あなたはちゃんともらえてる?時間外手当の「正しい知識」と計算方法

監修者

弁護士法人QUEST法律事務所
代表弁護士 住川 佳祐

あなたはちゃんともらえてる?時間外手当の「正しい知識」と計算方法
チェック
この記事を読んで理解できること
  • 時間外手当(残業代)とは?法律上の定義と「働いた」とみなされる条件について解説
  • 時間外手当(残業代)の計算方法を知ろう
  • 時間外手当(残業代)が正しくもらえているか判断するチェックシートとその解説
  • 時間外手当(残業代)は請求して取り返すことができる

あなたは、以下のような疑問をお持ちではありませんか?

時間外手当についてありがちな悩み

給与明細などの「時間外手当(残業代)」という項目を見て、それが何なのか分からない、正しい金額がもらえているのか分からない、と思うことは多いですよね。

しかし、時間外手当(残業代)について正しい知識を持っていないと、会社から時間外手当(残業代)をごまかされても、気付くことすらできません。

経営者(本音)
経営者(本音)
社員たちは残業代が出る仕組みなんてよく分かっていないだろう。がっつりごまかして俺の儲けにしてやろう。

もちろん、会社が適正な金額の時間外手当(残業代)を支払わないことは違法です。 そのため、もしあなたの時間外手当(残業代)が不当に安い金額しか支払われていないとしたら、会社に残業代を請求することで、取り返すことができます。

そこで、この記事では、時間外手当(残業代)の定義・計算方法などの基礎知識と、請求する場合の、請求方法について解説します。

最後までしっかり読んで、会社に騙されないように正しい知識を身につけてください。

【全部読むのが面倒な方へ|当記事の要点】

■時間外手当(残業代)の定義

1日8時間・週40時間」のどちらか一方を超えた時間

■働いた時間としてカウントされる条件

「使用者の指揮命令下に置かれている」時間

■時間外手当(残業代)の計算式

残業代の計算式

■会社が時間外手当(残業代)をごまかす手口

  1. さぼってばかりで、真面目に働いていない
  2. 残業は禁止していた
  3. 基本給・固定残業代・各種手当に残業代を含んでいる
  4. 「管理職(管理監督者)だから」支払い義務はない
  5. 年俸制なので残業代は支払い済みである
  6. 残業代は歩合に含まれているので支払い済みである
  7. 変形労働時間制なので支払い義務はない
  8. フレックスタイム制なので支払い義務はない

■時間外手当(残業代)を取り返す方法

  1. 自分で会社に直接請求する
  2. 弁護士に依頼して請求してもらう

時間外手当に関するこの記事でのポイント

目次

  1. 1章:時間外手当(残業代)とは?法律上の定義と「働いた」とみなされる条件について解説
    1. 1-1:時間外手当(残業代)の法律上の定義とは
    2. 1-2:過去の判例から判断できる「働いた時間」にカウントされる基準
  2. 2章:時間外手当(残業代)の計算方法を知ろう
  3. 3章:時間外手当(残業代)が正しくもらえているか判断するチェックシートとその解説
    1. 3-1:時間外手当(残業代)のチェックシート
    2. 3-2:多くの会社が時間外手当(残業代)をごまかすために使っている手口
      1. 3-2-1:さぼってばかりで、真面目に働いていない
      2. 3-2-2:残業は禁止していた
      3. 3-2-3:基本給・固定残業代・各種手当に残業代を含んでいる
      4. 3-2-4:「管理職(管理監督者)だから」支払い義務はない
      5. 3-2-5:年俸制なので残業代は支払い義務はない
      6. 3-2-6:残業代は歩合に含まれているので支払い済みである
      7. 3-2-7:変形労働時間制なので支払い義務はない
      8. 3-2-8:フレックスタイム制なので支払い義務はない
  4. 4章:時間外手当(残業代)は請求して取り返すことができる
    1. 4-1:自分で会社に直接請求する方法
    2. 4-2:弁護士に依頼する方法
    3. 4-3:残業代請求を行う上で重要な2つのポイント
      1. 4-3-1:まずは自分で証拠を集める
      2. 4-3-2:残業代が請求できるのは3年の時効が成立するまで
  5. まとめ:時間外手当の正しい知識
未払い残業代を取り返したいというあなたへ、まずはお気軽にご相談ください
未払い残業代を取り返したいというあなたへ、まずはお気軽にご相談ください

1章:時間外手当(残業代)とは?法律上の定義と「働いた」とみなされる条件について解説

まずは、時間外手当(残業代)の定義について詳しく解説します。

時間外手当(残業代)の定義について知っておくことは、

  • 自分が時間外手当(残業代)を正しくもらえているか判断すこと
  • 時間外手当(残業代)を正しく計算すること

などの前提知識になりますので、ここでしっかり学んでおきましょう。

それでは、解説します。

1-1:時間外手当(残業代)の法律上の定義とは

時間外手当(残業代)とは、以下の「法定労働時間を超えて働いた時間(残業)」に対して支払われる賃金のことです。

法定労働時間とは、法律で定められた「1日8時間・週40時間」の時間のことで、これを超えた労働が「残業」になります。
つまり、以下のどちらか一方でも超えて働いた時間が残業です。 

  • 1日8時間を超えた労働時間
  • 週40時間を超えた労働時間

1日8時間・週40時間を超えたら残業

この残業時間に働いた労働の対価として支払われるのが「時間外手当(残業代)」です。

会社は社員に、残業の対価として時間外手当(残業代)を支払わなければならないと、法律で義務づけられています。

さらに、時間外手当(残業代)は、普段の賃金に「割増率」をかけたものでなければなりません。

※割増率とは、時間当たりに換算した賃金(基礎時給)にかけられる1.25倍〜1.6倍の倍率のことです。

たとえば、1時間あたりの賃金が1000円の人は、残業した場合は1時間あたりの賃金が1250円以上になるのです。

弁護士
弁護士
つまり、時間外手当(残業代)は
①1日8時間・週40時間を超えて働いたすべての時間の分だけ支払われる
②普段の賃金に割増率をかけて支払われる
という2点が守られていなければ違法なのです。
社員
社員
なるほど。つまり法定労働時間を超えて会社に残っている時間はすべて残業で、割増率をかけて残業代がもらえなければ違法ということですね。
弁護士
弁護士
実は、会社に残っている時間がすべて残業になるとは限りません。そこで、もう一点知っておかなければならないことがあります。それが「働いた時間」としてカウントされる条件です。

法定労働時間を超えて働いた時間はすべて残業時間ですが、それだけでは、残業の判断には不十分です。 「働いた時間」としてカウントされるには条件があるのです。

1-2:過去の判例から判断できる「働いた時間」にカウントされる基準

過去の判例から、「働いた時間」としてカウントできるのは、

「使用者の指揮命令下に置かれている」時間

(三菱重工業長崎造船所事件・最判平成12年3月9日労判778号)

のことであるとされています。

使用者」とは、簡単に言えばあなたの職場の「上司」や「社長」「店長」などのことです。その使用者から「この仕事をやってくれ」「この時間は働いてくれ」という指示を受けている時間は、すべて残業時間としてカウントされます。

さらに、会社から明らかに「この仕事を残ってやってくれ」と指示されていなくても、

  • 就業時間内に終わらないほどの量の仕事を任されている
  • 納期が差し迫っていて残業せざるを得ない

などのような、仕事上働かざるを得なかった時間は、「働いた時間」としてカウントされる可能性が高いです。

使用者の指揮命令下に置かれている時間

そのため、以下の時間も、使用者の指揮命令下に置かれたのであれば、働いた時間としてカウントされます。

  1. 準備時間:制服、作業服、防護服などに着替える時間、始業前の朝礼・体操の時間など
  2. 後始末時間:着替え、掃除、清身
  3. 休憩時間:休憩中の電話番や来客対応などを依頼された場合
  4. 仕込み時間:開店前の準備やランチとディナーの間の仕込み時間
  5. 待機時間:トラックの荷待ちの時間
  6. 仮眠時間:警報や緊急事態に備えた仮眠の時間(特に警備や医療従事者など)
  7. 研修:会社からの指示で参加した研修
  8. 自宅の作業:仕事が終わらず自宅に持ち帰って仕事した時間
弁護士
弁護士
会社の上司などから「残業は禁止だ」と言われていても、実際には残業が黙認されているケースがあります。そのような場合も、「使用者の指揮命令下」にあると考えることができるため、残業とみなされます。

以上をまとめると、時間外手当(残業代)は、

1日8時間・週40時間」のどちらか一方を超えた時間

で、かつ、

「使用者の指揮命令下に置かれている」時間

の両方を満たす場合に、支払われるということです。

弁護士
弁護士
時間外手当(残業代)の定義について、理解できたでしょうか?
社員
社員
今まで間違って覚えていたようでした。正しく理解できてよかったです。
弁護士
弁護士
まだ知っておくべきことはありますよ。実は、以上の定義を満たしている場合でも、社員に時間外手当(残業代)を支払っていない会社が多く存在するのです。
社員
社員
うちの会社もそうなのでしょうか?
弁護士
弁護士
それは詳しく調べなければ分かりませんので、自分で判断できるように、時間外手当(残業代)を自分で計算できるようになっておきましょう。

時間外手当(残業代)が正しくもらえているか判断するためには、自分で計算してみる必要があります。 そこで、次に時間外手当(残業代)の計算方法を解説します。

2章:時間外手当(残業代)の計算方法を知ろう

時間外手当(残業代)を計算するためには、正しいステップで計算する必要があります。

順番に解説しますので、もし給与明細などが手元にあれば、ぜひ一緒に計算していきましょう。

それでは、解説します。

時間外手当(残業代)は、以下の計算式で計算することができます。

残業代の計算式

順番に解説します。

①基礎時給を計算する

残業代の計算式(基礎時給)

まずは、あなたの基礎時給(=1時間当たりの賃金)について計算します。

基礎時給は、時給制の場合はその時給そのもので、月給制の場合、以下の計算式で基礎時給を計算することができます。

基礎時給の計算式

この計算における「月給」とは、あなたの基本給に以下の手当を含めたものです。

※「一月所定労働時間」とは、あなたの雇用契約で定められている1ヶ月あたりの平均労働時間のことで、一般的に170時間前後であることが多いです。

(例)

  • 基本給18万円
  • 基本給の計算に入れることができる手当:2万円
  • 一月平均所定労働時間170時間

(基本給18万円+2万円)÷170時間=約1176円(基礎時給)

②割増率をかける

残業代の計算式(割増率)

次に、基礎時給に割増率をかけます。

割増率とは、残業した時間や法定休日出勤した場合に基礎時給にかけるもので、以下の種類があります。

深夜に働いた場合は、「+0.25倍」の割増率をかけた賃金をもらうことができます。

たとえば、さきほど計算したように、基礎時給が1176円の場合は、

  • 通常の残業:1176円×1.25倍=1470円
  • 深夜残業:1176円×1.5倍=1764円
  • 法定休日労働:1176円×1.35倍=約1587円
  • 法定休日の深夜労働:1176円×1.6倍=約1181円

が、1時間あたりの賃金として支払われるということです。

③残業時間をかける

残業代の計算式(残業時間)

そして、基礎時給に割増率をかけて出た数字(残業1時間あたりの時給)に、1ヶ月の残業時間をかけることで、1ヶ月の残業代を算出することができます。

法定休日の労働や深夜労働がなかった場合として、以下の例で計算してみましょう。

(例)

  • 基礎時給:1176円
  • 1ヶ月の残業が80時間

11176円×1.25倍×80時間=11万7600円(1ヶ月の時間外手当(残業代))

このように、1ヶ月の時間外手当(残業代)は11万7600円であることが分かります。

もし、同じ条件でこれよりも少ない金額しか時間外手当(残業代)をもらっていなかったら、請求することで残業代を取り返せる可能性があります。

さらに、時間外手当(残業代)を請求する場合、3年分までさかのぼって請求できるため、請求金額は合計で、

11万7600円×36ヶ月=423万3600円

にもなります。

時間外手当(残業代)の計算方法について、詳しくは以下の記事をご覧ください。

5分で分かる!正しい残業代の計算方法と実は残業になる8つの時間

社員
社員
なるほど。計算方法は分かりましたが、実際に計算するのはめんどくさいですね。
弁護士
弁護士
そうですよね。正確に計算するためには専門知識が必要です。
社員
社員
でも、自分が正しい金額をもらえているか判断したいです。どうしたらいいでしょう?
弁護士
弁護士
それでは、時間外手当(残業代)が正しい金額もらえているか、簡単にチェックできるチェックシートをやってみましょう。

3章:時間外手当(残業代)が正しくもらえているか判断するチェックシートとその解説

正しい金額の時間外手当(残業代)がもらえているか判断する上で、計算方法を知っているだけでは十分ではありません。

多くの会社では、知識の無い社員から見ると「正しい金額の時間外手当(残業代)がもらえている」と錯覚してしまうような、巧妙な手口で時間外手当(残業代)をごまかすからです。

そこで、ここでは、

  • 時間外手当(残業代)が正しくもらえているか分かるチェックシート
  • 多くの会社が時間外手当(残業代)をごまかす手口

についてご紹介します。

多くの人が実際に、これから紹介する手口によって、時間外手当(残業代)をごまかされていますので、あなたも人ごとと思わず、しっかりチェックしてみてください。

3-1:時間外手当(残業代)のチェックシート

以下の項目に1つでも当てはまるものがあれば、あなたは、正しい金額の時間外手当(残業代)をもらえていない可能性が高いです。

【チェックシート】

□「仕事をさぼっている」と言われて、残業した時間が残業時間としてカウントされない

□会社で、「残業は禁止」と言われているが、実際には残業が黙認されている

□定時になるとタイムカードを打刻しないといけない、あるいはそのような雰囲気がある

□時間外手当(残業代)が固定給(みなし残業代)で、どれだけ働いても金額が変わらない

□歩合給制、年俸制、変形労働時間制、フレックスタイム制などを理由に、時間外手当(残業代)が一切出ないと言われている

□「管理職」や「店長」であることを理由に「時間外手当(残業代)は出ない」と言われている

いかがでしょうか?

1つでも当てはまるものがあったなら、あなたは時間外手当(残業代)をごまかされて、不当に安い時間外手当(残業代)しかもらえていない可能性が高いです。

3-2:多くの会社が時間外手当(残業代)をごまかすために使っている手口

次に、これらがなぜ違法になるのか解説します。

手口よりも、正しい金額がもらえていない場合の請求方法を知りたいという場合は、「4章」に進んでください。

3-2-1:さぼってばかりで、真面目に働いていない

経営者(本音)
経営者(本音)
「真面目に働いていないから払う必要無し」
経営者(本音)
経営者(本音)
「勤務中に休憩が多いから残業代なんて払わん」

会社の経営者や上司から「さぼってばかりで、真面目に働いていない」などと言われていたとしても、具体的な証拠が無い場合、まったく効力を持ちません。そのため、時間外手当(残業代)支払い拒否の理由にはなりません。 したがって、会社に請求することで時間外手当(残業代)を取り返せる可能性が高いです。

3-2-2:残業は禁止していた

経営者(本音)
経営者(本音)
残業は禁止しているのに、社員が勝手に残業をしていただけだから、時間外手当(残業代)の支払い義務はない
残業禁止令を出しながら、
  • 残業を行っているのを黙認する
  • 残業しなければ終わらない大量の仕事を指示する

など明らかに残業を強要するような行動があった場合、いくら「残業は禁止」と口だけで言っていたとしても、時間外手当(残業代)を支払う義務があります。

あなたもこれらのようなことを言われている場合、時間外手当(残業代)が取り返せる可能性があります。

3-2-3:基本給・固定残業代・各種手当に残業代を含んでいる

経営者(本音)
経営者(本音)
固定給に残業代をすでに含んでいるので、追加で支払う必要はない」
経営者(本音)
経営者(本音)
「残業代は○○手当で支払っている」
  • 時間外手当(残業代)は基本給に組み込まれている
  • ○○手当(営業手当、役職手当など)の形で残業代を支払っている

などのことをみなし残業代制(固定残業代制)と言います。

みなし残業代制(固定残業代性)であっても、時間外手当(残業代)は発生しますので、残業代を請求することは可能です。詳しくは、以下の記事を参照してください。

みなし残業(固定残業)の違法性を判断する7つのポイントを徹底解説

3-2-4:「管理職(管理監督者)だから」支払い義務はない

経営者(本音)
経営者(本音)
管理職だから残業代は出ないって言ったよね?

「管理職」や「店長」であることは、時間外手当(残業代)が発生しない理由にはなりません。 確かに、法律上、会社のサービスや採用などに大きな裁量を持っている人を「管理監督者」と呼び、深夜手当を除き、時間外手当(残業代)を支払う必要がないとされています。

しかし、法律上の管理監督者とみなされるには、非常に厳しい要素を満たす必要があり、ほとんどの「管理職」や「店長」の人は、管理監督者ではありません。

このように、たいした裁量もないのに、「管理職」「店長」といった名前だけ与えられ、時間外手当(残業代)の支払いをされていない人のことを「名ばかり管理職」と言います。「名ばかり管理職」であれば時間外手当(残業代)を請求する権利があります。

詳しくはこちらの記事をご覧ください。

弁護士が「名ばかり管理職」を解説「管理職だから残業代無し」は違法

3-2-5:年俸制なので残業代は支払い義務はない

経営者(本音)
経営者(本音)
うちの会社は年俸制だから残業代は出ないんだよ

年俸制であっても、基本給部分と残業代部分が明確に区分されていない場合は,時間外手当(残業代)の支払い義務があります。

年俸制について、詳しくは以下の記事を参照してください。

誰でも5分でわかる「年俸制とは?」と不当な低賃金への対処法

3-2-6:残業代は歩合に含まれているので支払い済みである

経営者(本音)
経営者(本音)
うちは歩合に残業代がすでに組み込まれるんだよね

歩合給制であっても、歩合の内いくらが時間外手当(残業代)として支払われているのか、明確に分けられていない場合は、時間外手当(残業代)を別途支払う義務があります。 そのため、歩合給制であることを理由に時間外手当(残業代)が支払われていなければ、請求して取り返すことができます。

歩合給制について詳しくは、以下の記事をご覧ください。

歩合給制とは?誰でも5分でわかる正しい意味と不当な低賃金への対処法

 

3-2-7:変形労働時間制なので支払い義務はない

経営者(本音)
経営者(本音)
変形労働時間制の場合は、残業代は出ないんだよ

変形労働時間制とは、一定の期間を設定し、その期間内の特定の日や週について、法定労働時間を超える所定労働時間を設定することができる制度です。たとえば、「4月の1週目の1週間所定労働時間を、45時間にする」のようなことができます。 正しく運用すれば、これ自体は違法ではありません。

しかし、多くのブラック企業は、変形労働制を違法に利用し、時間外手当(残業代)を支払わない手口として使っていることが多いのが実情です。

変形労働時間制について、詳しくは以下の記事を参照してください。

変形労働時間制とは?誤解されがちな意味と企業が悪用している時の対処法

3-2-8:フレックスタイム制なので支払い義務はない

経営者(本音)
経営者(本音)
フレックスタイム制なのになんで残業代が出ると思うの?出るわけないでしょ

フレックスタイム制とは、従業員が契約時間の範囲内で始業時刻と終業時刻を自由に設定できる制度のことです。この場合も、契約時間を超えて働いた場合には時間外手当(残業代)を請求することは可能です。 フレックスタイム制について、詳しくは以下の記事を参照してください。

フレックスタイム制とは?誰でもたったの5分で理解できる正しい意味

社員
社員
私の会社でも当てはまるものがありました。
弁護士
弁護士
非常に多くの会社が、正しい金額の時間外手当(残業代)を払っていません。あなたも当てはまるものがあった場合は、時間外手当(残業代)を取り返すために、会社に請求することをおすすめします。

4章:時間外手当(残業代)は請求して取り返すことができる

正しい金額の時間外手当(残業代)がもらえていない可能性がある場合、会社に請求することをおすすめします。

なぜなら、会社からごまかされている時間外手当(残業代)は、2章で計算したように、あなたの予想以上に高額になる可能性が高いからです。

しかも、時間外手当(残業代)を請求できる権利には3年の時効があるため、どんなに高額でも、放っておくと消滅してしまうのです。

そこで、最後に、時間外手当(残業代)を請求する方法について、

  • 自分で直接請求する方法
  • 弁護士に依頼して請求する方法

の2つに分けて解説します。

4-1:自分で会社に直接請求する方法

自分で直接請求する方法は、以下のような流れで行うことができます。

未払い給料を自分で請求する流れ

①残業があった事実を証明するための証拠を収集する

②未払いになっている残業代を計算する

③「配達証明付き内容証明郵便」を会社に送って時効を止める

④自分で会社と直接交渉する

社員
社員
いろんな手続きが必要になるんですね。
弁護士
弁護士
そうなんです。そのため、多くの人は残業代請求に強い弁護士に依頼して残業代を回収しています。

4-2:弁護士に依頼する方法

弁護士に依頼すると、以下のような流れで時間外手当(残業代)を回収していきます。

残業代請求を弁護士に依頼する流れ

弁護士に依頼した場合、

  • 交渉
  • 労働審判
  • 訴訟(裁判)

という手段によって、残業代請求の手続きが進められます。

弁護士
弁護士
実は、弁護士に依頼すると言っても「訴訟」になることは少ないです。おそらくあなたが心配しているであろう「費用」の面でも、「完全成功報酬制」の弁護士に依頼すれば、「相談料」や「着手金」ゼロで依頼することができます。

弁護士に依頼すると、あなたの「会社と戦う」という精神的負担を、弁護士が肩代わりしてくれるだけでなく、時間・手間を節約することもできるのです。さらに、「完全成功報酬制」の弁護士に依頼することで、初期費用もほぼゼロにできるのです。

弁護士
弁護士
ただし、弁護士に依頼する場合は「弁護士なら誰でもいいだろう」とは考えないでください。実は、法律の知識は広い範囲に及ぶため、自分の専門分野以外の件については、あまり知識がない弁護士が多いです。そのため、残業代請求に強い弁護士に依頼することをお勧めします。

残業代請求に強い弁護士の選び方や、相談の流れ・かかる費用などについて、詳しくは以下の記事に書いていますので、ご覧になってください。

失敗したら残業代ゼロ?弁護士選びの8つのポイントと請求にかかる費用

4-3:残業代請求を行う上で重要な2つのポイント

次に、残業代を請求する上で必ず知っておかなくてはならない2つのポイントについて解説します。

4-3-1:まずは自分で証拠を集める

時間外手当(残業代)を請求するためには、残業していた事実を証明できる「証拠」が必要です。

弁護士
弁護士
証拠集めは、まずは自分で行うことをおすすめします。証拠集めも弁護士に依頼することは可能です。しかし、弁護士が証拠を要求しても提出しない悪質な会社もあるため、会社に在籍しているうちに、自分で証拠を集めておくことがより確実なのです。

残業代請求の証拠として有効なのは、以下のようなものです。

勤怠管理している会社で有効な証拠

  1. タイムカード
  2. 会社のパソコンの利用履歴
  3. 業務日報
  4. 運転日報
  5. メール・FAXの送信記録
  6. シフト表

勤怠管理していない会社で有効な証拠

  1. 手書きの勤務時間・業務内容の記録(最もおすすめ)
  2. 残業時間の計測アプリ
  3. 家族に帰宅を知らせるメール(証拠能力は低い)

証拠として一番良いのは①です。毎日手書きで、1分単位で時間を書きましょう。具体的な業務についても書くのがベストです。③のメールは、裁判になると証拠としては弱いので、できるだけ手書きでメモを取りましょう。

証拠は、できれば3年分の証拠があることが望ましいですが、なければ半月分でもかまいません。できるだけ毎日の記録を集めておきましょう。

ただし、手書きの場合絶対に「ウソ」の内容のことを書いてはいけません。証拠の中にウソの内容があると、その証拠の信用性が疑われ、証拠として利用できなくなり、残業していた事実を証明できなくなる可能性があります。

そのため、証拠は「19時30分」ではなく、「19時27分」のように、1分単位で記録するようにし、正確に記録していることをアピールできるようにしておきましょう。

残業代請求に必要な証拠について詳しく知りたい場合は、以下の記事をご覧ください。

【保存版】知らないと損する?残業代請求する為に揃えておくべき証拠

4-3-2:残業代が請求できるのは3年の時効が成立するまで

残業代請求には「3年」という時効があります。そのため、3年の時効が成立してしまうと、それ以前の残業代が二度と請求できなくなってしまいます。

そのため、時間外手当(残業代)の請求手続きは、なるべく早めにはじめることを強くおすすめします。

残業代請求の時効について、詳しくは以下の記事をご覧ください。

残業代請求の時効は3年!時効を止める3つの手段と具体的な手続きの流れ

まとめ:時間外手当の正しい知識

いかがでしたか?

最後にもう一度、今回の内容を振り返ってみましょう。

【時間外手当(残業代)の定義】

1日8時間・週40時間」のどちらか一方を超えた時間

【働いた時間としてカウントされる条件】

「使用者の指揮命令下に置かれている」時間

【時間外手当(残業代)の計算式】

残業代の計算式

【会社が時間外手当(残業代)をごまかす手口】

  1. さぼってばかりで、真面目に働いていない
  2. 残業は禁止していた
  3. 基本給・固定残業代・各種手当に残業代を含んでいる
  4. 「管理職(管理監督者)だから」支払い義務はない
  5. 年俸制なので残業代は支払い済みである
  6. 残業代は歩合に含まれているので支払い済みである
  7. 変形労働時間制なので支払い義務はない
  8. フレックスタイム制なので支払い義務はない

【時間外手当(残業代)を取り返す方法】

  1. 自分で会社に直接請求する
  2. 弁護士に依頼して請求してもらう

もしあなたも正しい金額がもらえていない可能性があるなら、まずは弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

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