土木業界の残業の実態とよくある疑問や残業代の請求方法を弁護士が解説

監修者

弁護士法人新橋第一法律事務所
代表弁護士 住川 佳祐

土木業界の残業の実態とよくある疑問や残業代の請求方法を弁護士が解説
Share
  • lineシェア

    lineでシェアする

  • twitterシェア

    twitterでシェアする

  • facebookシェア

    facebookでシェアする

  • hatenaシェア

    hatenaでシェアする

  • pocketシェア

    pocketでシェアする

チェック
この記事を読んで理解できること
  • 土木業界は実は残業が長い!その実態を解説
  • 現場でよくある残業についての疑問Q&A
  • 正しい残業代を計算する方法と請求の仕方

土木の仕事をしているあなたは、次のような悩みをお持ちではないでしょうか。

昼勤の工事で残業があるとは思わなかった」
「労働時間と比べると拘束時間が長い」
「現場から帰った後はの仕事にどうして残業代がつかないんだろう」

ハードな職種のひとつとして知られる土木系の仕事ですが、実は働く人たちの残業時間が長くなりがちです。

それも、ルールを知らずに会社側の言うことを信じていると、気付けないような時間が多くあるのです。

あなたは上司に、次のように言われたことはないでしょうか。

「準備や移動時間は労働時間にカウントされないんだ。」

「土木の仕事は、特例があって残業代がつかないんだよ。」


詳しい理由は本文の中で説明しますが、これはどちらも誤りです。

いずれの場合も、あなたは残業代を受け取ることができる可能性があります。

この記事では、まず土木業界の残業の実態にふれた上で、1日の流れに沿って見落としがちな労働時間について解説します。

また、残業代を取り戻そうと思ったときに使える計算方法や請求の仕方についても説明します。

もらえるはずの給料を見落とさないように、しっかりと正しい知識を身に着けましょう。

【全部読むのが面倒な方へ|当記事の要点】

■土木業界には長時間残業の実態があるため、未払い残業代があれば請求することが大事

■土木業界の残業に関するルール

  • 集合後の移動は労働時間
  • 給料が発生する休憩時間がある
  • 現場で作業時間が延長した場合も残業
  • 作業後の会社に戻って片付けや道具のメンテナンスも残業
  • 事務所に戻った後の事務作業なども残業扱い

■未払い残業代がある場合の対処法

  • 証拠を集める
  • 弁護士に相談する
未払い残業代を取り返したいというあなたへ、まずはお気軽にご相談ください
未払い残業代を取り返したいというあなたへ、まずはお気軽にご相談ください

1章: 土木業界は実は残業が長い!その実態を解説

まずは土木業界の残業の実態について確認してみましょう。

1-1:土木業界における残業の実態

休憩の回数が多かったり、作業時間の関係で毎日の終業時間が決まったりしている現場も多く、残業が少ないと思われがちなのが土木系の仕事です。

しかし、土木系で働いている人なら誰しも経験がある通り、工期が迫ると長時間の残業が続くのがこの業界です。

例えば求人情報サイトVokersが実施した残業時間についての調査によると、「建築・土木・設計・設備工事」は残業時間が70.8時間となり業界別ランキングで3位になっています。

ネット上でも、少し探せば土木業界の残業の過酷さを伝えるリアルな声がすぐに見つかります。

このように、毎月長時間の残業があり、なおかつ残業代が支払われないことも多いのが土木の仕事なのです。

1-2:土木現場での1日のスケジュール

ここからは、土木作業員の一般的な1日のタイムスケジュールを見ていきます。

どういった時間が労働時間になるのか理解し、残業時間を自分で把握できるようにしましょう。

6:30 出勤
↓ 準備後、現場へ移動
8:00 作業開始
↓ 朝礼・準備体操を終えたら作業開始
10:00 休憩
↓ 15分程度。休憩後、再び作業
12:00 昼休憩
↓ 1時間、昼食のための休憩
13:00 作業再開
↓ 午後の作業が開始
15:00 休憩
↓ 15分程度。休憩後、再び作業
17:00 作業終了
↓ 片付け、撤収。残業があることも
17:30 解散・現場出発
↓ 終礼を終えたら事務所へ戻る
19:00 
道具を片付けて終了。あれば事務作業

土木業界には、現場にいる定時の時間のみ労働時間とするあくどい会社があります。

この場合では、現場にいる間の8時~17時30分(8時間勤務、1時間半休憩)が定時になっており、それ以外の時間は労働時間として認めていません

しかし、法律上の労働時間とは、

社員が会社の「指揮命令下」に置かれている時間

を指します。そのため、現場で作業している以外にも、労働時間にカウントされる時間が多くあるのです。

例えばこのケースでは、正しい方法で労働時間を計算すると、3時間以上の残業が発生することになります。

1-3:残業に関わる法律ルールを確認

労働基準法では、会社が「1日8時間、週40時間」を超えて社員を働かせることはできないと決められています。

この「1日8時間・週40時間」の基準のことを法定労働時間と呼び、社員にこの時間を超えた労働をさせた場合には、会社側は残業代を支払う必要があります。

土木の現場では、実際には労働時間に当たる時間が多いため、正しくカウントすると残業代が発生するケースが珍しくありません。

こうした、会社にごまかされることの多い時間について、朝の時間帯から順番に解説します。

1-2-1:集合後の移動は労働時間

土木の仕事では、朝に一度会社や事務所に集合し、荷物を準備してから現場に移動することが多いのではないでしょうか。

こうした場合では、ケースでは会社から現場への移動時間も労働時間とされることが一般的です。

次のチェック項目をご確認ください。

この中に当てはまるものがいくつかある場合、現場への移動は会社から指示と考えられ、その時間も労働時間にカウントされる可能性が高くなります

 会社への集合時間が指示されている
 道具の準備をする必要がある
 現場までの運転を任されている
 作業員を同乗させるよう指示がある
 移動中に行うべき作業がある

1-2-2:給料が発生する休憩時間がある

土木の現場では、昼の1時間休憩のほか、作業する人たちの体力を回復するために午前・午後に一度ずつ休憩があることが多いです。

就業規則などでも、1時間半の休憩が含まれた勤務時間が設定されていることがあります。ただ、次の2点のような場合は休憩中であっても労働時間にカウントされます

実際には休憩が与えられない
休憩が自由に使えない

基本的に午前と午後の2回休憩が設定されていても、工期の遅れや天候・現場環境などの状況によっては、この休憩がスキップされる場合があります。

しかし、本来あるはずの休憩時間が与えられていないのですから、この時間は労働時間になります

また、休憩時間は仕事から離れることが保証され、自分で自由に使える時間でなければいけません。

そのため、

現場から離れてはいけない
呼ばれたらすぐに仕事を始める準備をしていないといけない
移動時間を兼ねた休憩時間

といった場合は、その休憩が労働時間と認められる可能性があります。

1-2-3:現場で作業時間が延長した場合

その日の工事の進行具合や翌日の天候などの条件によっては、本来の終業時間を超えて作業が続けられることがあります。

もし決められた現場の終了時間で帰る自由があれば別ですが、現場監督や上司の指示で残業をしなければならない場合は、残業時間としてカウントすることができます

1-2-4:作業後でも残業が認められるケース

1日分の仕事を終え、片付け・終礼などが済んだら現場での作業は終了です。

しかし、朝の移動と同様に会社に戻って片付けや道具のメンテナンスなどがある場合は、それらの作業がすべて終わるまでは労働時間になるでしょう。

その一方で、

直帰・現地解散が認められている
自分の都合で会社まで同乗する

といった移動時間は労働時間とは認められないと考えられます。

1-2-5:事務所での作業ももちろん残業扱い

あなたが作業現場で責任ある立場の場合は、現場から会社へ戻り、片付けなどを済ませた後にも、次のような事務作業が残っているのではないでしょうか。

日報・報告書などの作成
翌日の打ち合わせ
図面作成

労働時間が現場終了までとされていても、会社に戻ってこうした仕事をしている場合は、もちろん残業時間と考えることができます

上司や会社から

「現場の責任者・リーダーの仕事だから」
「管理職は残業代がつかないけど頼んだよ」

と言われる場合もあるかと思います。

しかし、会社内や現場での肩書きと、残業代が出ない法律上の「管理職」は重ならないことが多く、実際には残業時間として認められるケースもあります。

管理職の残業については、次の記事でも詳しく説明しているのでご覧ください。

管理職とは?残業代ゼロはウソ!法律上の3つの要素と悪用される手口

2章:現場でよくある残業についての疑問Q&A

早速、土木の現場で働いている人からよく上がる疑問点について解説します。

2-1:会社にタイムカードがない場合は?

土木の仕事では、毎日の労働時間をタイムカードで管理する体制が整っていない会社も目立ちます。

こうした場合、一度会社に寄っても、作業時間が延長しても記録上では労働時間=就業規則の定時になってしまう場合があります。

しかし、労働時間はあなたが働いた時間なので、会社は正しい残業時間を把握しなければいけません。

働く社員の労働時間を管理するのは会社の義務となっています。

2-2:責任者が終了時間をまとめて報告したら?

土木系の職場では、現場の責任者が部下として働く社員の始業時間・終業時間をまとめて会社に報告するケースがあります。

社員は月末に渡された出勤簿をチェックまたはサインするだけで、正しい労働時間を報告することができないのです。

しかし、勤怠記録にどう書いてあっても、あなたが働いた時間が労働時間です。自分で毎日の始業時間・終業時間の記録を残しておきましょう。

こうしたケースで残業代を計算しなおし、多額の未払い残業代が戻ってきたケースも多くあります。

2-3:残業代は出ないのがルールと言われたら?

「うちの会社は残業代が給料に含まれている」

といったケースがありますが、どちらも残業代を支払わない正当な理由にはならず、こうしたルールは違法になります。

法律では、会社側が社員に課した「1日8時間・週40時間」を超える労働に残業代を支払うことを定めており、あなたはこの時間を超して働いた分だけ残業代を受け取る権利があります

2-4:残業代が支払われれば残業は制限なし?

「1日8時間・週40時間」を超えて社員を働かせるためには、会社側と社員の代表があらかじめ「36協定」と呼ばれる取り決めを結ぶ必要があります。

もちろん36協定があれば無制限に社員を働かせることができるわけではなく、社員を守るために残業時間の上限も決められています。

しかし、土木、建築の現場作業などの職種では、この上限が適用されず、長時間の残業を招く理由のひとつだと言われています。

適用外の職種については、労働基準監督署も立ち入り検査や行政指導を行わないと言われていますが、もし長時間労働が原因となって精神疾患などが発生した場合、労災認定されます。

労災認定の基準としては「過労死ライン」が設定されています。

詳しくは以下の記事も参照してください。

あなたの残業代は適正?ブラック企業を判断する残業時間の3つの基準

2-5:深夜帯の時間帯の残業代はどうなる?

昼に作業を行うことが難しい大きな道路などの現場では、勤務時間が深夜帯になることもあります。

こうした場合でも、基本的な残業の考え方はここまで説明したものと何も変わりません。

違いと言えば、次章で説明しますが、残業代の計算方法が少し変わるだけです。

会社や上司から

「深夜は深夜手当があるから残業代がつかないんだよ」

などと言われても、鵜呑みにしないようにしましょう。

2-6:どうして朝の時間なのに残業時間になるの?

先ほど、朝の移動時間や休憩が労働時間=残業時間と認められると読んで、

「なぜ朝や昼なのに残業?」

と疑問に思った人も多いのではないでしょうか。

残業時間とは終業時間以降に働いた時間だけを指すのではなく、法律では1日に8時間を超えた労働時間を残業時間(時間外労働時間)としています。

そのため、朝や昼の時間が労働時間になると結果的に残業時間が増えていることになるのです。

3章:正しい残業代を計算する方法と請求の仕方

ここまで読んで、自分が今まで残業代をごまかされてきたことに気付いたという人は、どうにかして取り戻す方法はないかと考えたのではないでしょうか。

残業代の請求と聞くと大変そうなイメージがありますが、中には手間がそれほどかからず、持ち出しの費用が少ない方法もあるので、検討してみてはいかがでしょうか。

3-1:残業代の計算方法

まずは残業代を計算してみましょう。

残業代は、

残業代の計算式

という式で出すことができます。

基礎時給とは1時間当たりの賃金のことで、月給制の場合は1か月の月給を所定労働時間(※)で割って計算します。

※雇用契約で定められている1ヶ月あたりの平均労働時間のこと。一般的に170時間前後となっています。

割増率は時間帯によって決められており、通常の残業は1.25倍、深夜の場合は1.5倍を掛けます。

例えば、月給が24万円の人が月に60時間残業(昼の現場で40時間、深夜の現場で20時間)をした場合は、

昼の時間帯が
24万円÷170×1.25×40=7万588円

夜の時間帯が
24万÷170×1. 5×20=4万2352円

となり、合計すると11万2940円になります。

過去2年間同じくらい残業していた場合は総額で250万円にもなり、みすみす見逃すにはもったいない大金です。

3-2:残業代を請求するための2つの方法

会社に未払いの賃金を請求するためには、

自分で会社に直接請求する方法
弁護士に依頼して請求する方法

という2つの方法があります。

それぞれのメリットとデメリットは次の通りです。

残業代請求を自分でやる場合と弁護士に依頼する場合の違い

自分で請求したほうがお金がかからなくてよいのでは、と思ってしまいそうですが、証拠集めや残業代の計算、職場との交渉は仕事の合間に進めるにはなかなか労力がかかります

労働問題に強い弁護士であれば、残業代を取り返せる確率も非常に高く、手間や精神的な負担もありません。

忙しいあなたは「弁護士への依頼」を検討してみてはいかがでしょうか。

残業代の請求については、次の記事でも詳しく解説していますのでご覧ください。

いざという時知っておくと便利!?弁護士が教える残業代を1円でも多く請求する手順

3-3:請求するために集めるべき証拠一覧

残業代が支払われていない証拠が揃っていれば、未払いのお金を取り戻せる可能性が高くなります。

例えば、次のような証拠は有効だとされています。

【残業代が未払いであることを示す証拠】
雇用契約書
就業規則
賃金規定
給与明細

そして、実際に働いた時間を示すものとしては次のようなものが必要になります。

【実際に働いた時間を示す証拠】
タイムカード
シフト表
業務日報
報告書

これらの書類はコピーでも問題ないので、少しでも多く揃えておけると有利です。

勤怠管理がされていない会社の場合は、手書きのメモで毎日の始業時間・終業時間・業務内容を記録しておくと証拠として認められるケースもあります。

証拠が少なくても残業代を取り戻せたケースはあります。
 
「証拠が揃わない」と諦めずに、まずは弁護士に相談してみてください。


証拠については、以下の記事にも詳しく書いてありますのでご覧ください。

【弁護士が解説】残業代をアップさせる証拠一覧と集め方マニュアル

まとめ

いかがでしたか?もう一度、ここまでの内容を振り返ってみましょう。

残業が少ないと思われることもありますが、実は仕事量が多く、また見逃されがちな労働時間も多い土木業界。

ただ実際は長時間の残業が多く、なおかつ残業代が支払われないことも多いのが実態です。

法律上の労働時間とは、

社員が会社の「指揮命令下」に置かれている時間

なので、あなたが気付いていなくても、実は労働時間に当たる時間が多くあります。

この記事では、1日のスケジュールに沿って、

集合後の移動は労働時間
給料が発生する休憩時間がある
現場で作業時間が延長した場合も残業
事務所に戻った後も残業扱い

といったように考えられると説明しました。

ほかにも、残業に関するよくある疑問についても解説しているので、しっかりと理解しておきましょう。

これまでに受け取っていない多くの残業代がある人は、残業代の請求を行ってみてはいかがでしょうか。

自分の労力があまりかからずに、200万円近くの大金が戻ってくるケースがあるので、一度検討してみることをオススメします。

『残業代請求に強い弁護士』があなたの悩みを解決します

あなたは、こんな悩みをお持ちではありませんか?

  • これから退職予定で、未払い残業代を請求したい
  • すでに退職しているが、以前勤めていた会社に残業代を請求したい
  • 自分の残業代、残業時間に納得がいかない

会社がおかしい・不当ではないかと感じたら1人で悩まずに、残業代請求に強い弁護士に相談することをおすすめします。残業代の時効は2年なので、時効になる前に早めに行動することが大切です。

弁護士法人新橋第一法律事務所へのご相談は無料です。当事務所では、電話・メール・郵送のみで残業代請求できます。ですので、全国どちらにお住まいの方でも対応可能です。お1人で悩まずに、まずは以下よりお気軽にご相談ください。

"残業代を取り返したい"
というあなたへ

1人で悩まずに!残業代請求に強い弁護士法人新橋第一法律事務所にご相談ください

今すぐお電話ください!

tel. 0120-649-026 電話で問い合わせる

携帯・PHS可

相談無料土日祝受付

24時間365日対応

Share
  • lineシェア

    lineでシェアする

  • twitterシェア

    twitterでシェアする

  • facebookシェア

    facebookでシェアする

  • hatenaシェア

    hatenaでシェアする

  • pocketシェア

    pocketでシェアする