- 2024.03.25
- 2025.01.14
- #残業40時間
残業40時間は普通?平均時間と違法になる判断基準や残業代の計算方法
この記事を読んで理解できること
- 残業40時間は普通?平均時間と法律上の基準などと比べてみよう
- 残業時間40時間で違法になるケースも存在する
- 残業40時間の残業代はいくらになるか計算する方法
- 残業40時間を改善する 2つの方法
- 会社を辞めるなら残業代を請求しよう
あなたは、
などという疑問をお持ちではありませんか?
今いる会社や、これから就職・転職する予定の会社で40時間程度の残業がある場合、それが普通なのかどうか疑問に感じてしまいますよね。
結論を言えば、月40時間の残業は平均的な長さで、多くの会社で行われています。
しかし、「異常な長さではない」ことから、残業の改善が見逃されたり、残業代が出なかったりと、会社から軽視されがちな長さでもあります。
そこで、この記事では、まずは40時間という残業の長さを平均時間や法律上の基準などと比較し、その長さを確認してみます。
そして、40時間の残業が違法になるケースと、40時間分の残業代の適正な金額についてご紹介し、最後に残業時間を改善する方法について解説します。
正しい知識を学んで、会社と対等な知識を身につけてください。
目次
1章:残業40時間は普通?平均時間と法律上の基準などと比べてみよう
月40時間の残業は、毎日2時間弱の残業をすることになるため、決して短い残業時間ではありません。
しかし、「40時間」という長さがよくイメージできないかもしれませんので、月40時間の残業と、
- 残業の平均時間
- 法律上の残業の上限
- 厚労省の定める過労死基準
などと比べてみましょう。
順番に解説します。
1-1:残業の平均は約47時間!「残業40時間」はよくある長さ
平均残業時間の、リアルなデータとして参考になるのが大手転職サイトVorkersによる調査です。
※Vorkers調査レポートVol.4「約6万8000件の社員口コミから分析した“残業時間”に関するレポート」
この調査によると、残業の平均時間は、「月約47時間」という結果が出ています。
そのため、「月40時間」という残業時間は、平均程度がそれ以下であり、一般的に見て異常な長時間残業というわけではないことが分かります。
次に、法律上の基準や過労死基準と比較してみましょう。
1-2:40時間の残業を様々な基準と比べてみよう
残業時間の長さの目安にできる基準には、
- 45時間:36協定が締結されている場合の上限
- 80時間:2ヶ月〜6ヶ月この残業が続いた場合に労災認定されやすくなる
- 100時間:1ヶ月でもこの残業が続いた場合に労災認定されやすくなる
という3つがあります。
【月45時間:36協定が締結されている場合の上限】
月45時間の残業をすると、1日当たりの残業時間は「約2時間」になります(月の出勤日が22日の会社の場合)。
19時が定時の会社の場合は、21時まで残業するイメージです。
法律上の基準からみると、月45時間の残業は「長時間残業」であると言えます。
なぜなら、36協定が締結されている場合の月の残業時間の上限が45時間に設定されており、基本的にこれを超えて残業することは違法だからです。
また、月45時間の残業を3ヶ月継続すると、あなたがそれを理由に退職した場合に「失業保険」の受給条件が優遇されます。
つまり、失業保険の受給条件でも、月45時間を超えるような残業は、過度な長時間残業であると定められているのです。
【月80時間】
月80時間残業すると、1日あたり「約3時間半」程度の残業になります(月の出勤日が22日の会社の場合)。
19時が定時の会社なら、毎日22時半まで残業するイメージです。
月80時間の基準は、「2ヶ月以上にわたって月80時間を超える残業をしていた場合、健康障害を発症する可能性が高い」という「過労死基準」の基準です。
【月100時間】
月100時間残業すると、1日あたり「約4時間半」程度の残業になります(月の出勤日が22日の会社の場合)。
19時が定時の会社なら、毎日23時半まで残業するイメージです。
月100時間の基準は、「1ヶ月でも月100時間を超える残業をしていた場合、健康障害を発症する可能性が高い」という「過労死基準」の基準です。
「過労死基準」とは、労働者が一定の時間を超えた残業をしていて、過労死したり、脳・心臓疾患、精神疾患などを発症したりした場合に、「仕事に原因があった」とみなされやすくなる基準のことです。
過労死基準と残業時間の関係について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
命の危険があります!80時間の過労死基準と現状を変えるたった1つの方法
残業100時間は過労死基準!心身や生活への影響と現状を変える方法とは?
2章:残業時間40時間で違法になるケースも存在する
会社が従業員に対してひと月あたり40時間の残業をさせることが違法になるケースがとして下記の2つあります。
・36協定が締結されていない
・残業代が正しく支払われていない
それぞれ順番に解説します。
2-1:36協定が締結されていない
そもそも、残業とは「1日8時間・週40時間」までの「法定労働時間」を超えて働くことを言います。
当然のようにこの時間を超えて働いている人が多いと思いますが、実は会社と社員との間で「36協定」が締結されていなければ、「1日8時間・週40時間」を超えて働くことは違法です。
そのため、もしあなたの会社で36協定が締結されていなければ、残業は1時間でも違法です。
36協定が締結されている場合は、先ほども触れたように「月45時間」までは残業が可能になります。
36協定について、詳しくは以下で解説しています。
36協定とは?基礎知識や残業が違法となるケース、未払残業代の請求方法
2-2:残業代が正しく支払われていない
会社は社員に対して残業代を支払う義務があり、支払わなければ違法になります。
残業代の計算については後述しますが、残業した分だけきちんと支払われているか計算してみましょう。
異常なレベルの長時間残業ではないからと言って、残業することを当たり前にしたり、正しい金額の残業代が出なくても泣き寝入りしたりしてはいけません。
働いた分の残業代は、しっかりともらうべきです。
そこで、次に月40時間働いた場合の残業代はいくらになるのか計算してみましょう。
【コラム】みなし残業40時間はただちに違法にはならない
会社によっては、月40時間の残業が「みなし残業」になっており、その分の残業代が定額の「みなし残業代」として支払われていることがあります。
就職・転職時などに、これから入る会社に「月40時間のみなし残業」があると、「こんなにみなし残業があるのって問題ないの?」と思うかもしれませんが、月40時間のみなし残業があること自体は、違法にはなりません。
ただし、みなし残業で前提とされている残業時間に対して、みなし残業代が極端に少なかったり、給料からみなし残業代を引いて、残った金額が極端に少なかったりする場合は、違法である可能性があります。
みなし残業代の違法性について、詳しくは以下の記事を参照してください。
3章:残業40時間の残業代はいくらになるか計算する方法
社員が残業代の計算方法を詳しく知らないことを利用して、不当に低い賃金しか支払っていない会社も少なくありません。
そのため、自分が正しい金額の残業代をもらえているか、自分で計算できるようになってくことをおすすめします。
そこで、ここでは残業代の計算方法について解説します。
3-1:残業代の基本的な計算方法
残業代は、以下の計算式で計算することができます。
3-2:残業40時間分の残業の計算方法
順番に解説します。
①基礎時給を計算する
基礎時給とは、1時間当たりの賃金のことで、以下の式で計算できます。
※一月平均所定労働時間とは、会社で決められている1ヶ月の労働時間のことで、170時間前後であることが多いです。
(例)月給20万円、一月平均所定労働時間170時間の場合
20万円÷170時間=基礎時給1176円
②割増率をかける
割増率には、以下の種類があります。
- 通常の残業:1.25倍
- 法定休日の労働:1.35倍
- 深夜労働:割増率+0.25倍
深夜労働とは、「22時〜翌朝5時」の中で働いた時間のことです。
(例)基礎時給が1176円の場合、
通常の残業:1176円×1.25倍=1470円
深夜労働:1176円×(1.0倍+0.25倍)=1470円
深夜残業:1176円×(1.25倍+0.25倍)=1764円
法定休日の労働:1176円×1.35倍=1587円
③残業時間をかける
残業時間は、先ほどの触れたように、「1日8時間・週40時間」を超えて働いたすべての時間のことです。
(例)基礎時給1176円、残業40時間の場合
1176円×1.25倍×40時間=5万8800円
残業代を2年分さかのぼって請求するとすれば、
5万8800円×24ヶ月=141万1200円
にもなります。
※残業代は最大3年分さかのぼって請求できます。
もし、同じ条件でこれよりも少ない金額しか残業代をもらっていない場合は、会社に請求して取り返すことができます。
請求する場合の方法について詳しくは5章で解説します。
残業代の計算方法について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
4章:残業40時間を改善する 2つの方法
現状を変える方法としては、以下の2 つのものがあります。
- 自分で残業時間を短縮する工夫をする
- 労働基準監督署に相談して残業の改善を図る
それぞれの方法について解説します。
4-1:自分で残業時間を短くする工夫をしてみよう
会社での残業時間が長い場合は、まずは自分で残業時間を短くできないか工夫してみてはいかがでしょうか?
自分でできる手段としては、以下のような方法が考えられます。
- 仕事を効率化できないか工夫する
- 仕事を一人で抱え込まない
- 平日の夜に予定を入れる
4-1-1:自分で仕事を効率化できないか工夫する
一番取りかかりやすいことからご紹介します。
仕事を効率的にできるように工夫して、同じ仕事でも効率的に終わるようにするのは、今すぐにでもはじめられることではないでしょうか。
たとえば、
- ルーティン作業はストップウォッチなどで時間を測って少しでも短くしていく
- 仕事をすぐに取りかかれるように細分化する
- 細分化した仕事に優先順位を付けて、計画的に進めていく
などの方法が考えられます。
これらの方法を意識して行うだけで、毎日の残業を短くできる可能性があります。
4-1-2:仕事を一人で抱え込まない
あなたの残業が多いのは、あなたが自分で抱えきれないほどの量の仕事を抱えているからかもしれません。
あなたは「この仕事はすべて自分でやらなければいけない」と思っているかもしれませんが、会社とは社員の間で分担して仕事をするところです。
そのため、思い切って同僚などに、
「この仕事やってくれないかな?」
と提案してみるのも一つの選択肢です。
また、頼まれた仕事をすべてOKせず、よく考えてから受け入れる、もしくは断る勇気を持つようにすることも、あなたの仕事量を減らす工夫の一つです。
4-1-3:平日の夜に予定を入れる
仕事の後に何も予定がないと、定時を過ぎてもずるずると仕事を続けてしまい、残業時間が増えることになってしまいがちです。
平日の夜に友人や恋人と会う約束を入れたり、習い事の予定を入れたりしておくと、「仕事を早く終わらせなければ」という気持ちになり、仕事を早く終わらせることにつながります。
また、仕事以外の時間があればリフレッシュできて、仕事にもメリハリがつくでしょう。
もちろんこれは、自分の工夫で早く帰れるようにできる職場であることが前提です。
そもそも早く帰れる空気がなかったり、とても定時では終わらないような仕事量を押しつけられているとしたら、別の手段で解決する必要があります。
これらの「自分で改善する」方法について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
【残業が多い時のブラック度チェック】すぐにできる改善策を弁護士が解説
しかし、
「そもそも自分で改善できるような環境じゃない!」
という人も多いかもしれません。
その場合は、労働基準監督署に相談するという方法が考えられます。
4-2:労働基準監督署に相談して解決を図る方法
- 36協定が正しい手続きを経て締結されていないのに、残業させられている
- 36協定で定められている残業時間の上限を超えて残業させられている
などの場合は、労働基準法に違反しているため、「労働基準監督署」に相談することで、解決を図ることができる可能性があります。
労働基準監督署に相談した場合、動いてもらえれば、労働基準監督署の監督官が会社を調査し、違法な状態が認められれば「是正勧告」が行われます。
しかし、労働基準監督署の人員は、全国の会社の数に対して非常に少ないため、「労働災害」「過労死」などの人命に関わるような案件に優先して取りかかります。
そのため、あなたの残業時間が長いという相談では、動いてくれないかもしれません。
特に、中には80時間や100時間を超えるような異常な長時間残業を社員に強いる会社もあるため、月40時間くらいの残業では、労働基準監督署は「情報提供」として処理するだけである可能性が高いでしょう。
5章:会社を辞めるなら残業代を請求しよう
現状を変えるもっとも抜本的な方法は、今よりも「残業の少ない会社」「残業代がきちんと出る会社」に転職することです。
4章で解説したような方法を自分で行うこともできますが、長時間残業やサービス残業を長年当たり前にしてきた「会社の空気」や、「上司の考え方」などは、簡単には変わりません。
4章で紹介した方法を実践しても、時間がたてば、結局残業が日常化している状態に元通りになる可能性が高いです。
そのため、残業が少ない、残業代がきちんと出る“ホワイト企業”に転職するのがもっとも効果的な方法です。
もし転職する場合は、現在の会社に未払いの残業代があれば、請求することができます。
そこで、最後に、残業代を請求する方法について、
- 自分で直接請求する方法
- 弁護士に依頼して請求する方法
の2つに分けて解説します。
5-1:自分で会社に直接請求する方法
自分で直接残業代を請求する方法は、以下のような流れで行うことができます。
- 残業があった事実を証明するための証拠を収集する
- 未払いになっている残業代を計算する
- 「配達証明付き内容証明郵便」を会社に送って時効を止める
- 自分で会社と直接交渉する
5-2:弁護士に依頼する方法
弁護士に依頼すると、以下のような流れで残業代を回収していきます。
弁護士に依頼した場合、
- 交渉
- 労働審判
- 訴訟(裁判)
という手段によって、残業代請求の手続きが進められます。
弁護士に依頼すると、あなたの「会社と戦う」という精神的負担を、弁護士が肩代わりしてくれるだけでなく、時間・手間を節約することもできるのです。
さらに、「完全成功報酬制」の弁護士に依頼することで、初期費用もほぼゼロにできるのです。
また、残業代請求ができるのは、3年の時効が消滅するまでです。そのため、請求するならなるべく早めに行動をはじめることをおすすめします。
残業代請求に強い弁護士の選び方や、相談の流れ・かかる費用などについて、詳しくは以下の記事に書いていますので、ご覧になってください。
【残業代請求】弁護士選びの8つのポイントと解決までの流れや費用を解説
まとめ:40時間の残業は平均より少し少ない
いかがでしたか?
最後に、今回の内容をまとめます。
まず、「残業40時間」という長さは、残業時間の平均「47時間」と比べると一般的で、多くの会社で行われている長さであるということです。
40時間の残業を他の法律などの基準と比べると、以下のようになります。
また、40時間の残業は、「36協定」が締結されていない場合は違法になりますが、締結されていれば違法な長さではありません。
とはいえ、異常な長さではないからとは言っても、改善して残業時間を短くする必要はありますので、
- 自分で改善する
- 労働基準監督署に相談する
という方法で、改善できないか行動をおこしてみましょう。
また、もっとも抜本的に現状を変えられるのは「残業の短い会社」へ転職することです。
転職する場合は、未払いの残業代を、
- 自分で会社に直接請求する
- 弁護士に依頼して請求する
という方法で、会社に請求することができます。
もし今残業でお悩みなら、これらの行動をとってみてはいかがでしょうか。
【参考記事一覧】
80時間、100時間の過労死基準について、詳しくは以下の記事を参照してください。
命の危険があります!80時間の過労死基準と現状を変えるたった1つの方法
残業100時間は過労死基準!心身や生活への影響と現状を変える方法とは?
残業が違法になる基準になる36協定について、詳しくは以下の記事で解説しています。
36協定とは?基礎知識や残業が違法となるケース、未払残業代の請求方法
残業代を正しく計算する方法については、以下の記事をご覧ください。
残業の多さに悩んでいる場合は、以下の記事で対策方法を解説しています。
【残業が多い時のブラック度チェック】すぐにできる改善策を弁護士が解説
残業代請求を弁護士に依頼する場合の流れや費用、注意点などについて、詳しくは以下の記事で解説しています。