【弁護士が解説】IT系は残業が長い!業界の勤務実態と正しいルール

監修者

弁護士法人QUEST法律事務所
住川 佳祐

【弁護士が解説】IT系は残業が長い!業界の勤務実態と正しいルール
チェック
この記事を読んで理解できること
  • IT業界で残業時間の長い職種とその要因
  • ブラックIT企業によくある残業代・残業時間の手口
  • 残業時間の長いIT企業の特徴
  • ブラック企業退職後は未払い残業代を請求しよう

あなたは、

「IT業界は、どの会社も残業が多い?」
「ITの他の職種も残業が長いのか知りたい」
「IT企業で残業が短い会社を見分ける方法は?」

などとお考えではないですか?

どうしても、IT業界やITエンジニアは、

「月に一度も休みがとれなかった」
「納期前は家に帰れない日がある」

というように、残業時間が長いイメージがあります。

アンケート調査などでは、残業時間が実態よりも短いデータとして出るため、「思ったより働きやすいのかな?」と思ってしまいそうですが、IT業界にも社員を残業させて使い潰そうとするブラックな会社が数多く存在します。

この記事では、IT企業における残業の実態について、わかりやすく様々な角度から解説します。

また、ブラック企業が、残業代を支払わずに社員を働かせるやり方についても解説していきます。

今お勤めの会社でも思い当たる点がある人は、正しい残業代を取り戻すことも考えてみてください。

目次

  1. 1章:IT業界で残業時間の長い職種とその要因
    1. 1-1:職種によって異なる残業時間
    2. 1-2:残業時間を左右するその他の要因
      1. 1-2-1:会社規模
      2. 1-2-2:起業してからの年数
  2. 2章:ブラックIT企業によくある残業代・残業時間の手口
    1. 2-1:年俸制を理由に残業代を出さない
    2. 2-2:要件を満たさない職種に裁量労働制を適用する
    3. 2-3:フレックスタイム制を悪用する
    4. 2-4:固定残業代制(みなし残業代制)を悪用する
    5. 2-5:肩書きだけ管理職にして残業代を支払わない
    6. 2-6:残業時間は休憩を義務付ける
  3. 3章:残業時間の長いIT企業の特徴
    1. 3-1:求人から分かるポイント
      1. 3-1-1:いつでも求人が出ている
      2. 3-1-2:未経験者OKを強調している
      3. 3-1-3:長時間のみなし残業時間が規定されている
    2. 3-2:業務内容や社内ルールからわかるポイント
      1. 3-2-1:自社開発が行われていない
      2. 3-2-2:ノー残業デーが設けられていない
    3. 3-3:社風から分かるポイント
      1. 3-3-1:「生産性」を重視する文化がない
      2. 3-3-2:社員が定時退社していない
  4. 4章:ブラック企業退職後は未払い残業代を請求しよう
    1. 4-1:残業代を取り返すための2つの選択肢
      1. 4-1-1:自分で残業代を請求する2つの方法
      2. 4-1-2:弁護士に依頼して残業代を請求する
    2. 4-2:残業代請求における2つのポイント
      1. 4-2-1:残業代請求には3年の時効がある
      2. 4-2-2:残業代請求に必要な証拠一覧
  5. まとめ
未払い残業代を取り返したいというあなたへ、まずはお気軽にご相談ください
未払い残業代を取り返したいというあなたへ、まずはお気軽にご相談ください

1章:IT業界で残業時間の長い職種とその要因

IT業界といえば、残業時間が長いイメージがありますが、実際にはその職種や会社の規模、起業してからの年数などによって差が生じています。

1章では、まず職種や会社の規模の違いをふまえて、IT系の仕事の中で残業が長い職種とその要因について解説します。

1-1:職種によって異なる残業時間

IT業界の中でも、忙しい職種と残業がほとんどない職種の両方があります。

転職サイトの「doda」が、2022年に行った残業時間の調査の中には、全94職種中11の「IT/通信系エンジニア」関連の職種があげられています。

残業時間/月 職種名
18.9 テクニカルサポート/ヘルプデスク
20.2 品質管理(IT/通信)
20.3 データベース/セキュリティエンジニア
21.5 社内SE
22.1 アプリケーションエンジニア
22.4 研究開発/R&D(IT/通信)
22.9 ネットワークエンジニア
24.9 Webエンジニア
25.1 サーバーエンジニア
25.6 ITコンサルタント(アプリ)
27.5 インフラコンサルタント
28.1 ゲームクリエイター(Web/モバイル/ソーシャル)

※単位:時間(2022年4~6月の1カ月あたりの平均)

出典:【doda】2022年のデータ集(全94職種)

この調査によると、2022年の平均残業時間は、「22.2時間/月」で前回調査より1.4時間増えているようですが、IT関連では6つの職種が平均より多くなっています。

職種では、インフラコンサルタントITコンサルタントなど、外部にクライアントや取引先を持つ職種や、ゲームクリエイターなどクリエイティブな職種の残業時間が長くなっていることがわかります。

その一方で、「テクニカルサポート/ヘルプデスク」や、業務が会社内で完結する「社内SE」など社内向けの業務を行う職種が、残業時間が短くなっています。

このように、IT業界では平均22時間ほどの残業時間と言っても、職種によって大きく幅があるのが実情です。

残業のイメージが強いプログラマーの残業時間が短くなっているのは

  1. 残業時間が長いのにかかわらず、調査対象に含まれない小さな会社がある
  2. 会社側が実際よりも短い残業時間を回答させている

といった可能性も考えられます。 

また、職種以外にも、会社の規模や社歴、社内の立場など、残業時間を左右する要因があります。

次節では、そうした点について解説します。

1-2:残業時間を左右するその他の要因

職種のほかに、次のような要素も残業時間の長さに影響します。

  • 会社規模
  • 起業してからの年数

順番に見ていきましょう。

1-2-1:会社規模

大手のIT企業では、基本的には残業時間は短く、残業があっても残業代をしっかりと支払うなど、全体的に労働環境が整っている会社が多いといえます。

その一方で、下請け仕事を受注することが多い中小のIT企業は、仕事を取るためにはクライアントが要求する厳しいスケジュールでも、受け入れざるを得ない状況があります。

そのため、納期に間に合わせるためには社員の仕事量は当然増えるため、残業時間が伸びるという状況が起こります。

中小ベンチャー企業には、労働法を守る意識が薄い経営者もすくなからずいるため、こうした会社では残業時間が長くなります。

1-2-2:起業してからの年数

会社の規模だけでなく、会社が操業してからの年数も、残業の長さを左右することがあります。

社歴が長く業績が安定している会社に比べて、ベンチャー企業は残業が長くなりやすい一面があります。

なぜなら、ベンチャー企業は

  • 少人数で事業を行うので業務量が多く、業務範囲も広い
  • 収益を上げるために新規事業を次々に展開する
  • 急な成長に人的リソースが追いつかない
  • 経営陣や創業メンバーが、社員に自分たちのような働き方を求める

といった事情があるため、そのしわ寄せで社員の労働時間は長くなりやすい傾向があります。

ベンチャー企業の残業については、以下の記事をご覧ください。

ベンチャー企業の残業実態と残業代の請求方法を弁護士が解説

さらに、残業は多いけれど、その時間が適正にカウントされず、残業代が支払われないといった問題もあります。

会社が残業代を支払わずに、残業させることは違法です。

次の章では、IT業界のブラックな働かせ方を法律的に解説します。

2章:ブラックIT企業によくある残業代・残業時間の手口

悪どい経営者は、社員に残業代を払わずに少しでも長く働かせるルールを考え、そうした社員に不利な雇用契約を結ぼうとします。

IT企業でよく見られる手口としては、

  • 年俸制を理由に残業代を出さない
  • 要件を満たさない職種に裁量労働制を適用する
  • フレックスタイム制を悪用する
  • 固定残業代制(みなし残業代制)を悪用する
  • 肩書きだけ管理職にして残業代を支払わない
  • 残業時間は休憩を義務付ける

といったやり方があります。

以下、こうした契約のどこが違法の疑いがあるかをひとつずつ解説します。

2-1:年俸制を理由に残業代を出さない

社員に年俸制を適用しているブラック企業では、残業代は年俸に含まれていると主張することがあります。

年俸制は、1年単位で支払う給料の額を決めるため、その決まった額以上の金額は一切支払わないものとすると、会社側に悪用されることがとても多いです。

しかしこれは間違いで、例え年俸が決まっていても、残業した場合は、その分の割増賃金を支払わなければいけません。

年俸制については次の記事でも詳しく解説していますのでご覧ください。

年棒制とは?正しい意味と悪用例!残業代を取り戻す方法を弁護士が解説

2-2:要件を満たさない職種に裁量労働制を適用する

裁量労働制とは、実際に働いた時間ではなく、あらかじめ会社側と協定などで決めた時間を労働時間と「みなす」制度のことを言います。

例えば1日の労働時間が8時間と定められていれば10時間働いていても、その日の労働時間は8時間とされます。

裁量労働制のみなし労働時間

しかし、この「みなし労働時間」が8時間を超えている場合や、深夜の残業を行った場合、あるいはそもそも裁量労働制が適用できないケースなどでは、残業代を支払う必要があります。

裁量労働制は本来、エンジニアデザイナーなど専門性の高い業務にかかわる社員が対象とされていますが、ブラック企業では悪用されている場合があります。

裁量労働制の残業代については次の記事で詳しく解説していますので、ご確認ください。

裁量労働制にも残業がある!制度の考え方と残業代が貰える条件を解説

2-3:フレックスタイム制を悪用する

フレックスタイム制は、「社員が自分で始業時間と終業時間を決めることができる働き方」です。

しかし、ブラック企業の中には、フレックスタイム制を悪用して、残業代を払わない会社もあります。

例えば、あらかじめ定められた労働時間ではとても終わらない仕事を指示しておきながら、会社や上司は

「社員が自分の意思で帰ってないんだから残業代は発生しない」

と言い逃れするようなケースです。

実際には、所定労働時間を定めた期間(清算期間)中の法定労働時間より実労働時間が超えた場合は、残業代を支払う必要があります。

フレックスタイム制については、以下の記事でも解説していますのでご覧ください。

フレックスタイム制とは?正しい使い方とメリデメや残業代の計算方法

2-4:固定残業代制(みなし残業代制)を悪用する

固定残業代制(みなし残業代制)とは、あらかじめ一定の残業時間分の残業代を、給料として払っておく制度ですが、ブラック企業はこの制度を悪用することがあります。

例えば、次のような求人の場合、

基本給32万円(60時間分の残業代5万円を含む)

一見、あらかじめ残業代が含まれていて安心しそうですが、60時間を超えた残業をしても、それ以上の残業代は支払われません。

逆に、60時間に届かない場合は、その分残業代を減額するといったこともあります。

そもそも、60時間の残業に対して5万円の残業代は金額が低すぎるので、計算方法が不当である可能性も高いです。

固定残業代制については、次の記事でも詳しく解説しています。自分にも当てはまるという方はご覧ください。

【弁護士が解説】「固定残業代制だから残業代は無し」は違法?

2-5:肩書きだけ管理職にして残業代を支払わない

社員に肩書きを与えて管理職として扱い、残業代を支払わないというのも、ブラック企業がよく使う手口です。

法律では「管理監督者」の社員は、残業時間の制限がなく残業代が支払われないと定められています。

しかし、社員を管理監督者にするためには満たさなければならない厳しい条件があり、会社が一方的に決められるものではありません。

管理職の定義と名ばかり管理職チェックリスト!残業代の請求方法を解説

2-6:残業時間は休憩を義務付ける

「残業中は社員を守るために、1時間ごとに20分ずつ休憩をとらせる。」

このようなルールは、一見すると社員のためのように思えますが、残業するほど忙しい時に、頻繁に休憩を取ることはできません。

休憩を取ることはできなくても、残業代の計算ではしっかりと休憩時間を引き、少しでも社員に支払うお金を減らすのが目的です。

もちろん、こうした休憩時間に働いていれば労働時間にカウントされるので、働いた分の賃金を受け取ることができます。

次章では、残業時間の長いIT企業の特徴を紹介します。

3章:残業時間の長いIT企業の特徴

残業時間の長いIT企業の特徴を、次の3つの切り口から解説します。

  • 求人から分かるポイント
  • 業務内容や社内ルールからわかるポイント
  • 社風から分かるポイント

ひとつのポイントが当てはまっても、すぐに残業時間が長い会社を意味するわけではありませんが、総合的に判断する材料にしてください。

3-1:求人から分かるポイント

まずは、求人募集から残業が長くなりがちな会社を見極める方法を紹介します。

3-1-1:いつでも求人が出ている

IT企業の求人をネットなどで見ていると、いつでも新入社員を募集している会社があります。

「常に求人が出ている=慢性的な人手不足」を意味し、業務量に対して社員の数が足りていない、仕事が大変なので社員がすぐに辞めてしまう、といったブラック企業の状況が想像できます。

3-1-2:未経験者OKを強調している

ITエンジニアのような専門職でも、ブラック企業の求人では、「未経験者OK」を強調している場合があります。

社員教育に力を入れているため、あえて新人や未経験の人材を集めている会社もありますが、やたらと「未経験者OK」を前面に押し出しているような場合は注意が必要です。

なぜなら、門戸を広げてより多くの求職者を大量募集・大量採用して、人手不足を解消しようとしているからです。

こういった求人は、採用されたとしてもきちんと教育してもらえなかったり、営業についても厳しいノルマを課される可能性があります。

3-1-3:長時間のみなし残業時間が規定されている

2章でも説明しましたが、固定残業代制はブラック企業にしばしば悪用されます。

固定残業代制が採られ、求人募集に

基本給32万円(45時間分の残業代3万円を含む)

といった記載があった場合は、注意してかかる必要があります。

固定残業代制での採用と書かれている求人は、はじめから残業が前提となっていて労働時間が長いブラック企業の可能性があります。

3-2:業務内容や社内ルールからわかるポイント

次に、業務内容や社内のルールから判断できるポイントについて解説します。

3-2-1:自社開発が行われていない

ITエンジニア業界の仕事は、大きく自社開発と受託開発の2つに分けることができます。

  • 自社開発:自社でシステムやwebサービス、アプリなどを開発・運営
  • 受託開発:クライアントから仕事を請け負って開発を進める

自社開発を行っているのは大手や資金が潤沢にある会社の場合が多いため、残業時間が比較的短いケースが多いようです。

一方で、受託開発が中心の会社は、納期が厳しい仕事やクライアントによる仕様変更が頻繁に起こる仕事も多く、働いている社員の残業も長くなります。

3-2-2:ノー残業デーが設けられていない

IT業界には、新しい会社や経営者が若い会社も多く、社員が働きやすい環境を整えようとする会社もあります。

その中には、社内のルールで「ノー残業デー」「残業禁止」を掲げている会社もあります。

逆にこうした取り組みが遅れている会社は、残業が常態化していないか注意して見極める必要があります。

3-3:社風から分かるポイント

会社の文化や雰囲気からも、残業が長いかどうかを知るヒントがいくつもあります。

3-3-1:「生産性」を重視する文化がない

IT系などの会社には、「長く働いている=非効率」とする考えが強くなっています。

時間をかけず、効率的に仕事を進めるのが良しとされている会社であれば、本質的には意味のない残業が少なくなります。

反対に、「働いている=頑張っている」とみなす価値観が強い会社は、残業時間が長くなる傾向にあります。

3-3-2:社員が定時退社していない

当然のことながら、働いている社員が定時退社している会社は、残業が少ないかあっても短い会社だといえます。

IT業界で働く人はSNSの利用率が高いですが、退社後のプライベートが充実している場合は、比較的早く仕事が終わっているのかもしれません。

逆に、定時退社している社員を、見たことのないような会社には注意しましょう。

もし、あなたが転職を決めて、今の会社を辞めることに決めた場合は、本当はもらえるはずだった残業代を取り戻すことも忘れないようにしましょう。

次章では、転職の際に忘れずに行いたい未払い残業代の請求について解説します。

4章:ブラック企業退職後は未払い残業代を請求しよう

ブラック企業は、社員に長時間の残業をさせるだけでなく、残業代を払っていないことが多いため、退職後に未払い残業代を請求することで回収できる可能性があります。

これから解説するように、残業代請求のハードルは一般的に考えられているより下がっており、多くの人が、気軽に残業代を回収しています。

それでは、これから残業代を請求するための方法について解説します。

会社から残業代を取り返すための方法には、

  • 自分で直接請求する方法
  • 弁護士に依頼する方法

という2つがあります。

自分で請求する場合と、弁護士に依頼して請求する場合とでは、下記のように流れが異なりますので、注意してください。

残業代請求を自分でやる流れ・弁護士に依頼する流れ

また、この2つの方法には、以下のようにメリット・デメリットがあります。

未払い残業代を自分で請求する場合と弁護士に依頼する場合のメリット・デメリット

このように、自分で請求する方法では、手間・時間・精神的負担が大きいだけでなく、弁護士に頼む方法に比べて回収できる金額が少なくなる可能性が高いです。

そのため、残業代請求はプロの弁護士に依頼するのがおすすめです。

とはいえ、自分で請求する方法についても知りたいという人もいると思いますので、自分でできる方法から解説します。

4-1:残業代を取り返すための2つの選択肢

それでは、これから残業代請求の2つの方法について、

  • 自分でできる方法
  • 弁護士に依頼する方法

に分けて解説します。

4-1-1:自分で残業代を請求する2つの方法

自分で請求するには、『内容証明を送る』方法と『労働基準監督署に相談する』方法の2種類があります。

それぞれの方法の流れについて、詳しく解説します。

残業代請求を自分でやる流れ

【自分で会社に内容証明を送って直接請求する】
自分で会社に残業代を請求するためには、会社に「配達証明付き内容証明郵便」で、請求書を送る必要があります。

【内容証明ひな形】

私は○○年○○月○○日、貴社に入社し、○○年○○月○○日に退社した者です。

私は、○○年○○月○○日から○○年○○月○○日(以下「請求期間」とします。)まで、貴社に対し、合計■時間の時間外労働を提供いたしましたが、貴社からは、一切、割増賃金のお支払いただいておりません。

よって、私は、貴社に対し、請求期間内の未払割増賃金の合計額である★円の支払を請求いたしますので、本書面到達後1週間以内に、以下の口座に振り込む方法によるお支払をお願いいたします。

○○銀行○○支店 
○○預金(普通・定期などの別) 
口座番号○○ 

口座名義人○○

なお、本書面到達後1週間を過ぎても貴社から何らご連絡いただけない場合は、やむを得ず訴訟を提起させていただくことをあらかじめ申し添えます。

ただし、自分で会社に内容証明を送って残業代を請求しても、会社側にも顧問弁護士が付いていて、うまく丸め込まれてしまう可能性が高いです。

つまり、あなたが残業代を請求しても、1円も取り戻せないかもしれないのです。

そこで、もう1つの自分でできる手段として、労働基準監督署に申告するという手段があります。

【労働基準監督署に申告する】
「労働基準監督署」とは、厚生労働省の出先機関で、労働基準法に基づいて会社を監督するところです。

給料の未払いは労働基準法違反のため、労働基準監督署に相談することで解決にいたる可能性もあります。

労働基準監督署に相談したときの流れ

このような流れで労働基準監督署に申告することができるのですが、この方法は「残業代を請求したい場合」は、あまりおすすめではありません。

なぜなら、労働基準監督署は、労働基準法に違反している会社の行為を「正す」機関であり、残業代を取り返してくれる機関ではないからです。

また、労働基準監督署は、労働者からのすべての申告で動くわけではありません。

それは、全国には400万を超える法人があるにもかかわらず、日本の労働基準監督署の人員は、非常勤の職員を含めても約2400人しかおらず、明らかに人員不足だからです。

そのため、過労死や労働災害などの「人命に関わる問題」が優先して処理されるため、「残業代の未払い」では、動いてもらえない可能性が高いのです。

そこで、残業代を取り返す場合には、最初から弁護士に依頼することをおすすめします。

4-1-2:弁護士に依頼して残業代を請求する

残業代をより高額かつ確実に取り返すためには、弁護士に依頼することが最善です。

なぜなら、残業代の計算や交渉は、専門的な知識が必要なため、1人で戦っては会社側に負けてしまうおそれがあるからです。

弁護士に依頼した場合、

  • 交渉
  • 労働審判
  • 訴訟(裁判)

といった手段によって、残業代請求の手続きが進められます。

弁護士に依頼した場合の流れ

実は、弁護士に依頼すると言っても「訴訟」になることは少ないです。

おそらくあなたが心配しているであろう「費用」の面でも、「完全成功報酬制」の弁護士に依頼すれば、「相談料」や「着手金」ゼロで依頼することができます。

弁護士に依頼すると、あなたの「会社と戦う」という精神的負担を、弁護士が肩代わりしてくれるだけでなく、時間・手間を節約することもできるのです。

さらに、「完全成功報酬制」の弁護士に依頼することで、初期費用もほぼゼロにできるのです。

ただし、弁護士に依頼する場合は「弁護士なら誰でもいいだろう」とは考えないでください。

実は、法律の知識は広い範囲に及ぶため、自分の専門分野以外の件については、あまり知識がない弁護士が多いです。

そのため、残業代請求に強い弁護士に依頼することをおすすめします。

残業代請求に強い弁護士の選び方や、相談の流れ・かかる費用などについて、詳しくは以下の記事に書いていますので、ご覧になってください。

【残業代請求】弁護士選びの8つのポイントと解決までの流れや費用を解説

残業代の請求方法について、理解することができたでしょうか?

残業代請求時に注意すべき2つのポイントについて解説します。

4-2:残業代請求における2つのポイント

残業代請求には、

  • 3年の時効が成立する前に手続きを行う
  • 必要な証拠を集めておく

というポイントがあります。

それぞれ順番に解説します。

4-2-1:残業代請求には3年の時効がある

未払いの残業代は、いつまでも請求できるわけではありません。

「3年」の時効が成立すると、二度と請求できなくなります。 

時効の基準となるのは、「毎月の給料日」です。

【給料の支払日が「15日締め・翌月末払い」の場合】
例えば、給料の支払日が「15日締め・翌月末払い」の場合、2020年2月16日から3月15日までの給料は、2020年4月30日に支払われます。

そのため、2020年3月15日締めの給料は、2023年の4月30日経過時に時効を迎えます。

そこで、2020年3月15日締めの給料の時効を止めるためには、2023年の4月末までに「時効を止める」手続きを行う必要があります。

残業代請求の3年の時効

毎月の給料日がくるたびに時効が成立し、1ヶ月分の残業代が消滅してしまいます。

少しでも多くの残業代を取り返すために、できるだけ早く行動を開始しましょう。

4-2-2:残業代請求に必要な証拠一覧

未払いの残業代を請求するときに、まずやるべきなのが「証拠集め」です。

証拠集めは、まずは自分で行うことをおすすめします。

証拠集めも弁護士に依頼することは可能ですが、弁護士が証拠を要求しても提出しない悪質な会社もあるため、会社に在籍しているうちに、自分で証拠を集めておくことがより確実なのです。

残業代請求の証拠として有効なのは、以下のようなものです。

【勤怠管理している会社で有効な証拠】
  • タイムカード
  • 会社のパソコンの利用履歴
  • 業務日報
  • 運転日報
  • メール・FAXの送信記録
  • シフト表
【勤怠管理していない会社で有効な証拠】
  • 手書きの勤務時間・業務内容の記録(最もおすすめ)
  • 残業時間の計測アプリ
  • 家族に帰宅を知らせるメール(証拠能力は低い)

会社が勤怠管理をしていないため、自分で勤務時間を記録する場合、毎日手書きで、1分単位で時間を書きましょう。

具体的な業務についても書くのがベストです。

家族に帰宅を知らせるメールは、裁判になると証拠としては弱いので、できるだけ手書きでメモを取りましょう。

証拠は、できれば3年分あることが望ましいですが、なければ一部でもかまいません。

できるだけ毎日の記録を集めておきましょう。

ただし、手書きの場合絶対に「ウソ」の内容のことを書いてはいけません。

証拠の中にウソの内容があると、その証拠の信用性が疑われ、証拠として利用できなくなり、残業していた事実を証明できなくなる可能性があります。

そのため、証拠は「19時30分」ではなく、「19時27分」のように、1分単位で記録するようにし、曖昧さが指摘されないようにしておきましょう。

まとめ

最後にここまでの内容をもう一度振り返ってみましょう。

IT業界では平均22時間ほどの残業時間と言っても、職種によって大きく幅があるのが実情です。

職種では、

  • インフラコンサルタント
  • ITコンサルタント
  • ゲームクリエイター

などの職種の残業時間が長くなっています。

ブラック企業は、残業時間を実態よりも短く見せるために、

  • 年俸制を理由に残業代を出さない
  • 要件を満たさない職種に裁量労働制を適用する
  • フレックスタイム制を悪用する
  • 固定残業代制(みなし残業代制)を悪用する
  • 肩書きだけ管理職にして残業代を支払わない
  • 残業時間は休憩を義務付ける

といった手口を使いますが、これらは労働基準法に違反している疑いが強くなります。

ブラック企業を見分ける方法についても解説しているので、今働いている会社をやめて転職する際には参考にしてください。

また、今まで残業した分の未払い残業代は3年分までさかのぼって請求することができるので、忘れずに行うようにしましょう。

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弁護士法人QUEST法律事務所へのご相談は無料です。当事務所では、電話・メール・郵送のみで残業代請求できます。ですので、全国どちらにお住まいの方でも対応可能です。お1人で悩まずに、まずは以下よりお気軽にご相談ください。

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