ブラック企業に注意!システムエンジニアの残業の実態とよくある手口

QUEST法律事務所

代表弁護士住川 佳祐

残業するシステムエンジニア

エンジニアとして働く人や、これからSE(システムエンジニア)に就職しようと考えている人は、次のような悩みや心配事を持っているのではないでしょうか。

「SEって残業が長いんだろうか」
「今のSEの仕事は残業がきつい」
「他の会社でも残業は多いのかな」

厚生労働省の調査によると、SEの残業時間は平均で16時間程度とされ、これだけ聞くと他のIT技術職と比べて残業が長いようには見えません。

ただ、詳しくは記事で説明しますが、SEの現場ではまだまだ長時間の残業が常態化しており、過酷な労働環境に苦しむ人が多いのも実情です。

そこで、この記事ではシステムエンジニアの残業の実態と正しい法律ルールを解説した上で、本当は受け取れるはずだった残業代の請求方法も紹介します。

弁護士
過去には、SEが500万円以上の未払い残業代を手にした例も多くあります。この記事を読んで、自分が法律違反にあたる残業をさせられていないか、しっかりと働いただけの賃金をもらえているか確かめてみてください。

(記事の流れ)


1章:システムエンジニアは残業が長い!業界のリアルな実態

それでは、早速システムエンジニアの残業の実態について見ていきましょう。

1-1:システムエンジニアの残業の実態

厚生労働省の2018年の調査によると、システムエンジニアの残業時間は平均16時間程度とされています。

あなた
16時間?世の中のエンジニアはそれしか残業してないのかな。

厚生労働省の調査は、

・エンジニアの中でも残業時間にばらつきがある
短い残業時間を報告しているブラックな会社もある

といった理由から、実際の数字よりも少なく出ると言われています。

システムエンジニアと言っても、社内で毎日決められた作業量をこなす保守・運用系エンジニアや、大手の会社で働き納期直前を除けばほとんど残業のないSEもいます。

しかし、ネットに上がる生の声を見ればわかるように、現場には長い時間の残業に苦しむエンジニアが多くいます。

弁護士

「残業が少ない」という人もいますが、システムエンジニアはまだまだ残業が長く大変な仕事です。

2011年には京都市のシステム開発会社に対し、システムエンジニアをしていた男性に1100万円を超える残業代の支払いを命じた判決もありました。

次節では、システムエンジニアの仕事で残業時間が長くなる背景について説明します。

1-2:残業が長くなる業界特有の背景

システムエンジニアの残業が長くなる背景には、次のような業務上の特性があると考えられます。

・納期は絶対厳守
・突然の仕様変更
・現場の人手不足
・業界の残業体質

順番に見ていきましょう。

1-2-1:納期は絶対厳守

業界全体としては残業を短くしようという動きはあるものの、納期を守るために現場の社員を酷使するような例は非常に多く見られます。

開発系のエンジニアであれば、進捗の遅れを取り戻したり、思わぬトラブルを回避したりするために納期前に長時間残業しなければならなくなることが多くあるのです。

1-2-2:突然の仕様変更がある

納期とも関わり、エンジニアの世界ではよくあることですが、開発が終盤に差し掛かる頃にクライアントから機能変更の要望が入るケースがあります。

多くの場合、こうした状況では間に入る営業がクライアントに既にOKの返事をしており、現場のシステムエンジニアは時間がない中、残業しながらどうにかスケジュールを守ろうと奮闘することになります。

1-2-3:現場の人手不足

エンジニアが働く現場では大手の一次請けが、下請けに仕事を発注し、その下請けが孫請けに仕事を発注する、という構造がよく見られます。

IT業界の下請け構造

委託先が下がるにつれて発注金額も低くなり、ギリギリの人数で現場を回す必要が生まれます

こうした人手不足もエンジニアの残業時間を長くする一因になっていると考えられます。

1-2-4:業界の残業体質

システムエンジニア同士の会話では

「先月は50時間残業した」
「昔に比べれば、今の仕事は楽」

といったことを耳にするケースがあります。

長く働いている先輩や上司が長時間残業の文化の中で昇進していて、仕事量的にも忙しいのが当たり前の環境にいると、残業が普通のことのように思えるようになります。

こうしたエンジニア業界の体質も、残業が長くなる理由になります。

あなた
私の現場でも当てはまることが多いです。法律的には、どういう残業が問題になるのでしょうか。
弁護士
次の章では、システムエンジニアにおける残業の法律的なルールとブラック企業がよく使う手口について解説します。


2章:ブラック企業が使う手口と正しい法律ルールを解説!

ここからは、ブラックな会社がシステムエンジニアを残業させるためによく使う手口を解説します。

会社の言われるままに騙されないよう、正しい法律ルールを理解しましょう。

2-1:法律における残業代の考え方

システムエンジニアは、基本的に就業規則などによって始業時間と終業時間が決められているのが一般的です。

こうした雇用契約では、会社は法定労働時間と呼ばれる「1日8時間、週40時間」というラインを超えて社員を働かせることはできないと定められています。

残業時間の考え方

この時間を超えて働いた時間は「残業時間」になり、会社は社員に残業代を払うことが法律で定められています。

逆に言うと、残業をしている社員に残業代を支払わないことは法律違反の疑いが強くなりますが、様々な理由をつけて残業代が出ないと言い張る会社もあります。

次節では、会社がシステムエンジニアを残業させるのに良く使う手口について解説します。

2-2:会社がシステムエンジニアを残業させる手口

システムエンジニアに残業代を支払わずに働かせる手口としては次のようなものがあります。

・裁量労働制を不当に適用する
・フレックスタイム制を悪用する
・固定残業代制(みなし残業代制)を悪用する
・名ばかり管理職にして残業代を支払わない
・年俸制だから残業代が出ないとする
・タイムカードを決まった時間に切る
・エクセルで勤怠管理をする

順番に見ていきましょう。

2-1:裁量労働制を不当に適用する

上司
君は裁量労働制だから残業代が発生しないんだよ。

裁量労働制とは、実際に働いた時間ではなく、あらかじめ会社側と決めた時間を労働時間と「みなす」制度です。

この制度の下では、1日のみなし労働時間が8時間と決められていた場合は、10時間働いても労働時間は8時間となり残業代は発生しません。

裁量労働制の仕組み

ただ、この裁量労働制は誰にでも適用できるわけではなく、対象が決められています。

厚労省の通達によると、システムエンジニアの場合は、下の図で開発の「上流工程」の業務の場合に裁量労働制が適用できます。

エンジニアの業務プロセス

つまり、あなたの業務が

要件定義やシステムの設計が業務の中心
・プログラミング系の業務はプログラマーに行わせている

といった場合は、裁量労働制が適用され、会社側の「残業代が出ない」という言い分は正しいということができます。

裁量労働制については、次の記事もご確認ください。

SE・PG必見!【IT業界における裁量労働制】法律から見る違法性の高いケースとは

2-2:フレックスタイム制を悪用する

上司
自分で働く時間を決めていいけど、最低週50時間は働いてね。

エンジニア業界ではそう多くはありませんが、フレックスタイム制を採っている会社もあります。

フレックスタイム制は、社員が自分で働く時間を決めることができる制度のことです。

ブラックな企業は、フレックスタイム制が適用されているとしながら、働いている社員に基準をオーバーした労働時間を求めるケースがあります。こうした違法な運用が行なわれている場合には、もちろん残業が認められ、残業代も発生します。

フレックスタイム制については、以下の記事でも解説しています。自分の職場に当てはまるという人はご覧ください。

フレックスタイム制とは?誰でもたったの5分で理解できる正しい意味

2-3:固定残業代制(みなし残業代制)を悪用する

上司
うちの会社のシステムエンジニアは固定残業代制だから、仕事が終わるまで残業しないといけないよ。

固定残業代制(みなし残業代制)とは、一定の残業時間分の残業代を最初から給料として払っておく制度です。

ただ、この制度が導入されていても、

・みなし残業を超えた分の残業代が出ない
・みなし残業が想定する残業時間が異常に長い
・給与のうちいくらがみなし残業代にあたるのかが不明

といったケースは違法の疑いが強くなります。

固定残業代制については、次の記事もご確認ください。

【弁護士が解説】「固定残業代制だから残業代は無し」は違法?

2-4:名ばかり管理職にして残業代を支払わない

上司
君は周りのエンジニアをまとめる管理職だから残業代が出ないんだよ

社員に「マネージャー」など肩書きを与えて管理職として扱い、残業代を支払わないというのも、エンジニア業界でよく見られる手口です。

確かに管理職は法律上「管理監督者」として扱われ、残業時間の制限がなく残業代も支払う必要がないと定められています。

しかし、社員を管理監督者にするためにはいくつもの厳しい条件があり、会社が好き勝手に決められるものではありません。

管理職の基準については次の記事で詳しく説明しています。自分に当てはまる人はご確認ください。

管理職でも残業代が出る?管理職の3つの定義と判断基準を徹底解説

2-5:年俸制だから残業代が出ないとする

上司
うちの会社のシステムエンジニアは全員年俸制だから残業代も給料に含まれているよ。

IT企業で採用されることの多い年俸制ですが、この「年俸制だから残業代が出ない」という主張は間違いです。

もしあなたが会社との間に年俸制の契約を結んでいても「1日8時間、週40時間」を超えて働いた分の労働には残業代が発生します。

年俸制の残業代については、次の記事をご確認ください。

【年俸制でも残業代が出る】その理由と残業代の計算方法を徹底解説

2-6:タイムカードを決まった時間に切る

上司
うちの会社ではタイムカードの管理は上長がやることになっているんだ。

会社によっては、就業規則で決められた定時を迎えると、仕事の進捗にかかわらずタイムカードが切られることがあります。

会社には、働く社員の勤務実態を把握する義務があるため、それをしないだけでなく会社自ら残業の実態を残さないようにするのは大きな問題です。

こうした場合では、タイムカードの記録にかかわらず超過して働いた時間が残業時間になります。

ただし、タイムカードを切った後の時間帯については,そもそも業務を行ったことを証明できなくなってしまう可能性があるのでメモなどでしっかりと記録を残しておきましょう

2-7:エクセルで勤怠管理をする

上司
毎日働いた時間はエクセルに記録して提出してね。

エンジニアの現場では、毎月の勤怠記録をエクセルでまとめて提出するよう求める会社があります。

社員が提出した残業の記録を、会社側が調整するためですが、こうしたことも認められません。

働いた時間は手書きのメモやアプリなどでしっかりと記録しておきましょう。

あなた
思い当たることばかりでした。自分が法律違反の疑いが有る環境で働かされている場合はどのようにしたら良いでしょうか。
弁護士
最後に、あなたが現状を改善するために取ることができる対処法をお伝えします。


3章:これ以上の残業に耐えられない時の対処法

あなたが現在働いている会社で、不当な残業を強いられている場合は、次のような対処法を取ることをオススメします。

・転職する
・労働基準監督署に相談する
・残業代請求に強い弁護士に相談する

順番に見ていきましょう。

3-1:転職する

システムエンジニアを酷使して働ける限り残業させようとするブラックな会社もある一方で、業界の中には労働環境を改善しようとする動きもあります。

エンジニア業界は比較的、人の行き来が多く、転職がキャリアにマイナスにならないので、辛い残業に耐えるくらいであれば新しい環境に飛び込んでも良いかもしれません。

IT系全般に共通するホワイトな会社の見分け方については、次の記事で解説しているのでご確認ください。

【弁護士が解説】IT系は残業が長い!業界の勤務実態と正しいルール

3-2:労働基準監督署に相談する

労働基準監督署とは、労働基準法などの法律が守られているかどうかを監督する行政機関です。

日常的に、36協定の上限を超えて残業させられている場合等は労働基準法に違法しているため、労働基準監督署に申告することで、

・労働基準法にのっとったアドバイスをもらえる
・労働基準監督官が会社に立ち入り調査する
・違法行為が確認できた場合、会社に対して是正勧告(改善命令)を出す

といったことにつながることがあります。

労働基準監督署の相談については、次の記事をご覧ください。

【労働基準監督署にできること】相談の流れとより確実に解決するコツ

3-3:労働問題専門の弁護士に相談する

もしシステムエンジニアであるあなたが、長時間の残業に苦しんでいるとしたら最も親身に、そして結果の出る相談先になってくれるのは労働問題専門の弁護士です。

弁護士にも様々な専門がありますが、労働問題に強い専門の弁護士は、システムエンジニアの残業問題に対しても次のような強みを発揮してくれます。

・豊富な知識と経験を生かし、環境を改善してくれる
・未払いの残業代や休日手当を取り返せる可能性が高い
・完全成功報酬制の弁護士であれば自分が負担する費用もかからない

ここで大切なのは労働問題に強い弁護士を選ぶということです。

システムエンジニアの残業問題は契約関係がややこしいことも多く、こうした事例を扱った経験が多い専門の弁護士に相談することが問題解決の一番の近道になります。

労働問題に強い弁護士の選び方や、依頼時のポイントなどについては次の記事で詳しく解説しているので確認ください。

【保存版】手間、時間、お金をかけずに労働問題を解決するための全知識


まとめ

いかがでしたか?最後に今回の内容をもう一度振り返ってみましょう。

システムエンジニアの中には、ほとんど残業のない人もいますが、

・納期は絶対厳守
・突然の仕様変更
・現場の人手不足
・業界の残業体質

といった業務特性から、多くの人は長時間の残業を強いられています。

会社がシステムエンジニアに残業代を支払わずに働かせる手口としては

・裁量労働制を不当に適用する
・フレックスタイム制を悪用する
・固定残業代制(みなし残業代制)を悪用する
・名ばかり管理職にして残業代を支払わない
・年俸制だから残業代が出ないとする
・タイムカードを決まった時間に切る
・エクセルで勤怠管理をする

といったものがありました。

もし、あなたが現在働いている会社で、不当な残業を強いられている場合に取ることができる様々な選択肢がありますが、

最も親身に、最も結果が出やすい相談先になってくれるのは労働問題専門の弁護士です。しっかりと相談して、システムエンジニアの残業の悩みを解決しましょう。

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会社がおかしい・不当ではないかと感じたら1人で悩まずに、残業代請求に強い弁護士に相談することをおすすめします。残業代の時効は2年なので、時効になる前に早めに行動することが大切です。

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