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【弁護士が解説】IT系は残業が長い!業界の勤務実態と正しいルール

QUEST法律事務所

代表弁護士住川 佳祐

IT会社で残業する男性

IT系の会社で働いている人や、これからこの業界で仕事を始めようと思っている人は、次のような悩み、心配をお持ちではないでしょうか。

「働いているIT企業の残業が長すぎる」
「ITの他の職種も残業が長いのかな」
「残業が短い会社を見分ける方法はあるんだろうか」

月に一度も休みがなかった、納期前は家に帰れない日がある…、といったITエンジニアなどの働き方に代表されるように、残業が長いイメージがある「IT業界」

アンケート調査などでは、残業時間が実態よりも短いデータとして出るため、「思ったより働きやすいのかな?」と思ってしまいそうですが、社員を残業させて使い潰そうとするブラックな会社は数多く存在します。

この記事では、IT企業における残業の実態について、わかりやすく様々な角度から解説します。

ブラック企業が残業代を支払わずに社員を使うやり方についても説明するので、思い当たる人は、正しい残業代を取り戻すことも考えてみてください。

(記事の流れ)


1章:IT業界は残業が多い?実情を解説

プログラマー
ITの仕事の残業時間が25時間っていうデータを見たけど、そんなに短いんだろうか。
弁護士
業種でまとめると平均残業時間が短くなりますが、プログラマーやwebディレクター、web広告といった職種をはじめ、実際にはもっと長く働いている人が多くいます。
 

1章では、まず職種や会社の規模の違いをふまえて、IT系の仕事の中で残業が長い職種とその実態について解説します。

1-1:職種によって異なる残業時間

IT業界の中でも、忙しい職種と残業がほとんどない職種の両方があります。

2013年にDODAが実施した残業時間の調査を見ると、全95職種のうち13のIT関連が取り上げられています。

それぞれの平均残業時間、全体順位は以下のようになっています。

(図)
順位 平均残業時間 職種
10位  13.9    社内SE
19位  16.3    ヘルプデスク
36位  21.6    サーバーエンジニア
38位  21.8    テクニカルサポート
40位  22.5    セキュリティエンジニア
44位  23.0    ネットワークエンジニア
49位  24.7    Webデザイナー
54位  25.7    営業(IT)
59位  27.0    SE・プログラマ
68位  29.6    プロジェクトマネジャー
69位  29.7    ITコンサルタント
76位  31.7    Web編集/コンテンツ企画
90位  44.8    Webプロデューサー/ディレクター

このデータを見ると、業務が会社内で完結する社内SEやヘルプデスク(社内向けのサービス)といった職種は、残業時間が短くなっています。

その一方で、WebプロデューサーやITコンサルタント、営業など外部にクライアントや取引先を持つ職種や、Web編集やWebデザイナーなどクリエイティブな職種の残業時間が長くなっていることがわかります。

このように、IT業界では平均20時間ほどの残業時間と言っても、職種によって大きく幅があるのが実情です。

弁護士
残業のイメージが強いプログラマーの残業時間が短くなっているのは
①残業時間が長いのにかかわらず、調査対象に含まれない小さな会社がある
②会社側が実際よりも短い残業時間を回答させている
といった可能性も考えられます。

プログラマーの残業については、以下の記事でも詳しく説明していますのでご覧ください。

(「プログラマー 残業」)

あなた
なるほど。職種に関わらず、ベンチャーは残業が長いっていうのも聞いたことがあるな。
 
弁護士
職種以外にも、会社の規模や社歴、社内の立場など残業時間を左右する要素があります。

次節では、そうした点について解説します。

1-2:残業時間を左右するその他の要因

職種のほかに、次のような要素も残業時間の長さに影響します。

・会社規模
・起業してからの年数

順番に見ていきましょう。

1-2-1:会社規模

大手の会社は基本的には残業時間は短く、残業があっても残業代をしっかりと支払うなど、全体的に労働環境が整っている会社が多いと言えます。

その一方で、下請け仕事を受注することが多い中小のIT企業は、仕事を取るためにはクライアントが要求する厳しいスケジュールでも、受け入れざるを得ない状況があります。

そうした場合には、社員に無理な働かせ方を求め、残業時間が伸びるという状況が起こります。

弁護士
中小ベンチャー企業には、労働法を守る意識が薄い経営者もいます。当然ながら、こうした会社でも残業時間が長くなります。
 

1-2-2:起業してからの年数

会社の規模だけでなく、会社が操業してからの年数も、残業の長さを左右することがあります。

社歴が長く業績が安定している会社に比べて、ベンチャー企業は残業が長くなりやすい一面があると言われています。

その背景として、ベンチャー企業には

・少人数で事業を行うので業務量が多く、業務範囲も大きい
・収益を上げるために新規事業を次々に展開する
・急な成長に人的リソースが追いつかない
・経営陣や創業メンバーが、社員に自分たちのような働き方を求める

といった事情があり、そのため社員の労働時間が長くなることがあるのです。

ベンチャー企業の残業については、以下の記事をご覧ください。

5分で分かる!ベンチャー企業の残業の実態と賢く働くための基本知識

あなた
残業は多いけど、その時間がカウントされないので残業代に反映されません。これは問題ないんでしょうか。
弁護士
会社が残業代を支払わずに、残業させることは違法です。次の章ではIT業界のブラックな働かせ方を法律的に解説します。


2章:ブラック企業が使いがちな手口の間違いを解説!

悪どい経営者は、社員に残業代を払わずに少しでも長く働かせるルールを考え、そうした社員に不利な雇用契約を結ぼうとします。

IT業界でよく見られる手口としては、

・年俸制なので残業が出ないことにする
・要件を満たさない職種に裁量労働制を適用する
・フレックスタイム制を悪用する
・固定残業代制(みなし残業代制)を悪用する
・肩書きだけ管理職にして残業代を支払わない
・残業時間は休憩を義務付ける

といったやり方があります。以下、こうした契約のどこが違法の疑いがあるかをひとつずつ解説します。

2-1:年俸制なので残業が出ないことにする

経営者(建前)
君の契約だと、残業代も年俸に含まれているよ。

社員に年俸制を適用している会社は、残業代は年俸に含まれていると主張することがあります。

しかし、これは間違いです。例え年俸が決まっていても、残業したときにはその分の割増賃金を支払わなければいけません

年俸制については次の記事でも詳しく解説していますのでご覧ください。

誰でも5分でわかる「年俸制とは?」と不当な低賃金への対処法

2-2:要件を満たさない職種に裁量労働制を適用する

経営者(建前)
君には裁量労働制が適用されるから残業代がつかないんだ。

実際に働いた時間ではなく、あらかじめ決めた時間を労働時間とみなすのが裁量労働制です。

例えば1日の労働時間が8時間と定められていれば10時間働いていても、その日の労働時間は8時間とされます。

裁量労働制のみなし労働時間

しかし、この「みなし労働時間」が8時間を超えている場合や、深夜の残業を行った場合、あるいはそもそも裁量労働制が適用できないケースなどでは残業代を支払う必要があります。

裁量労働制の残業代については次の記事で詳しく解説していますので、ご確認ください。

裁量労働制にも残業がある!制度の考え方と残業代が貰える条件を解説

2-3:フレックスタイム制を悪用する

経営者(建前)
フレックスなんだから、残業せずに帰っていいんだよ。

始業や就業の時間を社員が自分で決めることができるフレックスタイム制ですが、ブラックな会社に悪用されることがあります。

例えば、あらかじめ定められた労働時間ではとても終わらない仕事を指示しておきながら、会社や上司は

「社員が自分の意思で帰ってないんだから残業代は発生しない」

と言い逃れするようなケースです。もちろん、こうした場合も、会社は残業代を支払う必要があります

フレックスタイム制については、以下の記事でも解説していますのでご覧ください。

フレックスタイム制とは?誰でもたったの5分で理解できる正しい意味

2-4:固定残業代制(みなし残業代制)を悪用する

経営者(建前)
残業した分の給料は固定残業代性として給料に含まれているよ。

固定残業代制(みなし残業代制)とは、あらかじめ一定の残業時間分の残業代を給料として払っておく制度ですが、ブラックな会社はこの制度を悪用することがあります。

例えば、次のような求人の場合、

基本給32万円(60時間分の残業代5万円を含む)

一見、あらかじめ残業代が含まれていて安心しそうですが、60時間を超えた残業をしても、それ以上の残業代が支払われない、60時間に届かないとその分減額するといったこともあります。

固定残業代制については、次の記事でも詳しく解説しています。自分にも当てはまるという方はご覧ください。

【弁護士が解説】「固定残業代制だから残業代は無し」は違法?

2-5:肩書きだけ管理職にして残業代を支払わない

経営者(建前)
君は管理職なので残業代はつかないよ。

社員に肩書きを与えて管理職として扱い、残業代を支払わないというのも、ブラックな会社がよく使う手口です。

法律では「管理監督者」の社員は、残業時間の制限がなく残業代が支払われないと定められています。

しかし、社員を管理監督者にするためには満たさなければならない厳しい条件があり、会社が一方的に決められるものではありません。

管理職でも残業代が出る?管理職の3つの定義と判断基準を徹底解説

2-6:残業時間は休憩を義務付ける

経営者(建前)
残業中は社員を守るために1時間ごとに20分ずつ休憩をとらせているよ。

このようなルールは、一見すると社員のためのように思えますが、残業するほど忙しい時に、頻繁に休憩を取ることはできません。

休憩を取ることはできなくても、残業代の計算ではしっかりと休憩時間を引き、少しでも社員に支払うお金を減らすのが目的です。

もちろん、こうした休憩時間は労働時間にカウントされるので、働いた分の賃金を受け取ることができます

あなた
自分の働き方に当てはまる手口もあったな。こういう会社に当たらないためにはどうしたら良いんだろう。
弁護士
次章では、残業時間の長いIT企業の見分け方を紹介します。


3章:残業時間の長いIT企業の特徴

ここからは、残業時間の長さを見分ける方法を、次の3つの切り口から解説します。

・求人から分かるポイント
・業務内容や社内ルールからわかるポイント
・社風から分かるポイント

ひとつのポイントが当てはまっても、すぐに残業時間が長い会社を意味するわけではありませんが、総合的に判断する材料にしてください。

3-1:求人から分かるポイント

まずは、求人募集から残業が長くなりがちな会社を見極める方法を紹介します。

3-1-1:いつでも求人が出ている

ネットなどで求人を見ていると、いつでも新入社員を募集している会社があります。

常に求人が出ている=慢性的な人手不足を意味し、業務量に対して社員の数が足りていない、仕事が大変なので社員がすぐに辞めてしまう、と言った状況が想像できます。

3-1-2:未経験OKを強調している

ITエンジニアのような専門職でも、求人で「未経験OK」を強調している場合があります。

社員教育に力を入れているため、あえて新人や未経験の人材を集めている会社もありますが、やたらと「未経験OK」を前面に押し出しているような場合は注意が必要です。

3-1-3:長時間のみなし残業時間が規定されている

1章でも説明しましたが、固定残業代制はブラック企業にしばしば悪用されます。

固定残業代制が採られ、求人募集に

基本給32万円(45時間分の残業代3万円を含む)

といった記載があった場合は、注意してかかる必要があります。

3-2:業務内容や社内ルールからわかるポイント

次に、業務内容や社内のルールから判断するポイントについて解説します。

3-2-1:自社開発が行われていない

ITエンジニア業界の仕事は、大きく自社開発受託開発の2つに分けることができます。

自社開発:自社でシステムやwebサービス、アプリなどを開発・運営
受託開発:クライアントから仕事を請け負って開発を進める

自社開発を行っているのは大手や資金が潤沢にある会社の場合が多く、残業時間が比較的短いケースが多いようです。

一方で、受託開発が中心の会社は、納期が厳しい仕事やクライアントによる仕様変更が頻繁に起こる仕事も多く、働いている社員の残業も長くなります

3-2-2:ノー残業デーが設けられていない

IT業界には、新しい会社や経営者が若い会社も多く、社員が働きやすい環境を整えようとする会社もあります。

社内のルールで「ノー残業デー」「残業禁止」を掲げている会社もあります。

逆にこうした取り組みが遅れている会社は、残業が常態化していないか注意して見極めましょう。

3-3:社風から分かるポイント

会社の文化や雰囲気からも、残業が長いかどうかを知るヒントがいくつもあります。

3-3-1:「生産性」を重視する文化がない

IT系など比較的若い会社には「長く働いている=非効率」とする考えが強くなっています。

時間をかけず、効率的に仕事を進めるのが良しとされている会社であれば、本質的には意味のない残業が少なくなります。

反対に「働いている=頑張っている」とみなす価値観が強い会社は残業時間が長くなる傾向にあります。

3-3-2:社員が定時退社していない

当然のことながら、働いている社員が定時退社している会社は残業が少ないかあっても短い会社だと言えます。

IT業界で働く人はSNSの利用率が高いですが、退社後のプライベートが充実している場合は、比較的早く仕事が終わっているのかもしれません。

逆に、定時退社している社員を見たことのないような会社には注意しましょう。

プログラマー
次の職場はなるべく残業が短く、社員を大切に扱う会社が見つけられそうだな。
弁護士
転職を決めて、今の会社を辞めることに決めたら、本当はもらえるはずだった残業代を取り戻すことも忘れないようにしてください。

次章では、転職の際に忘れずに行いたい未払い残業代の請求について解説します。


4章:転職の際には未払い賃金・残業代も請求できる

ここまで読んで、実際に新しい会社に移ることも視野に入れ始めたあなたは、

「もし会社を辞めるとしたら、自分も残業代が取り戻せるんだろうか

と考えているのではないでしょうか。

残業代を取り返そうと思った時、あなたが選べる選択肢としては

・自分で請求する方法
・弁護士に依頼する方法

という2つがありますが、弁護士への依頼は手間がかからず、残業代を取り返せる確率も高くなるオススメの方法です。

実際にどのくらい残業代がもらえるか計算してみたい人は、次の記事をご確認ください。

今すぐ計算できる!残業代・残業時間の正しい計算方法をケース別で解説

未払い残業代の請求を成功に近づける「証拠集め」については次の記事もご確認ください。会社を辞める前から、集められる証拠はしっかりと揃えておきましょう。

【弁護士が解説】残業代をアップさせる証拠一覧と集め方マニュアル


まとめ

いかがでしたか。最後にここまでの内容をもう一度振り返ってみましょう。

IT企業の残業時間を平均すると20時間程度だとするデータがありますが、実際にはもっと長い時間の残業で酷使されている人もいることを説明しました。

例えば職種について考えると、

Webプロデューサー
ITコンサルタント、営業
Web編集やWebデザイナー
プログラマー

といった仕事では残業時間が長くなるようです。

ブラック企業は、残業時間を実態よりも短く見せるために、

・年俸制なので残業が出ないことにする
・条件を満たさない職種に裁量労働制を適用する
・フレックスタイム制を悪用する
・固定残業代制(みなし残業代制)を悪用する
・肩書きだけ管理職にして残業代を支払わない
・残業時間は休憩を義務付ける

といった手口を使いますが、これらは労働基準法に違反している疑いが強くなります。

ブラック企業を見分ける方法についても解説しているので、今働いている会社をやめて転職する際には参考にしてください。

また、今まで残業した分の未払い残業代は2年分までさかのぼって請求することができるので、忘れずに行うようにしましょう。