身への影響

月50時間の残業の長さについて、イメージできたでしょうか? もう一点注意して欲しいのが、月50時間の残業は「違法」になるケースがあるということです。

違法になるケースについて詳しく解説します。

2章:残業50時間は違法になることもある!法的な基準と比べてみよう

月50時間の残業は、違法になるケースがあります。違法性を判断するためには、

  • 36協定の仕組みと残業の上限
  • 特別条項付き36協定の仕組みと残業の上限

について知っておく必要があります。

順番に解説します。

2-1:36協定が締結されていなければ残業は違法

そもそも、「36協定」が締結されていない会社では、残業自体が禁止です。
 

残業とは、「法定労働時間」を超えて働いた時間のことです。

法定労働時間とは、1日8時間・週40時間までの労働時間のことで、基本的に、会社は社員をこの時間を超えて働かせると違法になります。

しかし、会社と社員の間で36協定を締結している場合は、1日8時間・週40時間を超えて働かせることが違法ではなくなるのです。

6協定とは、会社が社員を労働基準法で定められた時間を超えて労働させるために、「使用者」と「労働組合(もしくは労働者の代表)の間で締結される協定です。 
 

使用者とは、簡単には会社のことです。

会社と社員の間で36協定が締結されていれば、1日8時間・週40時間を超えた残業が可能になります。

そのため、そもそも36協定が締結されていない会社では、残業そのものが違法になるのです。

1日8時間・週40時間を超えたら残業

2-2:36協定が締結されていても月50時間の残業は上限を超えている

さて、36協定が正しく締結されていたとしても、以下の時間を超えて会社から働かせられていたら、違法です。

36協定が締結されている場合の残業時間の上限

この時間を超えた残業は、会社と社員の間で「特別条項付き36協定」を締結した場合のみ可能になります。

そのため、特別条項付き36協定がないのに、月50時間以上も残業させられていたら違法になるのです。

2-3:特別条項付き36協定の締結で残業の上限が延長できる

特別条項付き36協定とは、通常の36協定で定められた限度時間を超えて「臨時的・突発的」に、残業しなければならない場合に備えて、あらかじめ延長時間を定めておく協定のことです。 
 

特別条項付き36協定を締結することで、残業時間の限度時間を延長することができます。

ただし、以下のような条件があります。

残業の延長が可能になる条件

以上の条件にマッチする場合に限って、月50時間を超える残業は違法ではなくなります。

36協定について詳しくは、

36協定とは?5分で分かる定義・役割と、違法性が分かる判断基準

の記事をご覧ください。

3章:残業をなんとかしたい!そんなときに自分でできる2つの対処方法

現状を改善する方法として、自分でできることは、

  • 自分で長時間の残業を改善する工夫をする
  • 労働基準監督署に相談する

の2つがあります。

それぞれの方法について解説します。

3-1:自分で長時間の残業を改善する方法

会社での残業時間が長い場合は、まずは自分で残業時間を短くできないか工夫してみてはいかがでしょうか?

自分でできる手段としては、以下のような方法が考えられます。

  1. 仕事を効率化できないか工夫する
  2. 仕事を一人で抱え込まない
  3. 平日の夜に予定を入れる

これらの「自分で改善する」方法について、詳しくは以下の記事をご覧ください。

残業が多いあなたに!違法性の3つの基準とすぐにできる改善方法

しかし、

「そもそも自分で改善できるような環境じゃない!」

という人も多いかもしれません。

その場合は、労働基準監督署に相談するという方法が考えられます。

3-2:労働基準監督署に相談して解決を図る方法

  • 36協定が正しい手続きを経て締結されていないのに、残業させられている
  • 36協定で定められている残業時間の上限を超えて残業させられている

などの場合は、「労働基準法に違反」しているため、「労働基準監督署」に相談することで、解決を図るという選択肢があります。

「労働基準監督署」とは、厚生労働省の出先機関で、労働基準法に基づいて会社を監督するところです。 
 

労働基準監督署は、労働基準法に違反した会社を取り締まることができます。

そのため、「長時間労働を是正してほしい」という問題も、労働基準監督署に相談できます。

労働基準監督署に相談しても残業の改善は難しい

しかし、労働基準監督署の人員は、全国の会社の数に対して非常に少ないため、「労働災害」「過労死」などの人命に関わるような案件に優先して取りかかります。

しかも、「残業50時間」くらいでは、異常な長時間残業というわけではないため、労働基準監督署が動いてくれる可能性は非常に低いです。

3-3:残業の少ない会社に転職する

現状を変えるもっとも良い方法が、現在の会社を辞めて新しい会社に転職することです。

会社を辞めるという選択肢は、なかなか勇気がいるかもしれません。

しかし、ブラック企業に居続けても、あなたは会社から良いように使われ続けるだけではないでしょうか。

なぜなら、長時間残業やサービス残業を長年当たり前にしてきた会社の空気」や、「上司の考え方」などは、簡単には変わらないからです。

そのため、ここで紹介した方法を実践しても、時間がたてば、結局残業が日常化している状態に元通りになる可能性が高いです。

そのため、残業が少ない、残業代がきちんと出る“ホワイト企業”に転職するのがもっとも効果的な方法です。

4章:50時間分の残業代はいくらになる?残業代の正しい金額を計算してみよう

多くの会社では、社員が残業代の計算方法を詳しく知らないことを利用して、不当に低い賃金しか支払っていません。

そのため、自分が正しい金額の残業代をもらえているか、自分で計算できるようになってくことをおすすめします。

そこで、ここでは深夜残業をしている場合の残業代の計算方法について解説します。

4-1:残業代の基本的な計算方法

残業代は、以下の計算式で計算することができます。

残業代の計算式

順番に解説します。

①基礎時給を計算する

基礎時給とは、1時間当たりの賃金のことで、以下の式で計算できます。

基礎時給の計算式

※一月平均所定労働時間とは、会社で決められている1ヶ月の労働時間のことで、170時間前後であることが多いです。

(例)月給20万円、一月平均所定労働時間170時間

20万円÷170時間=基礎時給1176円

②割増率をかける

割増率には、以下の種類があります。

  • 通常の残業:1.25倍
  • 法定休日の労働:1.35倍
  • 深夜労働:割増率+0.25倍

深夜労働とは、「22時〜翌朝5時」の中で働いた時間のことです。

深夜労働をした場合の割増率

(例)基礎時給が1176円の場合、

通常の残業:1176円×1.25倍=1470円

深夜労働:1176円×(1.0倍+0.25倍)=1470円

深夜残業:1176円×(1.25倍+0.25倍)=1764円

法定休日の労働:1176円×1.35倍=1587円

③残業時間をかける

残業時間は、先ほどの触れたように、「1日8時間・週40時間」を超えて働いたすべての時間のことです。

(例)基礎時給1176円、残業50時間の場合

1176円×1.25倍×50時間=7万3500円

残業代を請求する場合、3年分さかのぼって請求できるため、最大で、

7万3500円×24ヶ月=264万6000円

にもなります。

もし、同じ条件でこれよりも少ない金額しか残業代をもらっていない場合は、会社に請求して取り返すことができます。請求する場合の方法について詳しくは5章で解説します。

残業代の計算方法について、詳しくは以下の記事をご覧ください。

5分で分かる!正しい残業代の計算方法と実は残業になる8つの時間

5章:会社を辞めるなら残業代を請求しよう

残業代が適正な金額もらえていない場合、退職時などに会社に請求して、取り返すことができる可能性が高いです。

そこで、最後に、残業代を請求する方法について、

  • 自分で直接請求する方法
  • 弁護士に依頼して請求する方法

の2つに分けて解説します。

5-1:自分で会社に直接請求する方法

自分で直接残業代を請求する方法は、以下のような流れで行うことができます。

残業代請求を自分でやる流れ

  1. 残業があった事実を証明するための証拠を収集する
  2. 未払いになっている残業代を計算する
  3. 配達証明付き内容証明郵便」を会社に送って時効を止める
  4. 自分で会社と直接交渉する

5-2:弁護士に依頼する方法

弁護士に依頼すると、以下のような流れで残業代を回収していきます。

残業代請求を弁護士に依頼する流れ

弁護士に依頼した場合、

  • 交渉
  • 労働審判
  • 訴訟(裁判)

という手段によって、残業代請求の手続きが進められます。

弁護士に依頼すると、あなたの「会社と戦う」という精神的負担を、弁護士が肩代わりしてくれるだけでなく、時間・手間を節約することもできるのです。

さらに、「完全成功報酬制」の弁護士に依頼することで、初期費用もほぼゼロにできるのです。

ただし、弁護士に依頼する場合は「弁護士なら誰でもいいだろう」とは考えないでください。
 
実は、法律の知識は広い範囲に及ぶため、自分の専門分野以外の件については、あまり知識がない弁護士が多いです。
 
そのため、残業代請求に強い弁護士に依頼することをお勧めします。
 

また、残業代請求ができるのは、3年の時効が消滅するまでです。

そのため、請求するならなるべく早めに行動をはじめることをおすすめします。

残業代請求に強い弁護士の選び方や、相談の流れ・かかる費用などについて、詳しくは以下の記事に書いていますので、ご覧になってください。

失敗したら残業代ゼロ?弁護士選びの8つのポイントと請求にかかる費用

まとめ:月50時間の残業

いかがでしたか?

最後にもう一度、今回の内容を振り返ってみましょう。

まず、大事なことは、残業50時間という長さは平均をやや上回る程度の長さではありますが、決して短い長さではないということです。

50時間というは、以下の3つの基準と比較しても「長時間残業」であると判断できる長さです。

残業50時間の様々な基準との比較

また、50時間という残業の長さは、

  • 36協定が締結されていても、「45時間」という上限を超えているため違法
  • 特別条項付き36協定が締結されていても、「特別な事情」なく普段から50時間を超えた残業があれば違法

になります。

長時間残業がある現状を変えたいという場合は、

  • 自分で長時間の残業を改善する
  • 労働基準監督署に相談する
  • 残業が少ない会社に転職する

という方法で行動を起こすことができます。

転職する場合は、今の会社に未払いの残業代を請求することができるため、

  • 自分で請求する方法
  • 弁護士に依頼する方法

について、ぜひ覚えておいてください。

悩むだけでは現状は変わりませんので、現状に不満があるなら少しずつでも行動を始めることをおすすめします。

【参考記事一覧】

残業時間と過労死基準の関係について詳しくは、以下の記事を参考にしてください。

命の危険があります!80時間の過労死基準と現状を変えるたった1つの方法

残業100時間は超危険!過労死基準と100時間残業した場合の心身への影響

36協定について詳しく知りたい場合は、以下の記事をご覧ください。

36協定とは?5分で分かる定義・役割と、違法性が分かる判断基準

残業の多いことを変えたい場合、対策方法について以下の記事を参考にしてください。

残業が多いあなたに!違法性の3つの基準とすぐにできる改善方法

残業代の計算方法について詳しく知りたい場合は、以下の記事を参照してください。

5分で分かる!正しい残業代の計算方法と実は残業になる8つの時間

残業代を請求する場合の、かかる費用や弁護士の選び方などについては、以下の記事で詳しく解説しています。

失敗したら残業代ゼロ?弁護士選びの8つのポイントと請求にかかる費用

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